【小説】社長の娘 第1話
なんとなく関わって、なんとなく仲良くする。
お父さんが大手会社の社長だというのに、私はこんなんなんだ。
学校では、咲姫のおかげである程度は目立つ方だけど。
咲姫の仲良しグループに入ってる私は、めちゃくちゃ浮いてると思うけど。
仲良しグループのメンバーは咲姫、私、舞のたった3人だけど。
私たち3人はまるで性格がマ反対。
咲姫は、クラスの中心人物で、おしゃれ好きだけど、私は咲姫と舞がいなきゃ行動できない陰キャで、おしゃれに興味もない。
ちなみに舞は、そんな目立つ方じゃないけど超ポジティブ人間。
だいたい、私なんかが2人と仲良くしていいことなんかないと思うけど。
「あーんなっ!」
「ふぁっ!?」
後ろから飛びついてきたのは・・流星くん。
さっきも言ったように、私は社長の娘だから、家はマンションほどのでかさの一軒家。
私とお父さんとお母さんじゃあ使いきれないから、親戚と同居生活をしてるの。
で、その「親戚」っていうのが、楓家の3兄弟。
一番上が楓紗夜くん。完全なツンデレ男子。
真ん中が楓凪くん。優しくて頼りになるおっとりタイプ男子。
末っ子の楓流星くんがよく私に飛びついてくる甘えん坊。
楓家の両親もわりと大手なほうだからお金持ち。(だと思う。)
ちなみに流星くんと私が中1っていう同い年だけど、同居してるのは学校には内緒。
バレたら絶対やばい。
なぜかというと、うん。楓3兄弟はうちの赤椿学園の1番モテる奴らだから。
ヘンな誤解されたくないよね!?
「なに、流星くん。」
「紗夜兄が呼んでたよー!」
紗夜くんは高1だから、南校舎に行かなきゃか。
「ありがとう。行ってくる。」
「紗夜くん・・!」
「おう。」
「用ってなに?」
その瞬間、紗夜くんはカバンからある本を出した。
「これ。」
『理科 ~植物と生物~』
え・・?これを渡すだけのために南校舎に呼んだの?
「え・・?」
「おまえ、最近テストの点数ヤバいだろ。伊藤から聞いたぞ。」
伊藤って・・ああ。咲姫か。
咲姫、よくも言ってくれたなっ!
「ってことで、明後日までにp.15まで完璧に覚えとけ。」
「無理無理そんなの。」って言いたいところだけど。
紗夜くんは楓家と私の誰よりも頭いいから、逆らえないんだよね。
「は、はい・・」
ピーンポーンパーンポーン
昼休みが終わって、授業が始まる。
私は自分の席に座って生物の本を机に出した。
「なにそれーっ!」
舞が私の席に来た。後ろに咲姫もいる。
「生物の宿題。紗夜くんからの。」
「あ、うちが紗夜先輩に頼んどいたやつ?」
「え、紗夜センパイッ!?」
2人でさえ、秘密の同居生活のことを知らないから・・
「よかったねぇ杏菜ちゃん。紗夜センパイからなんてねぇ」
みたいなことを舞が言ってくる。
「よかったでしょー?紗夜先輩で。うちが教えるより、好きな人に教えてもらった方が気合入るでしょ。」
な、なんか変な誤解されてる。
別に同居してる親戚同士なだけで、好きとかじゃないし・・
「アンは、結局誰推しー?」
私の返事を待たずに咲姫が続けた。
「やっぱ紗夜先輩?」
「あ、あ、流星クンだったり?!」
舞もつなげる。
「凪さんもいいよねー」
二人でどんどん進んでいく会話に私はついていけない。
聞いてたら頭がごちゃごちゃになって、思わずいけないことを言ってしまった。
「ちがうっ、全部違うから!流星くんたちはただの友達っ!」
私は普段おとなしいほうだから、こんな大きな声が出たことに2人は呆然している。
おまけに視界には、傷ついた顔の流星くんがいた。
彼はしばらく立ち止まり、席に着いた。
(最悪だ・・。)