【小説】生きたくないから死ぬって話 #3
タイミングの悪いことに屋上にいることが先生にバレた。
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「神凪さん!屋上で何やってるんですか!屋上は立ち入り禁止なの知ってますよね?」
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先生が激怒して言った。俺のせいで、神凪琴葉が怒られた。
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「先生、西園寺くんが...西園寺くんが屋上から落ちそうなんです、助けてください!」
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また神凪琴葉に余計なことを言われた。先生が入って来た瞬間、そうなるだろうとは思っていた。
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先生が俺の状態に気づいてすぐさま駆け寄って俺を引き上げた。
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「西園寺くん、何でこんなことになったんですか、説明しなさい!」
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俺は何も言わずにただ俯いたままだった。
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何も言いたくない。
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俺自身誰も巻き込みたくないし心配もされたくない。本当に、ほっといて欲しい。
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「西園寺くん、答えなさい」
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先生は俯いている俺の顔を覗き込む。
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俺は気づいたら倒れていて病院のベッドで寝ていた。
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目が覚めたら目の前には神凪琴葉がいた。先生は、どこに行ったんだろう。
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おかげで話を逸らすことができたけど、いっそのことあの時無理矢理でも手を振り払って死んだ方がマシだった。
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俺にとって生きていることの方がずっとずっとつらい。
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そのあと俺は医者から余命宣告を受けた。
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俺の命は後一ヶ月も持たないそうだ。
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隣を見ると、神凪琴葉は憂いを帯びた顔をしていた。
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「神凪はさ、友達や家族に恵まれていて毎日幸せだろ、楽しいだろ、生きる理由があるお前はいいよな」
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「西園寺くんは?西園寺くんは、生きる理由ないの?」
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「ある訳ない、あるように見えるかよ」
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家族は病気で苦しんでいる俺を見ても少しも気にかけてくれない。
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クラスの奴らは俺を空気としか見てないのか誰も関わってくれない。
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一部の奴らは俺を避ける。
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どいつもこいつもクズばっか。こんな人生なら、生まれて来ないのが正解だったんだ。
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「そんな訳ないじゃん!何で西園寺くんはそういつも捻くれてるの?西園寺くんの言ってることもやっていることも全部捻くれてるよ...」
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そんなこと自分が一番よく分かってるし。それこそ何も知らないお前なんかに言われたくない。
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「あー、早く一ヶ月経って死期が来ないかな、どうせ俺はもうすぐ死ぬんだからさ、早く死にてえー」
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そう言って俺は笑った。
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胸ぐらを掴まれた。
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「もういい、そんなに死にたいなら、一人で勝手に死んでればいいじゃん」
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そう言って神凪琴葉は病室から出て行った。
《続く》
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