【小説】アガパンサス #2

4 2022/11/02 16:32

前回↓

https://tohyotalk.com/question/418173

前回書き忘れていましたが、「僕」の名前は「義人(よしと)」です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「いてっ!」

「あ、先生すいません!」

「曲がり角はぶつかりやすいから気をつけるんだぞー」

「はい、分かりました」

先生が見えないところまで行ったのを見送り、一度深呼吸をした。

「はぁ〜っ…」

ここは下足だ。ではなぜ下足にいるのか?

理由は一つ、一夏への告白のためだ。

_____といっても、ここですぐするわけではない。こんなところで公開処刑になるのはごめんである。

 以前、質問ができるネット掲示板でこんな質問をした。

『片想い中の女子に想いを伝えるにはどうすればいいですか?』

ありがたいことに、一件のみ回答があった。

『想いを伝えるなら、下駄箱にラブレター!!告白の鉄則やかんね』

今時にラブレター?と面食らったものの、他にいい案が思いつかなかったため、実行することにした。

 己の文章力の欠如を自覚しつつ、何度も何度も推敲して文面を書いた。

もしフラれたとしても、明日には日本は消滅する。

ならばチャンスは今しかないだろう。

 辺りに誰もいないことを見計らい、危うく握りしめるところだった手紙を一夏の下駄箱に入れた。

一夏の所属する女子バスケットボール部は、顧問の厳しさもあって終わるのが遅くなる時が大半だと一夏は言っていた。

下足室から一歩足を踏み出した時、体育館の渡り廊下の方から女子たちのワイワイする声が聞こえてきた。

(しまった、女子の友達と来ることを想定してなかった…)

あの様子ではあのラブレターは一夏はおろか彼女の友人全員に見られてしまう。

 己の失態を悔やみながら僕は校門へと走り出した。

翌朝。

そう、『翌朝』だ。

翌朝が来てしまったのだ。

 その事実に気付き、僕の起きかけていた体がベッドに倒れ込んだ。

ゴマよりも小さい微かな希望を胸に抱き、カレンダーを睨みつけた。

今日は10月25日。つまり、火曜日だ__________

(ダメだ。)

 あの手紙は既に一夏に見られているだろう。いや、もしかしたらそれよりも多い人数に見られているかもしれない。

 10分ほどベッドで転がり、どうにか冷静になった後、のろのろとリビングへ降りた。

母は僕を見るなり声をかけてきた。

「いつもより遅かったね、ちょうど10分くらい。何してたの」

「えー、あー…まだ日本が残ってたから喜んでた」

「なるほど」

朝ご飯のトーストに齧り付きながら、僕は考え込んだ。

 もしかしたら、_____1億分の1くらいの確率だけど_____一夏はまだ手紙を見ていないかもしれない。

友達との会話に夢中になって、下駄箱の中をよく見ていないくて、気付いていないとか…。

いやきっとそうだ。そんな気がしてきた。うん。まだ見てないだろう。学校に行って、どこかのタイミングで手紙を取り出して…。

 それだ。この作戦なら穏便に済ませることができるだろう。少し気が楽になったような気がする。

そう思って、僕は数十回同じところを噛んだトーストを噛みちぎった。

*

重い足を持ち上げながらも、なんとか学校に辿り着いた。

 少し気が楽になったとはいえ、不安は残る。

下駄箱なら、深夜の警備員かなんかが見ていてもおかしくない。

 そんななんの関係もないオッサンに見られたからといって何かあるわけでもないが、できるだけこの事は僕の中だけで終わらせたい。

学校では、隕石の話でもちきりだった。

 でも今日は『隕石の衝突の話題』ではない。『隕石が衝突しなかった話題』である。

「聞いた? 隕石の軌道が逸れて、助かったらしいぞ!」

「知ってる知ってる! よかったぁ〜!」

だがそんなことよりも、僕が気になることはもう一つ、一夏のことだ。

 一夏は頬杖をつきながら、前を呆然と眺めている。

横の席に僕が着いても、全く気づいていないようだ。

 少し勇気を出して話しかけてみようか?

相手の反応を調べることができるし、話すこともできる。

「隕石、逸れたらしいね」

僕がそう言うと、一夏は頬杖をついたまま、ゆっくりとこちらの方を向いた。

 目は半開きで、目は焦点が合ってないようにも見える。

だが次の瞬間、一夏は突然驚いた顔をして言った。

「あ、ふぇっ!? え、あ、ごめん今なんか言った?」

僕は露骨に取り乱す一夏の様子にしばし絶句していたが、すぐに我にかえって口を開いた。

「いや、隕石逸れたねって…」

「あ、あれね! ほんとよかった。落ちてたらもう友達とも会えなくなってたし…」

一夏は少し斜め前を向きながら言った。

「く、クラスのみんなにも会えなくなってたかもだし…」

 一夏は僕の方をチラチラと見て、言葉を腹の底から絞り出すかのように言った。

「暑い?」

手で顔を仰ぎ出した一夏の様子に、つい質問した。

「うん」

「でももう秋の終わりだよな?」

「知らないっ、暑いもんは暑いもん!」

ふてくされたように言い放つと、一夏はまたそっぽを向いてしまった。

 義人は、まだその行動の意味を知る由もなかった。

続き↓

https://tohyotalk.com/question/423909

前回より遅い時間ですが、この時間の方が人もいるかと思ったのでこの時間に投稿しました。

投稿頻度に関する投票を3、4日取ってみた結果、4人中3人が「不定期更新」残り1人が「1週間に1回」という感じになりました。

なのでこれからは、次回をいつ投稿するか未定です。

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その他2022/11/02 16:32:54 [通報] [非表示] フォローする
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1: Chasers @cyalume3 2022/11/02 16:51:28 通報 非表示

下駄箱にラブレターって、義人やるやん()

果たして彼の恋の行方は如何なるのやら……

次回を気長に待ってまーす!


すげぇ

俺この小説のタイトルを考えてみようかなって思ったんだけど語彙力ないことを思い出したわ

でもタイトル考えてみます(必要なくても俺はよき)


>>2
ありがたいです!ありがとうございます


>>3
決まったらDMで教えますね


5: 5コメさん 2022/11/02 20:00:57 通報 非表示

おー、、、


次も楽しみにしてます!!


>>6
ありがとうございます!


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