【小説】マイ・リトルレナ第2話
「明日花へ」から始まるその手紙は、死んだレナから私宛に贈られたものだ。
封筒に入れられた可愛らしい便箋。いかにもレナが選びそうなものだ。
右下に描かれたうさぎの親子に触れる。
それはまだ、温かみを帯びているように感じた。
自然と目頭が熱くなる。
「いけない、手紙が濡れちゃう。」
震える声で呟く。
まだ視界がぼやける目で手紙を読み進める。
「あんまり手紙なんて書かないからさ、こんなんであってるのかな?w
もう何年ぶりだろw年賀状も印刷だからなぁw
さて、本題に入るとしましょうか。
この手紙を読んでいるということは、私はもう死んだのかな。
何で死んだと思う?
家庭問題だよ。
私の家に呼んだことなかったでしょ?
私ね、親を殺したの。
母親が鬱になってから、父親もイライラしちゃってて、母親が死んだらたががはずれたみたいに私を殴るようになってきたんだ。
多分、母親を愛していたから、母親が死んで、どうすればいいか分からなくなったんだと思う。
まあ、それに気づいたのは殺した後なんだけどね。
しばらくして、家に帰ったら殺そうとして来たから、殺しちゃった。
で、とりあえず強盗殺人に見えるように家荒らして、必要なものだけ持って逃げてきたんだ。
それで、駅にちょうど来た電車に乗って、終点まで行って、死ねるところを探して海まで歩いていったら、明日花に会ったんだ。
あぁ。ここは自殺スポットなのかなって思った。
めっちゃショックだったんだよ?
やっと死ねると思ったのに。死なせてくれないんだもん。
私ね、学校でもいじめられてたし、あんまり体も強くなかったから友達いなかったんだ。
だから、明日花を見つけたとき、友達になれるかもって思った。
それで声かけたんだ。
最後に良いことして終わろうと思って。良い迷惑って感じ?
私、廃墟に住んでたんだ。
で、寝てるときに廃墟を取り壊しに来た業者の人に見つかって、警察に捕まりそうになったから逃げちゃった。
でも別にいいよね?今まで散々聞きたくもない懺悔話を聞かされて吐きそうだった。
もうこっちが鬱になりそう。
今まで頑張ったんだからさ。もう死んでもよかったよね。
明日花は辛いかもしれない。だって唯一の心のよりどころがいなくなったんだもん。
でも私には何もなかった。私の方が辛いのにいっつも自分の方が辛いからアピールしちゃってさ。
上には上がいるってこと知らないの?
私は、明日花のことは嫌いだったよ。
死にたいなら死ねば?あんたを助けたのは私の自己満足だから。
じゃあね。」
衝撃的な終わり方をしたレナの手紙を読んだ私は、しばらく硬直したままだった。
「レナが・・・私を・・嫌ってた・・・?」
言葉に出すのも苦しい。
涙がスッと消える感覚。涙が消えると同時によく分からない感情が湧いてくる。
「あは・・・あはは・・・」
悪い冗談かと思うが、同時にレナはこんなことしないと心が否定する。
これからどうすればいいんだろう。
死ぬ・・・?
いや、レナに助けてもらった命を無駄にするわけには・・・
一瞬頭が真っ白になる。
私、今なんて考えた?
レナに助けてもらった命を無駄にするわけには・・・?
ハハッ。我ながらヘドが出る。
さっきレナにあんなこと言われたのにまだレナに執着、いや、依存してるなんて。
元々棄てようとしていた命だ。死のう。
「私も、殺してるし。」