【小説】アガパンサス #1

8 2022/10/26 07:51

ジリリリリ…ジリリリリ………

どこか遠くの方から音が聞こえた気がした。

ジリリリリリ…ジリリリリリ……

よく耳を傾けてみると、その音はだんだんと大きくなっていることに気づいた。

すると次の瞬間、

ジリリリリリリ!ジリリリリリリ!

 その音は突然耳をつんざくような騒音に変わり、耳を刺激した。

あまりの騒音に僕は思わず飛び起きた。

外からは小鳥の優しいさえずりが聞こえてきていた。

 どうやら、遠くから聞こえていた音は目覚まし時計だったようだ。今もなお鳴り続ける目覚まし時計をオフにし、僕はゆっくりと立ち上がった。

まだ起きていない体を引きずるようにリビングへ行くと、そこには母の姿があった。

「あら、おはよう」

「ん」

母の言葉をそう軽く受け流し、僕は朝食の準備に取り掛かり始めた。

 適当に食パンを袋から引っ張り出すと、バターを乗せてオーブンへ入れ、時間を2分に設定。

「そういえば、最近日本に隕石落ちるらしいわよ」

「えっ?」

思わず、手に持っていた皿を落としそうになった。「なんだって?」

「だからね、最近日本に隕石が落ちるんだって」

「そんなノリで言うことか?」

日本に隕石が落ちるだなんて考えたこともなかった。隕石の大きさにもよるが、日本が滅びてしまったらどうなるのだろう。もし生き残れたとして、どこへ移住する?

 そんな心配が頭の中に次々と浮かび上がった。

「続いてのニュースです」

テレビからその声が聞こえると、無意識にテレビへ目が行った。

「アメリカのASAからの発表によると、新たに見つかった地球に衝突する可能性のある隕石は、日本時間で明日の早朝に日本へ落ち、日本列島がなくなるとのことです」

呆然としてしまって、言葉が出なかった。

明日にはもう日本はないのだから…

_____ならば、今のうちにやり残したことをやっておくべきではないか?

オーブンの加熱完了を知らせるチャイムが、沈黙を破って家中に響き渡った。

*

一言に「やり残したこと」と言っても、まだまだ若い僕にとって、まだやったこともないことは山のようにある。

その中で何をすべきか、この課題に僕は大いに頭を抱えさせられた。

 しかし10分ほどの時間を費やし、ついに僕は、何をするかを決め終わった。

学校中ではしきりに隕石の話が飛び回っていた。

「あの隕石のニュース見たか?」

「みんなしんじゃうのか…」

「知ってるか? 隕石って英語でボルケーノって言うんだぜ! えっ、違う…の?」

どこへ行っても隕石ばっかりだ。

 耳にタコができるほど隕石の話題を聞きながら、やっとのことで自分のクラスまでたどり着いた。

案の定、クラス中でも隕石の話題が飛び交っていた。

「どこ行ってもUFOの話ばっかだね」

そう言って隣の席の女子は苦笑いした。彼女の名前は一夏(いちか)。

 クラスの女子の中でもトップクラスに背が高く、女子バスケットボールに入っていると言っていたような気がする。僕はそんな彼女に1人片想いをしている。

「えっUFO?」

怪訝な顔をして相手の顔を見ると、一夏は慌てて修正した。

「あっああ違う、間違えた隕石だね」

一夏は羞恥心で頬を軽く染めながら笑った。

「明日には日本にぶつかるらしいねー」

「そんな軽い話じゃないんだけどな」

のほほんとつぶやく一夏に軽い突っ込みをいれた。

「あっそうだ。あの宿題やった?」

「どれ」

僕がそう言うと、一夏は「あー、えー、っと、なんだっけ」とつぶやきながら少し考え込んだかと思うと、突然声を張り上げて答えた。

「そう! 数学!」

「あー、あのなんかいっぱい問題あるやつね。やったよ」

「そうそう! ちょっと見せて! 最後のやつ分かんないから」

ファイルから宿題を引っ張り出し、一夏に手渡すと、一夏は卒業証書を掴むかのように大事に受け取った。

「ありがとおー! 助かる助かる」

「自分でやった方がいいと思うけどなー…」

「むっ! 自分でやってもわからないから見してもらってるんですー!」

一夏は不機嫌そうに目を細めて言った。

(かわいい…)

思わずそう思ってしまった。

続き↓

https://tohyotalk.com/question/421619

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その他2022/10/26 07:51:27 [通報] [非表示] フォローする
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>>2
ありがとうございます


5: まめピー @omame0407 2022/10/27 08:11:04 通報 非表示

小説の書き方お上手で尊敬です…


>>5
ありがとうございます!


うまいですね!


>>7
ありがとうございます!


8: 闇氏 @zenjinruisine 2022/10/30 14:49:08 通報 非表示

続きが見たい、と思った投票トーク小説は初めてです。

とても面白かったです。


>>8
そう言ってくださりありがとうございます!光栄です。

ぜひ続きもご覧になってください。水曜日に更新しますので。


11: 闇氏 @zenjinruisine 2022/10/31 15:17:19 通報 非表示

>>10
見ます


>>11
ありがとうございます^ ^


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