【小説】5話「初任務と記録」

4 2026/08/25 21:18

5話「初任務と記録」

あれが、エクリプス。

師匠に渡された、薄い端末のようなものを腕に巻いて、記録をするとのことだ。

エクリプスの任務内容は語られていない。

起動ボタンは、っと。

「わっ」

起動をすると、俺の腕に光が走った。

「なんだこれ、」

…いや、今は記録だ。

音声で記録するらしい。

腕の端末に向かって言葉を落とすと、勝手に短いコードに変換される。

「9時3分施設入室」

腕に向けて小さな声で言った。

画面には《[09:03]施設入室:記録済補足情報:自動圧縮完了》と表示された。

「圧縮...?」

こんなことをしているうちに、エクリプスはどんどん任務をこなしていた。

保管庫が並んでいる場所から、一度も迷うことなく立ち止まり、当然のように書類を取り出した。

「...運が悪いな。」

独り言だった。

書類を見つめながら言った、“独り言”だった。

多分、俺に聞こえないように言ったみたいだが、呼吸の音が際立つ空間では、その小さな声もはっきりと耳に届いた。

考えるのは後だ。

「、9時8分、書類入手」

エクリプスの言った言葉に困惑しながらも、記録を取り続けた。

…運が悪い?書類になにか書いてあったのか?それともイヤな感じを汲み取ったのか?

いろんな考えが脳をよぎったが、正解はわからないままだ。

そんな時、エクリプスからの視線を感じた。

エクリプスは、出口の方と俺を交互に見て、頷いた。

戻るぞ。ということだろう。

エクリプスは書類を袋にしまい、施設をあとにした。

「9時13分施設退室」

記録を取りつつ、施設を振り返った。

だが、変わった様子は何もなかった。

施設を見渡しているうちに、エクリプスの背中は小さくなっていた。

俺は視線を切り、エクリプスの後を追った。

地下に続く通路に入ると、外の空気が途切れる。

「運が悪いって、結局なんだったんだ...。」

そんなことを言いながら歩いていった。

「あ、もしかして君がウワサの新人ちゃん?」

声のする方を振り向く。

前髪は目元を隠しているのに、その人物はまっすぐ俺を見ていた。

「え、た、多分俺だと思います...?」

「やっぱり」

「メメント。」

そう名乗ると、ゆっくり近づいてきた。

「で、何悩んでるの?」

「え?」

「何?」

「いや...」

前髪で目は見えない。

それなのに、視線を外すことができなかった。

会ったばかりなのに、変な人だ。

6話へ続く

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タグ: 小説 5話 任務 記録

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