アイディアル・ミラー・マジック☆ (中編)

3 2024/06/03 00:50

とにかく夢中で走った僕は知らないいつのまにか森の中に入ってしまっていた。しばらく途方に暮れていると、木々の間に小屋のようなものがあるのを見つけた。近づいてみると、どうやらお店のようだ。両開きの扉に掛かったボードがもう店が開いていることを示している。

そのとき、突然扉が勢いよく開いた。

「ん?なんだ、お客か?気になるなら入るか?」

絵に描いた魔女みたいなおばあさんが僕に声をかけた。

「えっ…あっ、じゃあ入ります…」

中に入ってみるとそこにはたくさんの道具が並んでいた。

ほうきや食器、ぬいぐるみなんかもあった。

どれも古いものばかりに見える。アンティークというのだろうか。

「あの…ここはどういうお店なんですか…?」

店内があまりにも不思議な雰囲気を醸し出すので、僕はおばあさんに尋ねてみた。

「あぁ、ここは魔法の道具屋だよ。すべての商品にそれぞれ別の魔法の力が込められているのさ。」

魔法…。さっき、おばあさんを魔法使いみたいと思った僕の感性は間違っていなかった。

「存在したんだぁ…魔法…」

そのとき僕の目に一つの鏡が映った。もちろん鏡も僕の顔を映した。

魔法と聴いて浮かれていたところに気に入らない自分の顔を思い出し気分が落胆する。

「なんだい?その鏡が気になるのかい?」

おばあさんが真顔になった僕に尋ねる。

「お前みたいなやつがこの鏡を欲しがるとはな…」

「え?」どういう意味だろう…。

「おや、知らずにみてたのかい?この鏡はな、理想の顔になれる鏡なんだよ。お前みたいに充分整った顔をしてるが欲しがるとは思わなかった。」

理想の顔。ということは僕もこの鏡を使えば性格に見合った地味で目立たない顔になれるということか。ならば―。

「この鏡ください!!」

買うしかない。

「本気で言っているのか?お前にこの鏡は必要ないと思うぞ。」

「いいえ!!必要なんです!!」

自分とは思えない威勢の良さだ。

「はぁ…でもこの鏡はな、5万円だよ…。」

そういえば今の僕は登校途中。5万どころか1円も持っていない。

「そんな…」

僕が気落ちしていると、店の奥から女の子が出てきた。この人も魔法使いみたいな格好をしている。

「あら、お客様?珍しいわね。…その鏡がほしいの?」

その女の子は上品なしゃべり方で僕に話しかけてきた。

「あ、はい…。でもお金がなくて…」

「それなら今日の午後にまたここへ来るといいわ。午後からは私が店番なのよ。」

なんと、まだ鏡を買うチャンスがあった。

「い、行きます…!」

「えぇ、待ってるわ。」

「二人とも、そろそろ学校に行った方が良いんじゃないか?」おばあさんが思い出したように僕達に声をかけた。

「そうね。おばあちゃん、行ってきます。」

「僕も行ってきます…。」

「あぁ、行ってらっしゃい。気をつけていくんだぞ。」

僕と女の子は店を出て、それぞれ歩き出した。

女の子の方はほうきを持っているのでそれで飛ぶのだろうか…。とても見てみたい。でも、女の子は一向に飛ぶ気配がない。

「それで飛ばないの…?」

僕は勇気を出して聴いてみた。

「これは授業で使うから持っているだけ。歩いて行くと気持ちが良いのよ。」

「ヘー!魔法の授業…?」

「そうよ。でも魔法は必要最低限しか使わないわ。」

「そうなんだ…!」

意外とそういうものなんだなぁ。

アイディアル・ミラー・マジック☆ (前編)

https://tohyotalk.com/question/661798

アイディアル・ミラー・マジック☆ (後編)

https://tohyotalk.com/question/661806

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