【小説】もう一度、聞かせてよ
ハレノワさんの小説大会に参加させていただいています。
https://tohyotalk.com/question/482035
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ひゅう、と風が吹いた。思わず目を閉じれば、脳裏に浮かぶのは彼の顔。
——あァ、まだ吹っ切れていないのか。
あの時と同じ、ヒサカキのにおいがする。
「聴覚、視覚、触覚」
「____、______?」
記憶の中の彼が眉を顰めた。
「味覚、あとなんだっけ。そうそう、嗅覚」
「_____。_______」
「人って、この順番で忘れていくんだって」
「__!_____。___、__、____?」
「いやいや、それはないって」
「_____?」
あはは、と二人揃って笑った。
笑ったのに、私の声しか聞こえないのはどうして?
「でしょ〜。人は声から忘れ、香りを最後まで覚える。ってね」
「___!____、__」
ぽたり、と涙が溢れる。今日は花粉が酷いなあ。
ひくり、と喉が引き攣った。
____もう、思い出せない。
「へぇ!それは知らなかったな。じゃあ君もさ、俺の声、忘れちゃうかもよ?」
「いやいや、それはないって」
「本当にィ〜?」
「ほんとほんと!忘れられる訳ないでしょう?
………こんなに好きなのに」
「ん゛んっ、それは反則」
「えぇ〜?何がぁ?」
「___お前分かっててやってんだろ」
あははははっ。くくっおい笑うなって。そっちも笑ってんじゃん。
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タグ: 小説
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