▶︎黒闇天秀鵺:ストーリー01 固有魔法

4 2025/05/19 01:07

 引っ掻き傷と凹みだらけの鉄の扉を開け、中で何やら書き仕事をしていた教師に近付き見下ろす。

「…7年、アイドクレース。黒闇天です。」

「おお、またデカくなったか?」

「…」

「すまない。生徒の成長を喜んでいただけだ。」

 184cmの菅原先生よりも更に頭一つ分大きい身長は、秀鵺にとって誇れるものではない。

 狐の耳先と大量の尻尾をぺたりと垂らし、先生が第五武道場とこの部屋を繋ぐ壁に鍵先を呑ませているのをじっと睨んでいた。

「さて、毎年恒例『奴等』の点検だ。数も増えてきたし、今年は3回に分けて行うぞ。」

「了解…。」

 ファスナーのついたポケットから濁った色の硝子玉が入った瓶を取り出す。ヘッドホンを外して首にかける。

 蓋を開け、最初に手に触れた硝子玉を取り出し、詠唱する。

「Etiamsi blasphemetur in Deum, hoc pulcherrimum caelum tibi ostendere volo.」

 結び目が解けたように、硝子玉は美しい和服の女性へと姿を変える。

「Age, hoc caelum polluamus simul.」

 女性の首が伸びて、くるくると宙に何周も円を描いた。

「opinor, caelum modo clarior fuit post omnes.」

 また女性を空間の結び目に閉じ込めるように、硝子玉へと戻す。

 他の妖怪でもその一連を5回繰り返す。

 まるで気絶するかのように、秀鵺は武道場の床に倒れ込んだ。

 一瞬動揺する先生だったが、まだ意識があることを確認すると優しくタオルを投げつける。

「…今、俺に殺意ありましたよね。」

「無いが?」

「…」

 キョトンとした顔の先生を見て、彼がフルマラソン30周余裕完走者であることを思い出し、蚊のような声で呟く。

「…腕力もあるか。」

「どうした?何か言ったか?」

「いや…」

「まぁ、流石に疲れたか…ご苦労様だった、点検済の玉は別の瓶に入れてある。どっちもポケットに入りそうか?」

 こくり、頷く。

「それじゃ、こののど飴もついでに入れてけ。魔力に良い薬草が使われてるし、普通に美味い。」

「…そんなに必要ない。」

「煙晶室の面々にも配ってやれよ。貴様の他に桜空と酒呑は固有魔法の消費魔力がデカいし、オイシイナはセットで使う派生呪文の量で食われる。花咲は怪我した生徒を片っ端から治癒してるせいですぐ魔力切れ起こすって学校医が心配してたし、晴雨は私利私欲のために天候操るし…全く困った生徒達だ。」

 そんな事を、どこか嬉しそうな顔で言う。

「…よく見てるんだな。」

「教師の務めだからな。」

 その数日後、図書館の奥の煙晶専用エリアに突如のど飴が入った箱が現れ、添えられた「直接渡すのには勇気が必要だったので、ご自由にお取りください。」のメモを見てみんなで『恥ずかしがり屋さんX』にほっこりしたのは別の話。

 そして、学内掲示板に貼られたその写真が拡散されていつの間にやら校内ミームと化してしまったのもまた別の話…。

 

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拡散用



【登場キャラの原作様】

@tendourana
@Cream_pasta

 …ところで、写真を拡散したミーム化の元凶は誰なんでしょうね?@kokokoko
@furuyaruka
@wajaranai
@ahonahito
@Nicosabu0317


あははー

写真を拡散した?

ナンノコトダロウネー


ソンナノシラナイヨー


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