東方SCPの小説を供養 序章〜2話
「···································」
「だめか······················」
「頭が割れるようだ。いや、潰されてるといった方が正しいか。クソッタレ·····」
「·······························」
「この調子じゃコンやグラスはもうダメそうだな。ブライトは案外····いや、ないか」
「···················」
男は横に投げ出されていたショットガンを持ち、顔面に押し付けた。使い古されているが、しっかりと手入れされている。
「···············■■■■、お前に······また会えるか?·········」
ドゥンッ
鈍い銃声が鳴り響き、男は息絶えた。
空には大きな星に囲まれた目が輝いている。
∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼
「ん。あ、あぁ?」
一人の男が林の中で目を覚ました。
彼はコンドラキ博士。イカれた研究員だ。
(おい、どこだよここ······· またジャックのいたずらか? 今度あったらクソにまみれたDクラスに首飾りつけてやる)
そんなことを思いながらコンドラキは辺りを見渡す。
(良かった。蝶たちはついてきてるな)
この蝶たちは SCP-408 主にコンドラキ博士が研究しているSCPオブジェクト(scip)だ。
このscipは高い知能を持ち、体を透明にしたり、集団で様々なものを模倣することができる。コンドラキ博士との間には深い絆があり、自身の能力を使用してコンドラキ博士をサポートする。
(さてと、スマホは····圏外か)
スマホを使って仲間と連絡を取ろうとしたコンドラキだが圏外だったので繋がらなかった。
「あ"ぁ〜めんどくせぇなァ! ったく余計なことしやがって。ブライトめ。クレッフィーがいたら退屈はしないんだがな」
ジャック·ブライト、ブライト博士。
優秀だが心が壊れてしまった問題児。とんでもないことをいつもやらかすが、財団には忠実。いざというときに頼りになる。
𝄡·クレフ、クレフ博士
怪しさ満点のウクレレ男。女に嫌悪感を抱かれやすい体質で、卑猥な論文を大学で発表したところ追放され、その論文にscipが関係していたことで財団に雇用された。ブライトまではいかないが優秀な研究員で、様々なscipに関わっている。
戦闘スキルはコンドラキ以上で、コンドラキとは殺り合う仲。コンドラキだけに打ち明けた秘密がある。
(とりあえず開けた場所に行くか)
コンドラキは光が多く差し込んでいる方向へ進んだ。
「おぉ!これは綺麗だな」
林を抜けると大きな湖が広がっていた。そう感嘆の声を出すとコンドラキは自前の カメラで写真を取り始めた。
そうこのカメラもscip。しかも自作の。SCP-515-ARC 魔改造が施されたカメラ。本来撮ることができない異常存在を撮るため(という建前で)コンドラキが作成した(なお対人戦闘でも使える模様)
「しっかしどこだここ?····ん?」
一通り写真を撮ったところでコンドラキは湖の向こう側に[紅い館]があることに気がついた。いや、館というよりは[城]と呼んだほうがしっくりくる大きさだ。
コンドラキは笑っていた。なにしろ半年もクレフと殺り合ってなかったからだ。城の見た目からコンドラキは吸血鬼の類がいるだろうと予想していた。前回吸血鬼を殺した際はある程度他のscipがいたから勝てた。しかし今回は単独だ。スリルを味わえるかもしれないとわかったコンドラキの顔は輝いていた。だが、
(まずはあの山に登るか)
ひとまず地形を確認したいと思ったコンドラキは天まで届きそうな大きな山に登ることにした。
∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼
「こいつは驚いたな」
コンドラキが見通しが良い高さまで山を登ると、紅い館の他に人里らしきものが見えた。
(随分歪な場所だな。洋風の館があったと思ったら日本の集落か。どちらにしてもいい景色だ)
コンドラキがカメラを出して写真を撮ろうとすると
「動くな!」
「··あ”?」
コンドラキは複数の人に囲まれた。しかも何人かは飛んでいる。
「こんなところで何をしている!ここは参拝道ではないぞ!天狗が支配する侵入禁止区域だ。それとその服装、里の人間じゃないな!」
おそらく“天狗”のグループのリーダーである少女がコンドラキに言った。
ここでコンドラキは自分が侵入者として認識されてると悟った·······彼にとってはどうでもいいことだが。
「ハイハイ、帰ればいいんだろ帰れば。じゃあな天狗さん」
「待て!尋問を行な···あっ!う”わ”あ”あぁぁぁぁぁ!」
「「「「「!?」」」」」
一人の天狗が立ち去ろうとするコンドラキを止めようとするといきなり発狂したように叫び出した。
「来るなぁ。来るなぁァァァァァ!!」
「おい!お前何をした!傷つけても構わない!捕らえろ!」
リーダーである少女に続いて天狗たちがコンドラキに襲いかかった。コンドラキは背中に背負っていたサーブル(フェンシングの武器)を取り出し攻撃をいなす。
(まずい。この男やり手だ)
犬走椛、この班のリーダーがそう考えながらコンドラキと戦闘をしていると仲間が全員もいなくなっていた。
「お前さんの仲間、みんなちょうちょ遊びに夢中だなw」
コンドラキが煽る。仲間もいなくなりしびれを切らした椛は
「狗符『レイビーズバイト』!!」
「うぉっ!と」
突如黄色と赤色の光弾が現れ、コンドラキを挟み撃ちにするように迫ってきた。コンドラキは地面に倒れ込むように弾幕を避けた···が
「もらった!」
その隙をついて椛が攻撃してきた。しかし
(え······いない)
コンドラキは姿を消していた。
「お前らありがとな」
コンドラキはSCP-408に語りかける。彼らが椛との戦闘中に身代わりとなって入れ代わり、その隙に離脱したのだ。そして他の天狗を分散させたのも彼らだ。
(大して強くなかったが山も登り降りしたし疲れたな。湖付近で休むか)
湖についたコンドラキはSCP-408たちに見張りを頼み、木陰で眠り始めた。
「チルノ達いないな〜でかけたのかな?」
緑髪の触角を生やした少女が林の中をぶらぶら飛んでいた。
彼女の名前は“リグル・ナイトバグ”蟲を操ることが出来る蛍の妖怪だ。いつも通りぶらぶらしていると
「····ラキマダねテル?」
「ねテルヨ。みはりつづケテ」
声が聞こえて来た。リグルは一瞬でこの声が虫同士の会話だと分かった。
(おかしいな?大抵の虫は単語だけしか話せないのに?文を話せたとしても群れないんだけどな?)
「おーい!そこで話してる虫さん達〜で〜ておーいで!····あれ?」
声をかけても出てこない。さらに会話も急に止まった。
(あれ?おかしいな?)
不思議に思ってると目の前に蝶の大群が現れ
《ア ナ タ ハ テ キ ?》
文字を作り出した。
「いや、違うよ!私は、え、えっ!?」
リグルが敵ではないことを言おうとした瞬間、目の前に化け物が現れて襲いかかっていた。
「ちょっ、ちょっと。うわあぁぁぁ、あ”」
パニックになって逃げ出したリグルだが“何もないところ”におもいっきり頭を打って倒れた。
「コンドラキヲよンデコヨウ」