「朱藍の婚約者」第二話「飄々と」
「朱藍の婚約者」第二話 飄々と
白金高校。昼休み。昼休みの教室は、まるでこの世界には妖なんていないかのようにいつも通り平穏で賑やかな雰囲気だった。
「八王寺さん!!お昼、一緒に食べよ!!」
「八王寺さんは今日も可愛いね!!」
先日、日本最強の妖使いである青斗と婚約を結ぶことになった、半吸血鬼の八王寺 朱音の席の周りには人が自然と集まっていた。”白金財団の令嬢”という肩書き抜きでも人一倍、目立つ存在であった。
「うん!!ありがと!!一緒に食べよ!!」
彼女は、愛想よく微笑みながら昼食を取っており、クラスにもすぐに馴染んでいた。――そんな、朱音の隣の席で彼女の婚約者であり秘密裏に彼女の護衛を務めている、青斗は、昼食を取るため、学食に行こうと席を立った。その瞬間、朱音の雰囲気がガラリと変わり、青斗が教室を出るまで、ずっと、青斗を睨み続けていた。
(...嫌われるのは別にいいんだが、気にされすぎるのは護衛としては少し困るな。)
青斗自身、嫌われるのは別にいい、好かれて面倒くさくなるよりは、嫌われていたほうがいい。だが、気にされすぎると逆に面倒くさくなる。と思いつつ、朱音の睨みを感じながら、学食へ向かった。
*
学食。青斗はいつも通りそぼろ丼を注文して、一番端の窓際の席に座って一人で昼食を取っていた。――その直後、
「よう!!青斗!!今日も寝癖キマってんね!!」
学食内に響くほどの大声量が青斗の耳元で響いた。
「...おい、耳元で叫ぶなよ、イズ。耳が壊れる。あとなんだ、寝癖がキマってるって。」
青斗が振り向くとそこには、銀髪で高身長の中性的な顔立ちをしたイケメンが立っていた。
「まぁまぁ、そんな頭の固いこと言わないでくれよ、日本最強さん?それといい加減本名で呼んでよ〜。本名で呼んでくれなきゃ、イズくん泣いちゃうぜ〜?」
「うるさい。学校内で日本最強とか言うな。面倒くさい。あと、お前の本名、長いんだから察せよ。」
「え〜?生涯ボッチの可能性を秘めている妖使いの青斗くんの唯一無二の親友にそんなこと言っちゃうの〜?」
「...うるせぇよ。」
とは言いつつも、青斗の表情は普段より少し柔らかかった。銀髪の少年こと、レイズス・コマンダルは青斗が妖使いであることを白金高校の中で知っている唯一の生徒である。
「おい、イズ。また足、透けてるぞ。」
「おっ!!サンキュー青斗。もうちょいで俺が人間じゃ無いことがバレるところだったわ〜!!」
「なんで若干嬉しそうなんだよ...。」
そう、実はこのレイズスは青斗や朱音同様、普通の人間ではない。
彼の実家、コマンダル家は妖界で、ぬらりひょんの次に強いと呼ばれる三大妖の一つと言われるほど権力を持つ、幽霊族のエリート家系なのだ。そんなエリート家系の中でなぜレイズスが人間界にいて、ましてや高校に通っているかというと...。
実はレイズスは人間と妖のハーフ――つまり、”半妖”なのである。今まで力の強い幽霊を輩出してきたコマンダル家にとって、”半妖”という”半端者”はいらないのである。
そのため、レイズスは半ば強制的に人間界に追放されたのである。本人は気にしていないように振る舞っているつもりだろうが、その心中が辛かったことは容易に想像できる。共に、家族を失ってきた仲間からか、ある妖務で知り合った二人はいつの間にか親友になっていたのである。
「...そういえばさ〜。青斗って、あのツンデレお嬢と婚約したんでしょ?...旦那様、ココだけの話ですぜ、あのお嬢のどこに惚れたんですかい?恥ずかしがらずに行ってくだせぇよ〜。」
「なんだ、その喋り方は...。ツンデレお嬢って八王寺の事か?あいつとは政略結婚だ。別にどこにも惚れてなんかない。」
「ふ〜ん?まぁ、知ってるけど。」
「...というか、なんでお前がそれを知っているんだ。昨日の事だしまだ誰にも話していないと思うが。」
「半幽霊の情報収集力舐めんなよ。青斗の隣でバチクソ気配薄くして、屋敷の中で幽体化して、盗聴しまくったからな!!」
「おまえ犯罪だぞ、それ。」
「え〜?親友にひどいこと言うなって青斗くーん。そんなんじゃ、イズくん傷ついちゃう。」
「うるせぇ、クソナルシスト半幽霊が。」
「えぇ!?普通に傷つくんだけど!?」
レイズスは少し真剣な表情になった。
「ツンデレお嬢様って、吸血鬼の血筋なんだろ?」
「あぁ、そうだが。」
「だとしたら、繋がってるよね。ぬらりひょん。」
青斗は一瞬、険しい表情になったが、すぐにいつも通りの仏頂面に戻った。
「...だろうな。」
「ヤバ...因縁の始まりじゃん。」
レイズスはいつになく真剣な表情で青斗の肩を叩いた。
「...死ぬなよ。青斗。」
「フッ。生意気な。当たり前だろ、イズ。」
「...ま。死んだとしても?この親友のイズくんが仇を取るから、心配せず死んでくだせぇ!!」
「失礼だな。」
昼休み終了の鐘がなった。気が付けば、イズと青斗以外学食にはいなかった。
「じゃ、俺は教室に帰るんで!!」
そう言うと、レイズスは若干浮きながら戻っていった。
(相変わらず飄々としてんな。)
そう思いながらも、そんなレイズスの存在に救われていたのは青斗自身であった。
*
放課後。レイズスと青斗は変える準備をしていた。
「...ねぇ、二高。ちょっと来て。」
朱音が青斗を呼び止めた。
「お?ついに、ツンデレお嬢に告白されるんじゃないですか?」
「んなわけ無いだろ。...ちょっと行ってくる。」
そう断りを入れると、青斗は朱音のいる所へ行った。
「ねぇ、二高。昼のことなんだけど、あたし、あんたに言いたい事があるの。」
「...なんだ。」
夕日のせいか不思議と朱音の顔は赤らんでる。
「あたし!!あんたのこと、嫌いだから!!」
朱音は威嚇するような大声で、ストレートに言った。
「近づかれるとホント無理なの!!」
その様子はさながら子犬のようで大して怖くはなかった。
「...分かった。」
青斗は即答した。
「...そういうところが腹立つんだっての!!」
朱音は一瞬、言葉を失ったがすぐさま言い返した。その顔は完全にキレ気味だ。
「言い返してこないのも、上から目線っぽくてムカつくの!!」
「...そうか」
「そうかじゃない!!」
激しい口喧嘩。というよりは一方的な口喧嘩に発展している。
「もう、話しかけないで!!」
「お前から話しかけたんだろ。」
「...もういい!!」
そういうと彼女は踵を返して、サクサクと歩いていった。
青斗はその背中を見つめていた。別に嫌われてもいい、ただ守るだけだ。
遠くでレイズスが呼ぶ。
「お〜い青斗!!早く行くぞ!!」
「あぁ、今行く。」
その声は軽いが、彼の目は遠くを見ていた。
―――死んでも、守る。たとえ嫌われていても。それが、俺の妖務であって、復讐への道のりだ。
第二話・終
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今回初登場のレイズス・コマンダルですが、レイズスが名前でコマンダルが苗字です!!
*プラスワンでもっと知ろう!!:レイズスは自分の身長をちょっと盛るために少し浮いているそうです。
次回は2月5日に3,4話同時配信予定です!!
第一話→「朱藍の婚約者」第一話「邂逅」https://tohyotalk.com/question/813334

