「朱藍の婚約者」第十話「知らなくてよかった世界。」
「朱藍の婚約者」第十話 知らなくてよかった世界。
私、朱音と青斗があの少女と出会ってから1日が経った。
朝のホテルのレストランの中で、私と青斗は朝ごはんを食べていた。
…正直に言って気まずい。
昨日のあの少女のこともあるからかもしれないけど、少し青斗は焦ってる...?かのように見える。…青斗は、あの少女のことどんなふうに思ってるのかな。
「ねぇ、二高――」
「なぁ、八王寺、関西旅行は1泊2日だよな。今日で帰るから、部屋に帰ったら荷物をまとめておけ。」
少し気になって、私は気まずい空気を断ち切るかのように二高に質問しようとした。でも、私が言う前に青斗は私の話を遮ってきた。
…そんなにあの少女の話題に触れるのが嫌なの...?
「それは分かったけど――」
「分かったならもうこの話はいいよな。自分の部屋に戻って準備をしておいてくれ。」
またしても遮られた。なんでなのよ。そんなに私と関わらせたくないの?また、あの家の時みたいに私に何も知らせないでいるの...?
そう考えると、なんだかむかっ腹が立ってきた。この前の家の事件から、隠し事は禁止って言ったのに...。
「ねぇ、二高。」
「八王寺。」
瞬間、青斗の声色が変わりトーンが低くなった。
「昨日も言ったが、これはお前には関係のないことなんだ。むやみに知ろうとするんじゃない。」
青斗は、はっきりと拒絶した。それは彼なりの優しさだってことも私は分かっていた。でも、何かを隠されているということに対して聞こうとしたのに拒絶されたことで私の中でなにかか切れた。
「なんなのよっ!!二高はそんなに私とあの女の子を関わらせたくないの!?聞いてるんだから、理由をちゃんと答えなさいよ!!言ったでしょ!?もう隠し事は禁止って!!ちゃんと言いなさいよ、このバカ野郎っ!!」
気づけば私は、青斗に対して怒鳴って、涙を流していた。
「...八王寺。」
青斗はそう呟くと、周りを見渡してから小声で私に言った。
「俺はいいんだが...。周りが見てるぞ。部屋で話せないか?」
*
「...恥ずかしい。」
ホテルの客室で朱音は真っ赤に染まった顔を抑えていた。その横で青斗は腕組みをしながら壁にもたれて立っていた。
「八王寺。その...悪かったな。」
「そうよ!!だいたいあんたが最初から話聞いてたら、私っこうなってなかったもん!!」
朱音は涙で濡れた目を拭いながら恥ずかしさを隠そうと躍起になっている。
「悪かったよ、八王寺。...それでなんだが、本題に戻ろうか。」
「...えぇ、そうしましょう。」
「それで、結局、八王寺は昨日あった少女を探りたいということか?」
「えぇ、そうよ。あの子、助けてほしそうだったもの...。」
「...だが、無理だな。」
思ってない言葉が返ってきたからだろう。朱音は一瞬だけ硬直した。
「...だ、だからなんでなのよ。なんで探しちゃいけないのよ...。」
朱音は信じられないという顔で青斗のことを見た。
だが、青斗は顔色を全く変えずに言った。
「...しつこいようだが、世の中には知らなくて良かった世界というものがある。...俺は、八王寺の護衛なんだ。何かあったら俺の責任になりかねない。」
「で、でもっ...!!」
淡々という青斗の言葉に朱音は反論しようとしたが、言葉が詰まってしまう。
それを言う青斗の顔はまるでそこを経験したかのようだったから、朱音は何も言えなかった。
朱音は少しだけ考えて青斗と向き合った。
「分かったわ。」
青斗はそれを聞いて少しだけ安堵したのか、顔が少し緩んだかのように見えた。
「そうk――」
「でも、条件があるわ。」
朱音が続けた言葉に青斗はまたしても顔が少しだけ固くなった。
「...その条件ってのは何なんだ。八王寺。」
「今日、一日は大阪のいろんな商店街を観光すること。いいわね?」
「...それは...あの少女を探すためか?」
青斗は自分の言ったことが理解できていないのか、と言わんばかりの言い方だった。
「いや?別にそんなつもりはないわ。...まぁ、もしもよ。もし、私があの女の子を見つけたら、ちゃんと喋ってよね。」
「いや、だから俺は――」
青斗が何かを言っている途中で青斗の口元を朱音の指が制した。それをする朱音の口角は少し上がっていた。
「別に、もしもの話だし、私が気づかなければいいだけの話よ?それなら、二高の話も理解したうえで、私がやりたいことをしているだけだから、あんたが言えることは何も無いってわけ、OK?」
そう言って、朱音は青斗の顔から指を離し、指でOKマークを作る。
「...分かった。いいだろう。ただし、お前が見たらの話だ。それでいいよな?」
青斗はそうため息をついて、言った。その言葉に朱音は満面の笑みを浮かべた。
「それでいいのよ!!」
その満面の笑みに釣られたのか、青斗の口元も自然と少しだけ上がっていた。
*
1時間後、青斗と朱音の二人は昨日、行く予定だった商店街へと向かった。
「ねぇ、見て二高!!半径1mのたこ焼き、完食したら1万円ってよ!!」
朱音はバカでかいたこ焼きが書かれた看板を指差し目をキラキラと輝かせた。
「...俺は食べないぞ。」
「なんでよ!!食べなさい!!1万円よ!?時給−何円とかのあんたからしたら大金でしょ!?」
「なんで働いてるのに金が減ってんだよ。それに1万ならすぐ稼げる。」
「っむぅ...。」
朱音はほっぺたを膨らませながら、少し周りをキョロキョロと見渡した。
あの少女を探しているのだろう。青斗自身、そのキョロキョロには数十分前から気づいてはいたが、あえて何も気づいていないような素振りをした。
そして――ついに夕方になった。
*
夕方になると、騒がしかった商店街の喧騒も徐々に静かになってゆく。
結局、この時間になるまで朱音はあの少女を見つけることはできなかった。本来、俺の立場でならこのことに安堵すべきなのだろうが、上手く納得できない。
そんなことを思いながら、俺は朱音に声を掛ける。
「...なぁ、八王寺。もう遅い。そろそろ帰るべきじゃないか...。」
俺が朱音にそう声をかけたとき、朱音はある一定の方向を見ていた。
「...ねぇ、二高。あそこ、変な感じがする。」
朱音が言った方向を見てみるが、道ばっかで人の気配もない。普通の道。だが、何故か俺はすぐにその言葉を疑うことができなかった。
そう、なにかあるのだ。言葉にはできないが、なにか違和感を感じるのだ。
「...ごめん、二高。私、見てくる。」
そう言うや否や、朱音はすでにその道へ走っていた。
「なっ!!」
予想外だった。まさか朱音が突発的にこんな行動に出るとは思っていなかった。
――確かに朱音の言う通り、俺は朱音に隠していることがある。なぜなら、この裏の世界の話はあいつには荷が重い。そう思ったからだ。その裏の世界の事を朱音に知られてしまってはまずい。裏の世界は朱音にとって知らなくてよかった世界なんだ。
一応、念の為、朱音には俺の妖気が入ったビンを渡している。その妖気を追えば朱音には追いつくだろう。
そう考えて俺はすぐさま朱音を追った。
*
今、私はなぜ走っているのだろう。何も確信はないのに、私が向かう方向に私が知りたい答えがあると勝手に思っている。
あの女の子だって、私にはなんの関係もないはずなのに。
助けてほしそうな顔をしていたから、たったそれだけの理由のために走ってる。昔はこんな風に他人のために行動するなんて一回もなかったのに。
私はそんな私を客観的に見て、少し笑ってしまう。
空を見上げれば、立派な三日月が私の道を照らしてくれている。
そうやって、走って、角を曲がって、また走って、そして――。
――そして、私は再びあの女の子に会った。
第十話「知らなくてよかった世界。」:終
次回予告:再び女の子に会った朱音。彼女を前に朱音はどんな行動をするのか。三日月夜空に鬼娘は泣く編、クライマックス。次回、第十一話、お楽しみに。
めちゃくちゃ遅れました!!すいません!!
*プラスワンでもっと知ろう!!:朱音の得意な教科は社会の歴史です。特に大正から昭和にかけてが得意らしいです!!
次回、第十一話は引き続き十話突破記念ということで、朱音のキャラ紹介をしようと思います!!
前話はこちらから→「朱藍の婚約者」第九話「救う者・追われる者」https://tohyotalk.com/question/824996
>>4
やってみたらいいんじゃないですか?モブ王さんの小説面白いですし、いいと思いますよ!!
>>8
あぁー。まぁ、たしかにそれは残念ですね。でも頑張ってください!!一読者として応援しています!!

