【小説】厄払餅
2025年1月1日
私は干し柿を口に含みながらカレンダーをじっと見ていた
「もう2025年か~...2024年が終わった実感ないな~」
「2024年は死んだんだ
いくら呼んでも帰っては来ないんだ
もうあの時間は終わって、君も人生と向き合う時なんだ」
「いやそこまで憂鬱にはなってないけど...」
相変わらず変わった事を言う里亜を尻目に私は2024年最後に注いだお茶を啜った
~午前9時~
私の地元では、毎年とある餅が配られる
その名も「厄払餅」
神社でたくさんお祈りをした特別な餅で、その名の通りこの餅を食べるとその年の厄を払ってくれると言う
別に信じてはいないが、この餅はかなり美味しい為私は毎年この餅を貰っている
「今年もいっぱい貰えたね~」
「これ以上餅を食べたら私はジンオウガになってしまう...」
「その時は私が殺してあげるよ」
となんだか意味の分からない話をしながら帰路に就く
「やあお嬢ちゃんたち、そんなに餅を抱えてどうしようと言うんだい?」
「私たちで食べるんですよ」
「そんなにたくさん食べたら...いや、なんでもない」
「え?」
「気にしないでくれ」
近所の変なおじさんに絡まれた
そんなにたくさん食べたら...?いや変な事言いたいだけか
気にしないでおこう
「ひ~疲れた~」
「餅を食べる。それこそが私の生きがい」
「もっと生きがいあるでしょ...」
帰って来て早速里亜は餅を食べ始めた
普段は変な発言が目立つ里亜だが何も言わず餅を口いっぱいに頬張る姿は結構愛おしい
「ちょっと~そんなにいっぱい食べないでよ~」
私も負けじと餅を食べ始める
「ん...ん゙!?ん゙ん゙ん゙っ!」
「えっ!?どうしたの!?のどに餅詰まっちゃった!?」
「ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙!!!!ん゙ん゙ん゙ん゙!!」
「ちょっと待って!すぐ救急車呼ぶ!」
そうして新年早々里亜は救急車に運ばれた
まったく何をやっているのやら...
ドゴーーーーーン!
「きゃあ!何!?」
慌てて外に出ると落石で家が半壊していた
奇跡的に私の居る和室は無事だったが、今リビングに居たら土砂の下敷きになっていただろう...
「い...家が...」
こういう時どうしたらいいのか分からず立ち尽くしていると、音を聞きつけたであろう近所の方がこちらにやって来た
「こりゃあすごいな...」
「霖田さん可哀想に...」
「私の家じゃなくて良かった...」
「あ、あのっ...」
誰も話を聞いてくれない
誰もどこにも連絡をしようとしない
全員野次馬...
あんな事が起こった...でも生きてる...って事はあの餅って本当に厄を祓ってくれる餅なの!?
食べといてよかった...食べてなかったら今頃下敷きになってたかも...
「はあ...でも家が無くなっちゃったな...」
学が無くどうしようも出来ないため私は近くの交差点を歩いていた
「これからどうしよ...」
未来の事を考えていると、不意に軽トラが目に留まった
この交差点を利用している車が少ないからってあんな高速で走るなんて危険すぎる...
そう考えていたら...
キキーーーッドン!
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『厄呼餅』
食べると厄が訪れる危険な餅
とある地域の神社などで「厄払餅」として配られているが絶対に食べてはいけない
無論、この餅を大量に食べた主人公と里亜がどうなったかは分かるだろう。