アイディアル・ミラー・マジック☆ (後編)
その日の午後、僕はお父さんに謝って5万を貸してもらい、あの店まで出かけた。
中に入ると、今朝言っていた通りあの女の子がいた。
「いらっしゃい。来てくれたのね。」
「はい!あの…早速この鏡をください…!!」
僕は5万円を差し出す。
「別に良いけど…本当にこれでいいの?あなた顔ならもう整っているわよ。変える必要あるかしら。」
「あるんです…。」
「どうして…?」
僕は本当のことを話した。
「僕はものすごく人見知りなんです。でもこの顔のせいで色んな人から囲まれたり妬まれたりするんです。だから性格に合った地味な顔になろうと思って…。」
なぜから女の子の表情が固まっている。
「ちょっと…それ、本気で言ってるの?」
どうしてそんな質問するんだろう…本気なのに。
「そうですけど…」
「あ、あなたねぇ…性格に合った顔になるっていったわね…。でもね、あなたが本当に変えなきゃいけないのは顔じゃなくて中身よ!!」
僕は驚いた。そんなこと考えたこともなかった。
「まぁ、目立ちたくないのに目立っちゃうのは辛かったわね。でもせっかく良い顔なんだからそれは誇りを持ちなさいよ…。人は考え方次第でいくらでも変われるから。顔に見合った性格になってやりなさい。」
僕はそのとき目から鱗が落ちるような感覚がよくわかった。僕は変えられないものを変えようとして、本当に変わらなくちゃいけないことを変えないでいたのだ。
「そっか…そうだったんだ…ありがとうございます。えぇっと…」
「名乗り忘れてたわね。私はエリカよ。」
「あ、僕はヒロトですっ!」
「ヒロトくん、私はあなたの気持ちがよくわかるわよ。」
「え、そうなんですか?」
「ええ、実は私ちょっと前までこの魔力を嫌っていたのよ…。」
「えぇ!?なんでっ!?」
そんな。魔法なんて僕からしたら憧れるのに。
「私のお母さんはね。魔法を悪用ばかりする人なのよ。だから私も魔法は悪いものだと思ってた。生まれつき悪いものを持っている気分だったの。」
「なるほど…」
「でもおばあちゃんがこの道具屋で人々を魔法の力で笑顔にしていくのをみて思ったの。魔法は使い方次第でこんなにも違うんだって。それから私は魔法を乱用せず活用するようになったわ。」
そうか…考え方はぼくら人間が持つ魔法なのかもしれない。考え方さえ変わってしまえばポジティブにもネガティブにもなれる。
「僕、大切なことに気付かされました。鏡は買いません。」
「それがいいわ。私もこの鏡だけは疑問に思ってたのよ。誰にも要らないんじゃないかって。」
「僕もそう思います。」
「あ、そうだ。これあげるわ。」
エリカさんが僕に渡したのは口をリボンで結ばれた小さな袋だった。
「お守りよ。勇気が出る魔法を込めたの。明日の学校にでも持って行ってみて。」
「ありがとうございます!頑張ってみようかな…。」
今日僕はすごい魔法を手に入れた。
おしまい
アイディアル・ミラー・マジック☆ (前編)
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アイディアル・ミラー・マジック☆ (中編)
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