【小説】1話「新たなスパイ」

5 2026/08/23 11:30

1話「新たなスパイ」

俺はスパイ。名前は「ヴェアヴォルフ」と言ったところかな。

名前の意味は、狼男や人狼などだ。

厳密に言うと、コードネームだけどな。

おっと、師匠から電話だ。

「ヴェアヴォルフ、今日も仕事だ。いつもありがとな。」

「いいえ、師匠、これでしか礼を返せないので。」

俺は5年前___。

いわゆるホームレスだった。

ゴミ箱を漁り、飲みかけの水を拾い、必死に生きていた。

心優しい人がパンをくれたりもした。

そんな俺に、一筋の光が俺を照らしてくれたのだ。

「君、僕のところで働かないか。」

見知らぬ人に声をかけられて、俺は驚いて、後先を考えず、はい、と言ってしまった。

「じゃあついてきて」

子供の頃に親に教わった、“知らない人にはついて行っちゃだめだよ”

今はそんなことさえも、忘れてしまうような気がした。

そうしてついた場所は。

地下だった。

「ここが君の職場だよ」

「...。」

俺は唖然とした。

「...もしかして緊張してる?」

「いや、大丈夫です」

その地下は、薄暗く、人が数十人いた。

「おーい!みんな聞いてくれ!」

そこで作業をしていた人が、一斉に作業をやめてこっちに視線を移した。

「この子、道で拾ってきた。今日から僕らの仲間だ」

仲良くしてやってくれ、とこの人は言った。

というか名前を聞いていなかった。

「あの、名前って...?」

「ああ、言っていなかったな、すまん。」

「僕の名前はレヴァナント。コードネームだ。」

__それから俺は、今日からスパイだということを伝えられた。

そのことは誰にも言ってはいけないと。

「まずは拳銃に慣れてもらおう。」

「拳銃、ですか・・・?」

最初のうちはモデルガンで練習らしい…。

「はい、これがうちのモデルガンだよ」

「お、おぉ、結構重いんですね...」

「うちのモデルガンは出来が良いからねぇ」

大きさ、重さ、弾の補充方法も本物同様だ。

「じゃあ、あそこに見える紙を撃って」

あそこ、というのは人の輪郭が書いてある紙だった。

「はい。」

バーン、と大きな音が場に響いた。

撃ったところは_

「君すごいね」

「え...?」

俺の撃ったところは見事、心臓に命中していた。

「こんな人初めてだ」

師匠は少し笑いながらそう言った。

それと、小さな声でなにかを呟いた。聞こえはしなかった。

「それじゃあ今日は銃を練習してもらおうかな」

そう言われて、俺は地下で銃を練習していた。

「、ねぇ...君、本当に新人?」

誰だ...?ここの従業員か。

「ああ、ごめん、俺此処のスパイの一人。」

「そうでしたか。」

名前はなんて言うのだろう...?

「俺はクラージュだよ。」

クラージュ...?確かフランス語で勇気を意味する語、だったかな。

「あ、俺は、まだ、コードネームとかは、ない、です...。」

「ああ、俺にもそんな時期があったな」

なんかこの人の顔、どこかで見たことのあるような...

「...めっちゃすごいじゃん、銃を扱うのが上手だね。俺が君くらいの時は、何も上手に扱えなくて、怒られてばっかだったよ」

クラージュは微笑みながら昔の話をしてくれた。

最初は銃や小さな剣などではなくて、拳や足を使って戦っていたこと。

家を追い出されて、夜の道を彷徨っていると師匠に誘われたこと。

色んな話を聞いた。

「そうそう、実は俺、此処の“幹部”なんだ」

「幹部...幹部っ!?」

俺はそんなに偉い人と喋っていたのか...と感嘆していた。

「そんなに遠い存在だと思わなくていいよ。此処は、協力と信頼がモットーだから」

「そうなんですね...。」

「まぁ、期待してるよ」

無理はしないでね、と俺の肩を叩いて彼は去っていった。

「俺も頑張らなきゃだな」

俺はより集中し、早さを重視して撃ち始めた。

相当な時間銃を撃っていると、流石に腕が疲れてきた。

頭に血が、巡らない...上手く、立てない...。

「...やべ、」

バタッ

あぁ、おれ、きのうまで、ホームレスで、こんな動いたの、ひさしぶりで....。

_その後の記憶はない。

2話へ続く

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