変わらない日常
スマホを持って、家から出て、いつもと変わらない足取りで近くの高架橋へ向かう。親は何も言わなかった。そりゃあそうだ。これで5、6度目だろうか。最初は塾の帰りに行ったが、ただの遠回りにしかならず、3度目は多くの人を心配させたが、結局何も変わらなかったことは覚えている。対してやる気は起きない。いつもと同じ結末になるだろうから。いつもあいつが邪魔するから。
目的地に着いて、都会と言うには低すぎるビルの隙間から見える日は地平線からはまだまだ遠かった。1番高いところには登るには少ししんどいくらいの高さの柵が設置されている。少し進んで、手すりの土台に足を掛ける。が、高さを気にしてしまう。やらなければ、どうにもならないのに、またやらない理由を作ってしまう。これもまた、あいつのせいだ。周りを気にするが、ただ車が通るだけで、ヒロインが止めに来るなんて綺麗なストーリーになりはしない。そもそもそんな人間は俺の周りにはいないし、そんな人間がいるなら、こんな思いはしなかっただろう。どれもこれも俺のせいなんだろう。どうせ産まれてくるなら、主人公。それもとても良いストーリーの主人公が良かった。完璧で、誰かを幸せにできて、心の底から優しくて、それでいてどころか抜けていて、チャラチャラしていて、本当は臆病で、支えてくれる人がいないと今すぐ消えてしまうような、そんな主人公が良かった。そうじゃなきゃ、意味なんてない。この世界も自分もあいつも嘘だと思える。全部憎い。そんな自分が1番憎い。全部俺が悪いのに。あいつのせいだといつも思うが、実際は、俺こそがあいつなんだろう。また、帰り際には『あいつと入れ替わりたい』だなんて叶わないことを願うんだろう。そんなことを思うたび、やる気すらなくなる。俺が頑張ったとしても何になるんだろうか。俺が生きて何になるんだろうか。今日も意味もなく帰る。やり切れずに、帰る。情けない。代わりにすらなれない。こんな日常を過ごすなら、何もない真っ暗な日常にしてしまいたい。他の誰がどう思おうと、どうでもいい。俺だけが不幸になればみんなが幸せになれる世界はないのだろうか。いや、あるんだろう。ただ、その一歩が踏み出せないだけだ。今日もまた、フリをするだけだ。嘘ついて、嘘ついて、嘘ついて、誰も得しない。俺は、誰かを幸せにしたいなんて本気で思えるような人間にはなれないんだろう。
変わらない日が続く。
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