【小説】雨の日の夕焼け
「今日も雨かー…気分下がる…」
「しょうがないでしょー」
母が気怠げにそう答える。もう、お天道様もお母さんも今日が何の日か知らないの。それともわざと?
「今日は長峰くんを好きになって3年記念だよー?それなのにこんな雨だなんて、はぁ…」
「知らないわよ」
今日屋上で告白しようって思ってたのに。雨なんか大嫌い!「はぁ」ともう一度大きくため息をついた。
「ほら、そんな事言ってないで早くご飯食べちゃって。遅刻するわよ」
「分かってるよ!」
「行ってきまーす」と言いながらドアに手をかける。
長峰くんは私が高校入学すると同時に隣の家へ引っ越してきた。クラスの男子と違って大人びていて、とてもお顔が美しい!!私は顔を見た瞬間に一目惚れ。他のクラスの女子はこの魅力に気づいていないらしい。勿体ないけど、ライバルが増えてほしくは無いので好都合である。もちろん今では性格も全部ひっくるめて彼のことが大好きだ。
(これを直接言えればいいんだけど…)
頭を抱えていると後ろから
「あ、水野ー!」
と、私を呼ぶ声が聞こえた。大好きな声で。
振り返るとそこに居たのは、予想通りさっきまで私の頭を悩ませていた、長峰くんだった。
「おはよう」
「おはよー長峰くん」
とても可愛らしい笑顔で挨拶をしてくれた。そのお陰で私は吐血しそうになった。尊すぎて。
内心はこんな事を思っているが、外での私は至って普通。平常心を保っているから。
「今日雨ヤバいねー…靴下もうビショ濡れ」
「そりゃあ傘さしてなかったらびしょ濡れになるよ…」
「冗談はよしてよ~、ほら傘ならここに…ない!?」
「あはは…」
「何で!?ちゃんと朝持ってきたはずなのに!?ええええ…」
長峰くんに夢中になりすぎて、めっちゃ忘れてた!私の馬鹿!アホ!どうするのよもー!
私がしゃがんで鞄の中に折りたたみ傘がないか確認していると
「どう?ありそう?」
そう言いながら傘を私の方に傾けてくれている。こういうところ!さらっと出来るの紳士すぎ!
「無い、いつも学校に置いてるから」
「そっか、じゃあ俺の傘入る?」
「え?」
優しい笑顔で尋ねる長峰くん。正直今すぐにでも入りたいけど、すんなり入ったら「こいつ相合い傘目当てだったの?」とか思われそうだし。学校はここから800メートルほど先にある。逆を言えば800メートルしかないのだ。だったら傘無くてもいける!
「いや、大丈夫!あと800メートルぐらいだし、これ位余裕!」
「…相合い傘とか気にしてる?」
「え、あ」
続く。
このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)