殺し屋の食事 ー甘味な食事ー
コツコツコツコツ...レザーソールのローファーの音が廃ビルに鳴り響く。小さな少年、リアは真っ黒な服に身を包み、簪のような針を持ち、怯えて腰を抜かす相手に詰め寄る。
「どーも、スウィン・ドラーさん。貴方の命いただきます。」
リアは、ドラーの胸に簪を突き刺して、一度で息を立たせる。簪を抜くとそこにはドク...ドク...と弱々しく動く心臓が突き刺さっている。心臓を恍惚とした表情で眺め、一回だけキスを落とす。
「あぁ...なんて美しいんだ...それに美味しそう...早く帰って食べたいなぁ」
心臓をアタッシュケースに大切そうに仕舞うと、ケースを抱えビルの出口で待機していた黒い車に乗り込む。
「じゃあさっさと帰ろう。僕疲れちゃったよ」
「リア...アンタほんっとに容赦ないなぁ」
運転席に座った、キツネ目の男がリアに話しかける。男の名はメドラー。メドラーはバックミラーでリアを苦笑しながら見る。
「だって、獲物に手加減する必要あります?」
「いや、手加減なんて必要ないなぁ」
リアは退屈そうに答える。メドラーは一度ため息を付いてリアにタオルを差し出す。
「一瞬で終わらすんはええけど、その返り血をどないかしたってな」
「は~い」
タオルを受け取り、服や顔についた返り血を乱暴に拭う。メドラーはそこら辺で車を止めて、タオルを奪い取り丁寧に血を拭き取る。
「そんな乱暴にしたら服も顔も傷ついちゃうやろ!全く...」
「ごめんなさーい」
「ただいまー」
「おぉ!お帰り、リア!」
「ロベ、お帰り」
双子の、ジョーカー、クワイエットがリアに話しかける。リアは抱きついてくるジョーカーを慌てて支えながらため息を付く。
「ジョーカー、急に抱きついてくるの止めてよ...」
「へへーん!だって俺リアの匂い好きなんだぜー!」
「ジョー兄、止めて。ごめんね、ロベ」
クワイエットはジョーカーをたしなめながら、リアに謝る。リアは苦笑しながら柔らかい笑みを浮かべる。
「ま、まぁ良いけどさ...それより、クワイ今日のご飯なに?」
「今日はお魚だよ」
「俺肉が良いー!」
「ダメ。魚。もう決まった」
「ちぇー!」
「あ、はは...」
これは...双子の喧嘩が始まりそうな予感がする...リアは二人を必死に宥めながらアタッシュケースを指差す。
「僕そろそろご飯の時間に行ってくるね」
「おぉ!俺の分まで食ってこい!」
「そう言ったら食べづらいでしょ。行ってらっしゃい」
リアはケースを抱えて自室へ向かった。
ケースを机において、綺麗な白色の皿に心臓を移す。金色のフォークとナイフを並べる。心臓に手を合わせて祈りを捧げる。
「(...このような贅沢なものが食べれることに感謝を申し上げます...)」
リアは、フォークとナイフを手に取り、心臓を綺麗に切り分け口に入れる。ゆっくりと咀嚼を繰り返し、ごくっと飲み込む。口の端についた血をナプキンで拭い、また食べ始める。
「...(もぐ)...(もぐもぐ)...ご馳走様でした。」
口元を綺麗に拭い、フォークとナイフを皿に時計四時の方向に斜めに置いた。

