【小説】1話「新たなスパイ」
1話「新たなスパイ」
俺はスパイ。名前は「ヴェアヴォルフ」と言ったところかな。
名前の意味は、狼男や人狼などだ。
厳密に言うと、コードネームだけどな。
おっと、師匠から電話だ。
「ヴェアヴォルフ、今日も仕事だ。いつもありがとな。」
「いいえ、師匠、これでしか礼を返せないので。」
俺は5年前___。
いわゆるホームレスだった。
ゴミ箱を漁り、飲みかけの水を拾い、必死に生きていた。
心優しい人がパンをくれたりもした。
そんな俺に、一筋の光が俺を照らしてくれたのだ。
「君、僕のところで働かないか。」
見知らぬ人に声をかけられて、俺は驚いて、後先を考えず、はい、と言ってしまった。
「じゃあついてきて」
子供の頃に親に教わった、“知らない人にはついて行っちゃだめだよ”
今はそんなことさえも、忘れてしまうような気がした。
そうしてついた場所は。
地下だった。
「ここが君の職場だよ」
「...。」
俺は唖然とした。
「...もしかして緊張してる?」
「いや、大丈夫です」
その地下は、薄暗く、人が数十人いた。
「おーい!みんな聞いてくれ!」
そこで作業をしていた人が、一斉に作業をやめてこっちに視線を移した。
「この子、道で拾ってきた。今日から僕らの仲間だ」
仲良くしてやってくれ、とこの人は言った。
というか名前を聞いていなかった。
「あの、名前って...?」
「ああ、言っていなかったな、すまん。」
「僕の名前はレヴァナント。コードネームだ。」
__それから俺は、今日からスパイだということを伝えられた。
そのことは誰にも言ってはいけないと。
「まずは拳銃に慣れてもらおう。」
「拳銃、ですか・・・?」
最初のうちはモデルガンで練習らしい…。
「はい、これがうちのモデルガンだよ」
「お、おぉ、結構重いんですね...」
「うちのモデルガンは出来が良いからねぇ」
大きさ、重さ、弾の補充方法も本物同様だ。
「じゃあ、あそこに見える紙を撃って」
あそこ、というのは人の輪郭が書いてある紙だった。
「はい。」
バーン、と大きな音が場に響いた。
撃ったところは_
「君すごいね」
「え...?」
俺の撃ったところは見事、心臓に命中していた。
「こんな人初めてだ」
師匠は少し笑いながらそう言った。
それと、小さな声でなにかを呟いた。聞こえはしなかった。
「それじゃあ今日は銃を練習してもらおうかな」
そう言われて、俺は地下で銃を練習していた。
「、ねぇ...君、本当に新人?」
誰だ...?ここの従業員か。
「ああ、ごめん、俺此処のスパイの一人。」
「そうでしたか。」
名前はなんて言うのだろう...?
「俺はクラージュだよ。」
クラージュ...?確かフランス語で勇気を意味する語、だったかな。
「あ、俺は、まだ、コードネームとかは、ない、です...。」
「ああ、俺にもそんな時期があったな」
なんかこの人の顔、どこかで見たことのあるような...
「...めっちゃすごいじゃん、銃を扱うのが上手だね。俺が君くらいの時は、何も上手に扱えなくて、怒られてばっかだったよ」
クラージュは微笑みながら昔の話をしてくれた。
最初は銃や小さな剣などではなくて、拳や足を使って戦っていたこと。
家を追い出されて、夜の道を彷徨っていると師匠に誘われたこと。
色んな話を聞いた。
「そうそう、実は俺、此処の“幹部”なんだ」
「幹部...幹部っ!?」
俺はそんなに偉い人と喋っていたのか...と感嘆していた。
「そんなに遠い存在だと思わなくていいよ。此処は、協力と信頼がモットーだから」
「そうなんですね...。」
「まぁ、期待してるよ」
無理はしないでね、と俺の肩を叩いて彼は去っていった。
「俺も頑張らなきゃだな」
俺はより集中し、早さを重視して撃ち始めた。
相当な時間銃を撃っていると、流石に腕が疲れてきた。
頭に血が、巡らない...上手く、立てない...。
「...やべ、」
バタッ
あぁ、おれ、きのうまで、ホームレスで、こんな動いたの、ひさしぶりで....。
_その後の記憶はない。
2話へ続く
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