【小説】生きたくないから死ぬって話 #2
俺は今、飛び降りた。
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きっと、これで楽になれるんだ。
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ガシッ
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手を掴まれた。
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上を見ると神凪琴葉が震えながら俺を引き上げようとしていた。邪魔するな。俺は神凪琴葉を睨みつけた。
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「あのさ、神凪。何回も言わせないでくれる、俺は死にたいんだ。死にたいって俺が言ってんだから俺の自由だろ。そういうとこ、嫌い」
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嫌いって思いがふいに口から出た。言い過ぎてしまっただろうか。いや、本当に、本当の事なんだし。
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「西園寺くんってさ、やっぱり馬鹿だよねー」
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ㅤ「は」
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ほんと、ムカつく。
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馬鹿はおまえだろ、うざいんだよ、おまえ。
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このクラスも大したことない。男子も女子も担任の先生も、カスだ。
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俺の周りにはどうしてこんなつまらない奴らしかいないんだ。「友情」とか「団結」とか「完全燃焼」とか「青春」とかそんな言葉を平気で口に出せる奴らだ。
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神凪琴葉が眉をひそめた。
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「大事なクラスメイトが、死にたいって言ってたらさ、はいどうぞなんて言える訳ないじゃん。」
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俺が、大事なクラスメイト?どうせそんな事思ってないくせに。学級委員だからって正義のヒーローぶってんのか、ただの綺麗事だよな。
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俺はため息をついて言った。
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「もういいよ、おまえ、しつこい」
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かなり時間が経っているが未だに神凪琴葉は俺の手を掴んだまま離さない。
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限界なのか全身が震えている。離したくなったなら、離せばいい。時間の無駄だし、どうせ、また時間が経ったらこいつだって諦めて手を離すだろう。
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こいつ一人で俺を引き上げることは不可能なのだから。
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ガチャ
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今度こそ、先生が来てしまった。
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タイミングが悪いことに今更この場から逃げることは出来ない。
《続く》
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