小説「娘として、母として」#3
この物語はフィクションです。実際の人物、団体とは一切関係ありません。
~ホテル暮らしの8日間~
一日目
やっと空港から出られた。何なのだ、ここは。扉が自動で開閉するし、空港内の小さなお店(コンビニというらしい)のレジはピッという電子音とともにお会計がされていく。都会、恐るべし。
故郷にいたとき叔母から贈られたパソコンというもののインターネット予約という謎の機能でとった置いたホテル(旅館のようなものらしい)の一室で、2週間ほど過ごせる予算はとってある。「あんなので予約ができたのか」。半信半疑で受付の人に聞かれたことに答えたら、予約した部屋に案内してもらった。心臓が口から飛び出るかと思った。
安めなので期待はしていなかったが部屋が意外ときれいだ。布団もふかふかである。洗濯機がない…もう深夜一時。外が明るすぎてわからなかった。とりあえず寝よう。
2日目
今日は面接に行く。さんさん食堂という昔ながらの素敵な食堂の調理係を希望した。昔から料理は得意なのだ。いくら科学者になるといったって、研究資金がないと始まらないからな。
応募者が多くて、受からない気がする。名前を呼ばれて、入って…何を話したっけ。忘れてしまった。でもすごくいい雰囲気の人だった。母の口癖に「女の世界は怖い」というのもあったが、ここでは大丈夫そうだ。とりあえずコンビニでおにぎりでも買おう。本当にあの店は不思議すぎる。それがあちらこちらにあるのだから気が滅入る。建物の高さにはもう感覚がマヒしたのか知らないが驚けない。
3日目
今日は不動産をめぐり、いい賃貸住宅を探そうと思う。近くにいろいろあるから、歩いてでも何件かまわれるだろう。
不動産1 丸岡不動産
のぞいた時に人が多すぎることに気づいた。やーめたっと。
不動産2 三角不動産
ここはなんだかこじんまりとしている。入りやすい。
店員さんと事務的な会話を交わす。さんさん食堂に近くてそこそこお安い賃貸住宅が二件あったので、新しく建てられた方を希望。5日後には引っ越せるらしい。手配が速すぎてもはやもうよくわからない。なんか知らんが新居が決まったのである。
5日目
四日目は暇すぎて寝ていた。寝すぎて気分悪い。さんさん食堂からの合格通知が届いていた。見習いとして働けるらしい。皿洗いでもするのかな。
8日目
6日目はほとんど寝て、7日目は部屋へ移動するため荷造りをしていた。2週間分の予算があったが、だいぶ余裕を持てた。
ホテルのチェックインを済ませた。こういう言葉はパソコンで知った。
三角不動産には、あの時の職員さんがいた。みすみさんというらしい。三角と書くそうだ。
早速新居に行った。さんさん食堂からも近い。写真どうりのきれいな外観に、冷蔵庫、洗濯機もあった。三角さんと知り合いの大家さんにも挨拶して、一人暮らしのスタートである。