この恋が叶うとは思わなかった #10 2日目
翌日
「ようし!今日も大盛況ガンバロー!」
「今回は昨日と担当が逆ってこと覚えといてくれ。」
知弘は前日は後半だったので、今日は前半だ。
雫に変わった様子は見られなかった。
いや、少し元気がないような…?
「あ、おはよう。」
雫が挨拶をしてきた、これはこれは嬉しいことだ。
話してくれないと思っていた。
「あ、あぁおはよう。」
「大丈夫?なんか疲れてるみたいだけど。」
雫が目を指差して言った。
昨日の猛勉強のせいだろう。
ちょっとやり過ぎたかもしれない。
まぁ、大丈夫だろう。
「あぁ、ちょっと夜更かししちゃってね。」
「体壊しても知らないよ。」
こんなお母さんみたいな事を言う雫は始めて見た。
「おーい、そこのお二人さん、お仕事頼んまっせー!」
「最後なんで大阪なんだよ。」
琴葉の注意を受け、接客業を始めた。
途中、気になって雫の方をついつい見てしまうのだが、その時に必ず目が合う気がする。
そしてすぐ逸らされるのだ。
好きな人を目で追うのは普通だが、なぜ知弘が見られるのだろうか。
警戒されているのだろう。
あの目を細めた目線は何となくだが敵視されている気がする。
それでも知弘は気にせず接客を続けた。
そうやって接客しているとあっという間に前半は終了である。
もうすでに疲労を感じながらも、最後だしまわっていこうかな。と知弘は思った。
その時だった。
立ち上がった知弘にひどい立ちくらみとめまいが襲い掛かった。
「うっ…」
ふらついたかと思うと、そのまま地面に倒れ込んだ。
周りのざわめきも遠ざかって行った。
「やっぱ無理しすぎたかなぁ…」
知弘は心の中でそう思うのだった。
「……ん?……」
知弘が目を開けると、知弘はベッドの上で横たわっていた。
「ここは…保健室?」
「だいじょぶ?」
声がした方を見た知弘はびっくりした。
知弘の横に美少女2人が並んでいたのだ。
「どうしたの?急に倒れたりなんかしちゃって。びっくりしたじゃない。」
琴葉が言う。
「急に倒れるから、雫なんか顔面蒼白になってたんだからね。」
「こ、琴葉、それはもういいでしょ。」
雫が今度は逆に顔を真っ赤にして言った。
「ま、誰だって目の前で人が倒れたらビックリだよね。」
「昨日夜更かしなんかするからでしょ。」
「え、そうなの?雫、じゃあ、こいつのただの自業自得じゃあないの!」
それについては言い返せなかった。
「何してたのそんな遅くまで。」
「どーせスマホでもいじってたんでしょ。」
本当の事を言うのはあれなので、琴葉の予想通りと言うことにしておく。
「そーだよ。」
「ほら、知弘はいっつもベラベラベラ…」
琴葉の長ーーーい愚痴をもらったが、これ以上聞くと耳がおかしくなりそうなので聞き流しておこう。
「んじゃ、よく休んでね。」
そう言い残すと2人は教室を出て行った。
帰り際、保健室の先生に安静にする様に言われた。
1日じっくり寝たら充分だろう。
翌日、すっかり元気になった知弘は教室に着くと最初に琴葉に話しかけられた。
「あ、知弘、治った?」
「あぁ、治った。」
次に話しかけてきたのは頼翔と雫だ。
「大丈夫だったか?昨日。」
「もう、治った?」
「うん、この通り元気だぞ。」
「この通りってわかんねぇよ。」
「いつも元気がなくて悪かったな。」
「そ、そこまで言ってねーよ。」
あからさまに焦っている頼翔はそそくさと自分の席へ戻っていった。
逃げ足の速い奴め。
最初は何も変わっていないと思っていたが…
明らかに避けられている気がする。
警戒だろうか。