▶︎交差式ストーリー:移動魔獣園②
「ねぇるる、本当にここにいてくれていいの…?」
「もちろん!僕もちょっとした治癒ならできますからね。」
「そっかぁ、ありがとう!」
魔法学園では、教師の許可さえもらえれば生徒が敷地内にブースを出すことが簡単に認められている。
こういう行事では怪我人が多く出るので、少しでも学園医の助けとなるべく花咲優蘭は治療ブースを出していた。今はそこに天槻るるが加勢してくれているところだ。
数分に一回のペースで来る怪我人も、何人も何人も治せば魔力が危うくなってくる。途中で倒れてしまったら、治療ブースは禁止されてしまうかもしれない。
それを避けるためにも、協力してくれる人がいるのはありがたかった。
パラリ、テキストのページをめくる。
「…そういえば気になってたんですけど、それ何ですか?」
「あぁ、この本?」
「はい。人体についてみたいだけど…ふせんに呪文とか、写真のところにマーク付いてたりするし。すごいですよね!」
「えへへ。すごい、かぁ…」
つぼみが朝露でほどけるように笑って、ほっぺたに人差し指をふにゃりと置いた。
「僕、魔力が多い方じゃないから。この怪我はここから『流す』と少ない魔力で済むとか、そういうのを考えるために読んでるんだ。」
「人助けのためにそんなことまで…!」
「ありがとうって笑ってくれるの、やめられないよねぇ〜。」
こくこくと、耳飾りを揺らし頷く。
「それ、なんか分かります。僕もそういうのにいつも励まされてて…っていうと、建前っぽくなっちゃいますね。」
…それによって特別酷く傷ついたわけではないが、今までに何度か言われた言葉を思い出す。眉を下げて口角を上げて、あまり深い傷ではないことを示した。
「…るるもかぁ。」
「まあ、そういう人はいますよ。言わせておけば良いんです。」
男子生徒がやってきた。蛇梟に咬まれたそうだ。
心臓の位置に人差し指と中指を当て、「Iterum, rursus ad infantem.」と浄化するイメージで魔力を注ぎ込む。
「内側から毒を綺麗にしたから、傷口の方もすぐ治るよ。これ、貼っておきな。」
そう言って絆創膏を渡し、「ありがとうございます!」と聞いて微笑む。
「傷口から流さなくても治るんだ…!」
「傷口を治すためのものが、血液に入ってるからね。その血液を綺麗にすれば…」
「傷も治る、ってわけですね!」
「そうそう…あっ。どうしたの?」
今度は女子生徒が来た。高いツインテールを結んだ日焼けした子で、赤い瞳が午後の光で燦々と輝いている。
「あれ、晴雨さん!やっぱり怪我すると思ったよ。」
「なっ、あんた失礼ね!」
「へぇ、るると虹心って仲良いの?」
「そんなわけないでしょ‼︎」
「う〜ん、特に仲が良いってわけではないけど…お互い同じ学年だし、みんなが知ってる感じだしね。」
『みんなが知ってる』という言葉に反応し、ふっふーんとする虹心。
「あぁ、確かに。るるは歯車議会の副会長だし、虹心は問題児だしねぇ。」
「なっ…‼︎」
全く悪気が無さそうな優蘭と、水をかけられた猫のようになる虹心。それを見てるるが笑いをこぼした。
「…あ、あの…」
「あぁ、ごめんね。二人ともすぐ治すよ。」
そしてその後ろに、また女子生徒が来る。
「いや、うちは怪我人じゃなくて…」
虹心と同じ金髪だが、色白で水色の目を泳がせていた。
「あっ、おうげつさん!君はどうしたの?」
「いや、そ、その…」
「なによ、とっとと言いなさいよ。」
「晴雨さんも圧かけないであげて…!おうげつさん、人見知りだから…」
「す、すみません…。その、うち達行事の度に一つは記事書かないといけなくて…魔獣とかは全部先輩達が取っちゃったから…」
「この治療ブースを取材しに来たってわけね!いいわ、許可してあげる。その代わりかわいく撮ってよね‼︎」
「何で晴雨さんが仕切ってるのさ、ブース立てたのは花咲先輩だよ。」
「えっあんた先輩だったの?」
「うん…みんなより一つだけ上だよ…。あっ、取材なら全然大丈夫だよ。」
「あ、ありがとうございます!」
そしてやっと虹心の話を聞くと、どうやらコカトリスに咬まれたらしい。
「…いや何で早く言わなかったの虹心!猛毒だよ!死ぬよ⁈」
「あんた達がぺちゃくちゃ喋ってたんじゃない。」
「それはごめんでも虹心も早く言ってよ、解毒薬もらいに行くから絶対安静ね‼︎」
「そっ…それならうちが先輩運びます!えっと今夜は三日月だから…」
杖を抜き、両腕を伸ばして構える。
腕を引き、ずらし、杖の弦で矢を射ようとするように…
何をしようとしているのか、最初に気付いたのはるるだった。
「みんな!!避けてーー!!!」
ベレー帽と髪飾りを持って振り、必死に人混みを退かす。
「Estne id magnum.Est lunae nox.」
おうげつが見えない矢を放つ。
るるは持っていた物を地面に落とし、咄嗟に優蘭をおうげつの近くへ押した。
空と大地が氷の軌道で歪み、二人は広い広いグラウンドの向こうへ一瞬で飛ばされていく。
もちろん人混みは大騒ぎで、一連の発端である虹心も目を丸くしていた。
るるは、へなへなと溶けたように座り込む。
「…確かに速いけどさ…僕が察しなかったらどうするつもりだったの…」
「まっ、信頼の証ってやつじゃない?」
「君は絶対安静してろ」
「喋るぐらい良いじゃない!」
「死にかけてるんだぞ」
「慣れてるもん」
「⁈」
「問題児なめんじゃないわよ」
「さっきは言われて怒ってたでしょ…。」
結局帰りは二人と学園医の先生が普通に走ってきて、大急ぎで薬を注射して、虹心は経過観察のために一晩入院することになった。
「今年の初入院は遅かったわね」
「そんな年数回が当たり前みたいに」
「…」
「…どうしたの?」
「……あのね、天槻。」
「うん。」
「咬まれてね、」
「うん。」
「…ちょっとだけ、こわかった…。」
「じゃあ最初から檻に手突っ込むなよ‼︎」
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晴雨 虹心
▶︎退院後、治療ブースに遊びに行く (ルート:ghost)
退院後、流石に反省して図書館からグラウンドを眺める
(ルート:”S”detached)
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天槻 るる
▶︎明日も治療ブースを手伝う
(ルート: ghost/black)
先に自販機に寄る
(ルート:double”S”)
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花咲 優蘭
▶︎明日、ブースを立てる前にちょっと魔獣を見て行く
(ルート:flower-a)
真っ先にブースを立てる
(ルート:flower-b)
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望月 おうげつ
▶︎治療ブースの取材を続ける
(ルート: black/double”S”)
魔力を使いすぎたので静養する
(ルート:ghost)
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【登場キャラクターの原作様】
・話自体はまああまり深く考えずにいただいて…ついにルート分岐が始まりました!皆様それぞれお好きな方を選んでいただけたらなと思います。 ・たまにルート分岐ではなく、ルート開拓のキャラがいます。例えるなら分岐は『どの船に乗るか』、開拓は『船でどこに行くか』です。途中から別のルートに移る選択肢も出てくるかも。そして次の行事や分岐で開拓が回ってくるのはあなたかも。 ・今回のルート名は開拓を握るキャラクター達からつけられていたりします。どのキャラクターなのか予想したり、気になるキャラクターの原作様と同じルートを選んだりするのもアリかも…?交差ストーリー①もぜひご参照ください。 ・ちなみにここで登場していないキャラクターは9名、これからガンガン関わってきます。お楽しみに‼︎
>>3
復活⁈
嬉しいです、三つ目の初期班に入れさせていただきますね(*´꒳`*)
ルート:”S”detached
でお願いしますっ!😆
めちゃ面白くてわくわくしました!
>>8
おっそっちは新しい出会いがありますよぉ〜、そう言ってもらえて嬉しいです(*´꒳`*)