▶︎交差式ストーリー:移動魔獣園①
「嬢ちゃん、これ貰って行きな。」
「はいっ、こっちも!」
「今度来てね〜」
「話!ここに電話して話聞くだけで良いから‼︎先生様のお話聞くだけで…」
「ここ遊びにきな〜」
「ほら、受け取って受け取って!」
「良いから持っていきなって」
「…だれか…!」
爛々と輝く目をした大人達によって大量の広告付きティッシュや飴やチョコバーをポケットにねじ込まれ、カレンダーや名刺を握らされて半泣きになっている少女。
何とか逃げ出して校舎裏に辿り着くが、数組のカップルがグラブジャムン風味の青春を交わしていたため目を閉じてそっと柱の陰に隠れた。
「来週から学園のグラウンドに移動魔獣園が来る。」と言われると夕食のホールは沸き立ったが、ポッキーは憂鬱だった。
この時期、移動魔獣園の臨時スタッフには様々な団体から多くの応募があるらしい。警備の厳しい魔法学園の無垢な生徒達に宣伝を行う格好の機会だからだろう…ポッキーはそういうのを断れない性質なので、毎年被害に遭っている。
今年こそはまともに魔獣を見ようと意気込むものの、結局初日からこの有様だ。
「…うぅ…今年も空き時間は図書館に籠城しよっかな…」
宣伝を断れたとして、檻の前の人だかりにも到底耐えられそうにない。
やはり、自分にお祭りごとは無理なのだろう。
「…戻ろう…図書館なら、室長と副室長もいるはず……怖いけど…」
その時。
黄金の立体パズルからピースが外されて、
カチリ、と世界が組み替えられた。
…そんな気がした。
「…?何だ今の…そこのあんた、何してんの?」
背後には、恐らく先輩である生徒と社会/魔法史の日光先生がいた。校章の色を見るに先輩はアパタイト寮で、歯車議会。
「ひっおはようございます‼︎」
「相変わらずよくビビるな〜オイシイナ。」
「えっと…この方は?」
「ああ、お前歴代首相の名前とか覚えれないタイプだもんな…こいつは歯車議員のアシュフォードだ、この時期は軽音部として俺達一輪車クラブと手を組んでる。」
「…歯車議会と国家を一緒にしないでください、国家に私はもったいない。」
「ウワソウイウヒトカァ…」
「何か言った?」
「何でもないです‼︎」
ひとまず深呼吸し、自己紹介を済ませ、改めて説明してもらう。
9年アパタイト、歯車議員で軽音部に所属しているこの人はアシュフォード先輩というらしい。ふわっと墨が滲んだみたいな毛先と梅雨明けの青空の目が綺麗な人だ。なんか怖いけど。
そして、先輩と先生は毎年魔獣園のスタッフさんからあえてティッシュ類を大量にもらい付いていた広告を部やクラブの広告にすり替える事で生徒を釣る『餌』の費用を削減していたらしい。
「…セッコ。」
「それほどでも」
「地獄耳‼︎」
「一輪車クラブは部員不足なんだ、仕方がないだろう。」
「それにしてもですよ…ってか軽音の方はむしろ人気クラブじゃないですか!」
「まぁ、勧誘の必要はないけど面白いから。」
「やっぱ変な人だ…そんな事してないで魔獣見ましょうよ魔獣園なんだから…!」
と言ったところで、自分もそんな事言える立場ではないことに気がつく。
「…まぁ、魔獣は見なくても良いかもですけどせめて」
「…お前達、何をやってる。」
「室長⁈」
150cmのポッキーより数cm高い日光先生とそれより10cm強高そうなアシュフォード先輩の背後に、身長2mの室長が現れる。
段々柱の陰が賑やかになってきたためグラブジャムンカップル達を不安げに確認すると、とっくに退散していた。
「…黒暗天、あんたも外とか出るんだね。」
「あぁ…少々日差しが強いが。」
それ自体が生きているようにギロリと光る白銀の髪に耳に大量の尻尾は、確かにこれからの季節に弱そうだ。
「…えっと…剃ります?」
「何故」
「オイシイナ…羊じゃないんだぞ。」
「あんた、結構変な奴だね。」
「うわなんかダメなこと言っちゃったんですねけど先輩にだけは言われたくないですそしてごめんなさい!!!」
「謝る必要は無い。」
「はい…」
「改まった言葉遣いの必要も無い、お前の方が年上だ。」
「あっ、そうだったね…えっとじゃあ、室長ちゃん。」
「…黒暗天は女子生徒だったのか!初めて知ったな。」
「違うんですか⁈」
「…」
「こたえてよ…」
「…」
「そういやあんたどっちなの?」
「…」
「あー、それウチも気になってた!今度のネタにしよっかな…」
「あぁまた来た!なにここ安全地帯じゃないの…?」
「『普通じゃない』人だかりは大抵良いネタになるっすからねー」
「あんたは誰なのさ」
「7年モルガナイト尖晶、奥村です!ところで皆さん何してんの?」
「わ、分かんないよ…なんか宣伝から逃げてたらみんな来て…」
「そうだ思い出した。オイシイナ、そのティッシュ群をくれないか?俺達の広告に差し替えて使う。」
「そんなこと言ってましたね…もらってくれるなら全然どうぞ…」
「まいど。それじゃ、私達は押してるからこれで。」
「…そういう事か。軽音部の活動なら、俺も参加すべきか…?」
「室長…くんちゃんって軽音だったの⁈」
「ああ。では、明日の昼休みに。」
「うん、当番ね…。」
3人が人混みの中へ戻っていき、気温が少し落ち着いた。
「…ネタはなかったかー」
「うん、そうみたい…奥村ちゃんって熱心なんだね。」
「ノルマがあるんすよ…尖晶は新入生にも人気高いっすけど、ほら光って眩しいほど影も濃いじゃないすか。」
「哲学だ」
「あと『ちゃん』じゃないっす」
「『くん』か!」
「そうとは言ってないっす」
「え…?」
「それじゃあ、ウチもそろそろインタビュー行かなきゃド突かれるんでー」
「うん、いってらっしゃい…」
………疲れた。とんでもなく疲れた。
放課後とはいえ、そろそろ戻ろう。そして今年も一人寂しく籠城して過ごそう…。
…いや、でも…やっぱり…
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ポッキー・オイシイナ
▶︎明日だけまた挑戦してみる
(ルート: ghost)
今年はもう諦めようかな
(ルート:black)
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アスラ・アシュフォード
▶︎新設ブースで宣伝する
(ルート:black)
他生徒のブースを借りる
(ルート:flower)
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日光 奏多
▶︎檻の近くでティッシュを配る
(ルート:ghost)
自販機前でティッシュを配る
(ルート:double“S”)
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黒暗天 秀鵺
▶︎室員にも声をかける
(ルート: black-a)
一人でアスラについていく
(ルート:black-b)
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奥村 デンキ
▶︎インタビューを続ける
(ルート:”S”detached)
他生徒のブースを見に行く
(ルート: black/flower)
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【登場キャラの原作様】
@wajaranai
@tendourana
@dotB
@ohayohayo
@soutah9h
・話(というか会話)自体はまああまり深く考えずにいただいて…ついにルート分岐が始まりました!皆様それぞれお好きな方を選んでいただけたらなと思います。
・たまにルート分岐ではなく、ルート開拓のキャラがいます。例えるなら分岐は『どの船に乗るか』、開拓は『船でどこに行くか』です。途中から別のルートに移る選択肢も出てくるかも。そして次の行事や分岐で開拓が回ってくるのはあなたかも。
・今回のルート名は開拓を握るキャラクター達からつけられていたりします。どのキャラクターなのか予想したり、気になるキャラクターの原作様と同じルートを選んだりするのもアリかも…?
・ちなみにまだここで登場していないキャラクターは8名、これからガンガン関わってきます。お話もちゃんとしてきます。お楽しみに‼︎