[七夕祝い(?)小説]天の川に架かる願い
今日は七夕🎋!なので小説書きました!
長いですが見てくれたら嬉しいです!
夏の夕暮れは、ゆっくりと空の色を変えていく。群青から茜色、そして深い藍色へ。東京の喧騒も、この時間ばかりはわずかにその音量を落とすようで、ベランダに出た私の耳には、遠くで子供たちが遊ぶ声が届く。今日は七夕。年に一度、織姫と彦星が再会を果たすという、ロマンチックな夜だ。
リビングでは、妹の七海が飾り付けをした笹が風に揺れている。「お姉ちゃん、短冊書いた?早く書かないと、織姫様と彦星様、聞いちゃくれないよ!」七海の声は、いつだって私の心を明るくする。
私の短冊には、毎年同じ願いが書かれている。「家族が健康でいられますように」。平凡かもしれないけれど、それが私の一番の願いだった。でも、今年はもう一つ、小さな、個人的な願いを付け加えた。
私は大学で天文学を専攻している。特に、星の光が何億年もかけて地球に届くという事実に、いつも心を奪われてきた。今日、この七夕の夜も、研究室の屋上にある望遠鏡で、天の川を観測する予定だ。
夜8時。研究室に向かう道すがら、街灯の光が弱まるにつれて、空には少しずつ星々が顔を出し始めた。都会の空でも、目を凝らせばいくつかの明るい星が見える。でも、やはり天の川を見るには、もっと暗い場所へ行かなければならない。
研究室の屋上に着くと、すでに数人の仲間たちが集まっていた。望遠鏡の準備をしながら、私たちは今日の天の川の見え方について話し合う。例年より空気が澄んでいるといいな、と誰もが思っていた。
望遠鏡を天の川の方向に向け、ファインダーを覗き込む。最初はぼんやりとした光の帯にしか見えなかったけれど、次第にその中に無数の星々が瞬いているのが見えてくる。一つ一つの光が、はるか彼方の宇宙で輝く太陽なのだと思うと、途方もないスケールに心が震えた。
その時、隣にいた同期の健太が言った。「七夕って、ロマンチックだよな。まさか本当に織姫と彦星がいるわけじゃないけどさ、こうして星を見上げていると、本当に物語があるみたいだ」
私は小さく頷いた。健太とは、大学に入ってからずっと一緒に星を見てきた。彼も私と同じくらい、宇宙の神秘に魅せられている。
「ねえ、健太はどんな願い事したの?」私はふと、いたずらっぽい気持ちで尋ねた。
健太は少し照れたように笑った。「秘密。でも、きっと叶うといいな」
その言葉に、私の胸の奥がじんわりと温かくなった。私の二つ目の願い。それは、「いつか、健太と一緒に、もっと遠い場所で、満点の星空を見られますように」だった。口には出さなかったけれど、この天の川の下で、同じ夢を抱いている健太の隣にいることが、今はただ嬉しかった。
夜空を見上げていると、まるで天の川が、私たちの願いを乗せて、どこまでも続いていくように感じられた。織姫と彦星が年に一度だけ出会えるように、私たちもまた、この広大な宇宙の中で、かけがえのない出会いを果たしている。
望遠鏡を覗き込む健太の横顔を見る。彼の瞳には、きっと私と同じように、無限の宇宙が映っているのだろう。
七夕の夜は、過ぎていく。しかし、天の川に架かる私たちの願いは、きっとこの先もずっと、夜空に輝き続けると信じていた。そしていつか、その願いが、満天の星の下で、現実になる日が来ることを願って。
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