戻らぬ記憶に思いを馳せて。第二話「名前」
第二話 名前
「デイリー……。」
私はしばらく黙り込んでしまった。すると白花が心配したように聞いてきた。
「どうした?もしかして気に入らなかったかな……?」
全然そんなことなかった。むしろ逆だった。
「いや、私この名前とっても気に入った!ありがとう。」
少年はほっとしたように肩を撫で下ろした。
「よかった……。」
ずっとこの名前だったように感じてくる。
「あのさ。デイリー。君はこれからどうするの?記憶がないから家に帰れないよね。」
「確かに……。どうしよう。」
このままだったら私はずっと外で暮らすことになってしまうかもしれない。そう考えていると
「1つ提案があるんだけど……。」
と白花が口を開いた。何だろう。
「言ってなかったけど僕は冒険家なんだ。だから、もしよかったら僕と一緒に旅をしない?」
そんなこと言われると思ってなくて私はポカンとしてしまった。白花が冒険家だったということに驚きが隠せていない。考える。冒険か……。少し楽しそうかも!意を決断して私は白花に言う。
「私白花についていくことにするわ!」
「そうか。じゃあこれからよろしく!」
「よろしく!で冒険ってどこに行くの?」
気になって聞いてみた。
「んー?なんか行きたい場所って感じ?」
そんなラフな感じなんだ。冒険って。
「んじゃ、まずは僕の飛行船を紹介するよ。」
「え!飛行船?!」
飛行船なんて物語でしか見たことがなかった。どんな感じなのかわくわくする。
「そんな驚くことじゃないよ。」
「え!驚くでしょ。普通。」
「ふーん、飛行船はここから少し歩いた所にあるからついてきて!」
そう言って白花は歩き始めた。私もしれに続いて歩く。
「海が綺麗だね。」
そう私は歩きながら言う。
「うん、そうだな。」
そんなたわいのない話をしながら歩いていると5分ほどで目的地についた。そして白花は言った。
「これが僕の飛行船だよ!」