▶︎ポッキー・オイシイナ:ストーリー01 固有魔法

4 2025/05/18 12:47

 …ああ、五月だ。

 深呼吸して、なぜか傷だらけになっている鉄の扉のドアノブに手をかける。

 体重をかけて押すとやっと開き、うーんと伸びをしている菅原先生と目が合った。

「ひっ今年もよろしくお願い致します!」

「あんま反射的に出て来ないぞその言葉、礼儀正しくて大変よろしい。」

「は、はい…!あっ、えっと、8年モルガナイトの…ポッキーオイシイナデス」

「…貴様も大変だな」

「気遣いは時にしてイジリより辛し」

「ごめんな」

 さて、まずは呪文一式の復習からだと本に埋もれた机の反対側の壁へ歩く。ポケットから鍵を出す。

 壁に鍵先を当てると、それは沼に嵌ったかのように沈む。そのまま回して一般的な扉板ほどの面積の壁を剥がす。

 扉の先は第五武道場になっていた。

「そういえばここ、亜空間校舎でしたねぇ…」

「あぁ、便利な事この上ない。」

「ですねぇ。えぇっと…どれからやれば?」

「発見順で頼む、攻撃系はそこの『紙人形』を使え。」

「了解です!」

 杖を抜き、唇を動かして発音を確かめ、空気を掬い上げて水底の光を注ぎ込むようなイメージで。

「Gravis, sed levis.」

 光の屈折でできた球形が現れ、手を伸ばすと確かに水の感触があった。

 手を引き抜いても水滴は付いておらず、空気よりはるかに重いはずの球形は空中でその形を保っている。

「…Etiam Nereides volo volare in caelo.」

 ポッキーの周囲の光も屈折する。踵がふわりと持ち上がり、両手で『空』を掻くと爪先まで床を離れた。

 そのまま数十センチ上昇し…

「Tam avarus sum.」

 球形は四倍ほどの体積に広がる。

「Nunc sequere.」

 ポッキーが進む方向に球形がついてくる。これで球からはみ出して落下することはない。

 一旦解除し、『紙人形』に向かって攻撃魔法の詠唱を始める。

「Heus, etiam Nereides in caelo volare possunt…Quam ob rem tibi dixi ne altius intenderes.」

 人の形と大きさをした人形の周りに屈折の球形ができ…人形は突如原型を残さずに潰れた。

 『水圧』が上がったのだ。

「Cave aestus.」

 屈折の球は正体不明の引力に伸ばされ、人形だったものを超高速で壁に誘導する。

 

「adhuc dea maris est, nostisne.」

 壁に叩きつけられかけていた人形の骸を反対方向に引っ張り、屈折した領域を天井に伸ばして今度は骸を上にやる。領域をぐるぐると渦状にして骸を螺旋状に落とし、横に低空飛行させて『使用済み』人形の穴にポイ。

 かなりの魔力を使ったようで、そのまま床にへたり込んでしまった。

「…やはり貴様の固有魔法は興味深いな、これほどの派生呪文を有する奴はそうそういない。」

「あはは、何せ基礎効果が弱いですから…」

「それほど伸びしろがあったじゃないか。とりあえず今年は偶数年だから派生呪文探しはナシ、去年発見した派生を重点的に鍛えていくぞ。」

「はいっ!」

 正直派生呪文をとっとと探し切りたい研究者魂は燃えていたが、流石に発見した呪文は使いこなせるようにサポートしないと駄目だろう。それが教師としての務めだ。

 …そういえば、9年にも伸びしろがすごい毒舌少女がいた。

 ここは一つ、校長の魔法に頼ってみようか。

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暮らし2025/05/18 12:47:03 [通報] [非表示] フォローする
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2: おつき @Otuki 2025/05/18 13:22:40 通報 非表示

ポッキー・オイシイナw


>>2
名前思いつかなかったんだよ…


5: おつき @Otuki 2025/05/18 13:29:22 通報 非表示

>>4
うちは名前一覧見て考えたw


>>5
私もそうすれば良かった…


すごい!めっちゃ!(倒置法)


>>3
 ありがとうございます、対戦実技をお楽しみに(*´꒳`*)


>>7
楽しみにしてます


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