紅剣第6話「裏切りと裏切り」

7 2025/10/03 20:00

薄暗い森の中、夕日がわずかに木々の隙間から差し込み、金色の粉塵が漂っていた。

三週間の旅の疲労が溜まり、仲間たちはようやく一息つけると思っていた――そのとき。

「……え?」

最初に声を漏らしたのはチュウニだった。

道の先、木漏れ日の中で立っている影。

その逆光の中に、確かに見覚えのある輪郭があった。

「ミノグチ……!? 生きて……いた……のか!」

ヒロトが声を裏返らせて駆け出した。

喜びが混ざった叫びだった。

だが、その感情は即座に木端微塵に砕け散る。

ミノグチはゆっくり顔を上げ、氷のような瞳でヒロトを見た。

「……近づくな。異端が」

その瞬間、空がひっくり返るような衝撃が走った。

ヒロトの体が、見えない巨大な力に弾き飛ばされる。

しかし今回は木にぶつかる前に、背後の地面がめくれ上がるほどの勢いで滑り、

ヒロトは土煙を巻き上げて転がっただけで済んだ。

「ヒロト! 何が起こってる!」

アキトが叫び、駆け寄りたいのに、空気の圧のようなものが足元を重くする。

ソラも剣を握ったが、手が震えている。

握力さえ満足に入らない。

ミノグチは一歩だけ前に出た。

それだけで周囲の空気が押しつぶされるように歪んだ。

「やっぱりお前たちか。“異端”として処理せよ……司教様の命令だ」

その声音は、まるで雨に濡れた石のように冷たく、湿り気が一切ない。

ナニ・イッテンダが踏み出す。

緊張しながらも、言葉だけはいつもの調子を保っていた。

「処理とは物騒ですね。まず、我々が異端である証を――」

「黙れ」

瞬間、空中の空気が“押しつぶされる”音がした。

ナニは横へ跳ね飛び、木の間をすり抜けるように転倒する。

チュウニが怒りに震える声で叫び、火炎放射器を構えた。

「お前はミノグチではない……!」

炎が噴き出す――はずだった。

ミノグチが手を軽く振る。

それだけで火炎放射器のノズルがねじれ、火は出ず、ただ煙が漏れた。

金属が悲鳴を上げるように歪む。

アキトが剣を振り下ろす。

だが剣はミノグチに触れる前に“重力の壁”に引っ張られ、地面へと吸い込まれた。

アキトが踏ん張るが、刀身が地面にめり込み抜けなくなる。

「なんだ……この圧力……!」

ミノグチの瞳には一切の憐れみも怒りもなく、ただ“任務”だけが宿っている。

そして、その目がソラの紅い剣へ向いた。

「その剣……司教様が言ってた“異端の匙”か。

お前みたいな虚弱が持ってるのが笑えるな」

ソラは必死に剣を構えようとするが、足がすくみ、膝が震える。

剣だけが勝手に光を帯びているようで、本人はそれに振り回されている状態だった。

ミノグチが手を握ると、大地が震えた。

足下の岩が浮き上がり、ソラたちの周囲を高速で回転し始める。

「……っ!?」

風が竜巻のようにうなり、木々が大きくしなる。

アキトとヒロトはその風圧だけで後ずさりし、踏ん張るのがやっとだった。

「ソラ! 下がれ! 動けないならなおさら!」

ヒロトが叫ぶ。

しかしソラは一歩も動けない。

足が地面に縫い付けられたようだ。

ミノグチが合図もなく指を弾いた。

岩が弾丸のようにソラへ向かって投射される。

だがソラを包む紅い光が“膜”となり、岩は全て弾かれる。

木の幹に当たり、ドガガッ、と鈍い衝撃音だけが森に響く。

「なんで効かない……? 司教様から授かった力だぞ……ッ!」

ミノグチが苛立ち、次々に攻撃を重ねる。

見えない圧力が地面をへこませ、落ち葉が爆裂するように舞い上がる。

木々が撓み、折れそうになる。

しかし、ソラだけは光の膜に守られて動かない。

守られているのに、戦えているわけではない。

ソラは呼吸が荒く、気を抜けば倒れそうだった。

「ミノグチ……もうやめよう……頼む……」

ソラは必死に手を伸ばした。

震え、力も弱々しい、哀願の手。

ミノグチはその手を見つめ――笑った。

「そうだよな。弱いし、戦う気力もない。

だからこそ――ここで終わらせてやる」

ミノグチは胸ポケットから黒い銃を取り出した。

夕闇の中、その形だけが鮮明に浮かび上がる。

ソラは目を見開く。

剣を握る手は震え、立つのもやっと。

避けることなど到底できない。

引き金が引かれた。

激しい音と共に、ソラの足元へ衝撃が走る。

土煙が上がり、ソラの体勢が崩れ、膝が落ちる。

続く二発、三発。

ソラの周囲に着弾し、地面が弾け、土が舞う。

防御の光膜も衝撃で大きく揺らぎ、ソラの身体はバランスを失ってうつ伏せに倒れ込む。

手から紅い剣が離れ、転がった。

「剣に守られてるだけの虚弱め。

終わりだ」

ミノグチはゆっくりと歩み寄り、倒れたソラのすぐ近くに立つ。

銃口をソラの頭上に向けた。

その影がソラの視界を覆う。

ソラはほとんど意識が飛びかけている。

身体は震え、呼吸さえ痛い。

それでも、心だけは折れていなかった。

──誰か……

お願いだ……

みんなを……守って……

ミノグチの指が、トリガーにゆっくり力を込める。

森の木々がざわめき、風が止まった。

そして――

乾いた銃声が、静まり返った森に響き渡った。

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タグ: 紅剣 6話 裏切り

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その他2025/10/03 20:00:33 [通報] [非表示] フォローする
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>>1
すごいね!6話まで来たね!


>>4
アキトの小説の内容簡単に教えて


>>5
サイショ君みたいなやつじゃなくて、1巻1巻づつ書いてる


>>7
それは結構大変そうだね


>>8
sousou今は3巻まで書いた


>>9
すごいね、どんなジャンルの?


>>10
あ、これは投票トークで作っていないんだ。googleドキュメントっていうやつで作ってる


>>12
あーね。ごめんね…


>>13
大丈夫だよ。ただサイショがどんな特徴を持ったキャラなのか知りたかっただけ


>>14
聖剣を持った、一般人だけどめっちゃ頼りになる人。


>>15
冒険したりするの?親友、ヒロイン、ライバル、家族の特徴を軽く教えてくれると嬉しいです


>>16
親友アキト、ヒュージ、シュウト、ソラ。ヒロインなしライバルイッシュン・デ・ホロヴォス、魔王、ア・コンニチワ家族死亡


えーファンタジー系で、最初にサイショ君の村がイッシュン・デ・ホロヴォスに壊され死者が何人もでた。そこで運がいいことにサイショ君と村長、副村長が生きていた。その3人はこの世界の謎をとき、あの龍を逆襲できるのか―


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