【小説】夕日が丘
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「須藤、ちょっと」
ある日の放課後、渉(わたる)は下足で先生に呼び止められた。
「どうしました?」
「ちょっと渡したいものがあるんだ。職員室まで来てくれるか」
「ああ、分かりました」
「じゃ、頼むぞ」
そう言い残すと、先生はさっさと歩き出していった。
分かりました、とは言ったものの、全く心当たりがない。
欠席はしていないし、受け取るようなプリントがあるはずもなければ、委員会に入っているわけでもない。
誰もいない廊下を1人歩きながら、渉は職員室へ向かった。
**
職員室の扉をノックし、名前と用件を伝えると、両手いっぱいにプリントを抱えた先生が現れた。
「ごめんな、ごめんな。俺が頼んだんだったな、ちょっと待っててくれるか?」
「はい、分かりました」
先生はひょいと頭を下げると、慌ただしく部屋の奥へ向かって行った。
びっくりするほど心当たりがないが、とりあえず怒られるような用件ではないだろう。
ふと窓の外に目をやる。
太陽はもう傾き始めており、全体的に空が橙色を帯びていた。
その時、どこからか現れた瑠璃色の羽を持つ蝶が、空に向かって飛び上がった。どうやら窓枠に止まっていたらしい。
蝶は、初めは順調に空を飛んでいたが、時々、落下しかけるような素振りを見せた。なぜだか、自分の未来の暗示を見ているような気がして、渉はぶるっと身を震わせた。
「……おう、お、須藤、待たせたな」
職員室の扉が開き、先生が出てきた。手には茶色の封筒を持っている。
「これなんだが、お前、七瀬の家分かるか?」
「七瀬…」
七瀬、七瀬璃瑠(ななせ りる)といえば、昔から渉と同じ学校に通うある女子のことだ。世間ではそれを「幼なじみ」と言うのだろうが、あいにくそこまで親しい仲ではなかった。
「まあ、一応…」
「ならよかった。これを七瀬んちに届けてくれないか?」
「いいですよ」
「ありがとう、助かるよ。じゃ、よろしくな!」
先生は一瞬にして姿を消していた。よほど忙しいのだろう。
つい受け入れてしまったが、おそらく璃瑠の家に行ったことなど、大昔に 1、2回ほどだろう。果たして辿り着けるのか。
渉は、受け取った封筒をカバンにしまうと、ゆっくり階段を降り始めた。
*
「こっちだったかな…」
渉は1人、夕暮れの住宅街を彷徨っていた。
記憶を頼りに璃瑠の住む街、夕日が丘まで来てきたものの、肝心の住所が分からないにはどうしようもない。
さすが夕日が丘と言うべきか、近くにそびえる山の木々の間に、茜色の西日がきらめいていた。
「あれ? 渉」
突然そんな声がして、渉は驚いて後ろを振り返った。
「七瀬?」
「どうしたの? こんなとこまで」
璃瑠は右手にビニール袋、左手にスマートフォンを持っていた。
渉は璃瑠の姿をまじまじと見つめながら言った。
「体調不良で休んだんじゃ…?」
「ず、ズル休みじゃないよ、昼から体調がよくなったっだけで…」
璃瑠は慌ててそう言った。さすがの渉にも、彼女が言っていることが嘘、つまりズル休みであるとすぐ分かったが、あえて指摘はやめておいた。
幼馴染とはいえども、数年はまともに喋っていない間柄だ。馴れ馴れしくズル休みだ、と指摘するような勇気はあいにく持ち合わせていなかった。
「あ、そうだ。これ…」
渉はカバンから、先生から渡された封筒を取り出した。
「今日休んでたから、届けに来たんだけど、家が分からなくて」
「あぁ、ありがとう。でも…」
璃瑠は目の前の一軒家を指さした。
「私の家ここなんだよね」
「あ、そうだったのか…」
「そうそう、てっきり分かってるのかと思ってた」
渉から封筒を受け取った璃瑠は、意外な言葉を口にした。
「そうだね、せっかくだし、ちょっとお話でもする?」
「え? お、お話?」
「そ、ちょっと待っててね」
璃瑠はそう言って門を開けると、家の中に入っていった。
渉はしばらくの間呆然としていた。
お話、何を話すことがあるのだろうか。
ふと空を見上げる。もう六時ごろだろうか、白い漆喰の壁が、茜色の夕日を美しく反射していた。
「おまたせー」
璃瑠の声で、渉は我に返った。
「立ち話もなんだし、場所変えよっか」
「どうでもいいけど、なんで急にお話なんか…」
「なんか語りたい気分なんだ」
「語りたい…気分…?」
いまいち納得できない渉を横目に、璃瑠は道を歩き始めた。
**
二人は、璃瑠の家から少し離れた河川敷に来ていた。
「ささ、座って座って」
「自分の敷地みたいな言い草だね」
しれっと突っ込んだ渉に、璃瑠は待ってましたと言わんばかりに威張って言った。
「もう何年も通ってるんだ。自分の敷地みたいなもんでしょ」
「その理論だと近所のコンビニが俺のものになるぞ」
河川敷の土手に腰を下ろした二人は、夕暮れのひんやりとした風を頬に受けた。
「もう知ってるだろうけど」
数秒の沈黙の後、璃瑠が口を開いた。
「『夕日が丘』の由来って、夕日が綺麗に見えるからなんだよ」
こんな感じに、と璃瑠が空を指差した。天を差したその指は、黒い影を落とし、渉の顔に冷気を呼び込んだ。
璃瑠は、逆光で黒くなった腕を芝生に投げ出すと、そのまま横たわった。
「懐かしいね」
「何が?」
渉も、璃瑠を真似るようにして芝生に横たわる。
「こうして話すのがね、小さい頃ぶりだなって」
璃瑠は話を続ける。
「覚えてる? 幼稚園児の時、一緒に夏祭りに行ったんだけど」
「…うっすらとなら」
「私、わがままだったから、結構いろんなとこに連れ回しちゃって。それで、どっちも親とはぐれちゃったんだけど」
「子供だし、しょうがないよ」
璃瑠はそうだね、と微笑んだ。
「そしたら、渉が慰めてくれて、無事に再会できたんだ。すごくかっこよくて、忘れられなくて」
なんだか照れくさくて、渉は顔を赤らめた。
「どうして忘れられないんだろう、って、ずっと考えてるんだ」
何か喋ろうとしたが、到底できそうもなかった。話そうとすればするほど、口がすぼまるように感じる。
「っと、もう7時になっちゃう。そろそそ帰らないとねっ」
璃瑠が唐突に体を起こすと、反射的に渉も立ち上がった。
「帰り道、分かる? 送って行こっか?」
「じゃあ、バス停のところまで」
「おっけ」
口はもう、自由に動かせるようになっていた。
**
「じゃあ、このへんで」
河川敷から、いくつかの路地を抜け、二人は約束のバス停にたどり着いた。
「ここからは帰れるんだったね」
「うん、ここはいつも通るし」
日はもう落ち始めており、もう夜が近づいていた。
「じゃあ」
「またね」
数秒見つめ合った後、発せられたお互いの言葉は、重なり合って響いた。
瑠璃色の羽の蝶が、赤い山茶花の合間を縫うように飛んでいた。
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んま最初の三文ぐらいしか読んでないけどつまらない小説って説明気味な気がする
セリフの「」だけで感情を表現してるというか
顔を赤らめていた事を説明するだけとかセリフで表すだけじゃなくてそれを見てどう思ったとかそれが何を意味してたとか
にわかが言うのもなんだけど
良くも悪くも「テンプレ通り」だと思いました。
表現も内容も。
特に内容に関しては薄味な感じがしました。
起承転結のそれぞれの要素を濃くすれば改善されると思います。