【小説】歌い手グループにはボカロがいます!DOLL:1
ある日の事。巷で大流行の「歌い手グループ」を作ろうと5人が集まった。
修「っよし!皆揃ったか?これから新人歌い手グループ、『VOCAIDOLL』の第一回作戦会議を始める!」
とあるカラオケボックスの一室で、グループの創設者でありリーダーの修がそうアツく宣言した。
ぴのる「何そのクソ暑苦しい言い回し。うっざ。」
可愛い声と裏腹に毒を吐くのはメンバーのぴのる。リスナーの前ではこんな姿は絶対に見せない。プロ意識が高いともいえる。
セツナ「まぁまぁぴのる。修は元々なんだからそんな事言わないであげて?」
エディ「セツナ姉、それフォローなってへんで?」
全くフォローになっていないフォローをするセツナにツッコむエディ。普段はDiscordでしか話していないので会うのは今回が初めてだが、既にこの二人はカバーに回る事が多くなっていた。
修「ん?どうした零度。何も話さずボーっとして。」
零度「え?…あ、ごめん。」
いつもは冷静でボーっとする事はない零度が珍しく呆けているので修が話しかける。数秒置いてから反応するが、まだ黙り込んだ。
ぴのる「マジでどったのれい?」
零度「いや…本当に5人でいいのかなって。」
ぴのる「はぁ~?」
素っ頓狂な零度の発言にぴのるが「何言ってんだこいつ」とでも言いたげに声を大きくする。他のメンバーも目を丸くしていた。
修「5人でいいのかって…どういう事だ?」
この5人は修が物凄く時間をかけて探し出した、最高の逸材である。それを否定するなんて。
零度「いや、違うんだ。ほとんどの歌い手グループは6人だろう?あれは色々と楽だからなんだ。」
修「楽?」
零度「そう、楽。だからできれば6人がいいんだけど…」
零度の言葉を修が繰り返す。確かに歌い手グループは6人が多い。それは、ペアやトリオが組みやすいからである。2×2.3×3など丁度良く配分出来るし、6人だと声に厚みが出る。
ぴのる「でもれいくん、ボクらのレベルに付いて行ける人って他にいないんじゃないの?」
エディ「言い方は悪いけどそれはそうやな。そんないきなり集められへんし…」
そう、さっきも言った通りこの5人は右に出るものはなかなかいないほどレベルが高いのだ。
セツナ「…全く。零度がそんな事言うって事は、何か策があるって事でしょ?」
零度が何か提案をする時はいい案がある時だ。
零度「…さすがセツナくん。皆これを見て。」
どこからか出してきたノートパソコンを開き何やら操作をする。デスクトップを全員が見えるように向けた。
修「…なんだこれ?男?」
そこには白髪の少年が写っていた。
ぴのる「…まさかこれが6人目ですーとかないよねぇ?」
嫌な予感がしたぴのるがそう聞くと、
零度「いや、そのまさかだけど?」
大真面目な顔をして突拍子もない事を言い始めた。
エディ「待って待って。いくら何でも2次元のキャラは入れられへんで?自分から喋れへんやんか。」
セツナ「そうね。流石にちょっと…」
零度「ああ。それなら大丈夫。『ask』、自己紹介。」
やけに自信がありそうな零度が少年に声をかけると、少年は目を開ける。
ask「こんにちは。ぼくはask。男性ボーカロイドエディタです。よろしくお願いします。」
そこから始まった、不思議な少年のお話。