紅剣物語第5話「のんびり?悲惨旅行録」

9 2025/10/02 20:29

その現実は、時間が経つにつれてソラの心に重く沈んでいった。

生まれてからずっと暮らしてきた家。

学校の帰り道に何度も通った小道。

それに──よく一緒に遊んだ、幼馴染のエセヒ・ロインちゃんの笑顔。

それらすべてが、もう存在しない。

──焼かれて、消えたのだ。

「ヒロト。……お前、どうしてそんなに平然としていられるんだよ」

横を走るヒロトに、ソラはたまらず問いかけた。

「当たり前だろ。……俺は、自分の親が嫌いだったんでね」

あまりにもあっさりとした言葉に、ソラは思わず足を止めそうになる。

「そんな……」

「……まあ。憎かったけど、それでも生きていてほしかったとは思うよ。さすがに、ね」

ヒロトの金髪が、風を受けてふわりと揺れる。その表情には、どこか遠いものを見るような冷たさがあった。

後方では、アキトとナニが無言で走っていた。

その前方、先頭を走っていたチュウニが、ふいに口を開く。

「あの人造人間の二人……“異物”を探していたな」

「たぶん、それは……俺の父さんのことだと思う」

「それと、ダキア軍による村の襲撃。無関係に見えるが──繋がっているはずだ」

チュウニの言葉に、ソラは頷いた。

ダキア領──かつて「ルーマニア」と呼ばれたヨーロッパ大陸の一角。

火星神を信奉し、地上をその支配下に置いた軍事国家だ。

「……じゃあ、東部地区はもう全部、敵だってことか?」

ヒロトが冷静にそう言った瞬間、ソラの胸に黒い感情が生まれた。

「敵って……どういうことだよ」

言葉を吐くように呟く。

「今まで、俺たちは火星神を信じて、ずっと平和に生きてきたんじゃないのか?

それを守ってたのが、ヨーロッパ連合の……火星神の正当な使徒たちだったんじゃないのかよ……」

一行の足音だけが、しばらくの間、沈黙を埋めた。

だが、次にその静寂を破ったのは、チュウニだった。

「……なあ、ソラ。

嫌なら──無理に我慢すること、ないんだぞ」

ヒロトとアキトが驚いたように顔を上げる。

チュウニはゆっくりと言葉を続けた。

「俺たちは……正直なところ、非力だ。

守れなかったものの方が、たぶん多い。

上から何か言われれば、はいはいって頭を下げて……

そういう“普通”の中で、なんとなく生きてきた」

焚き火の余熱のような、柔らかい声だった。

「だけどな。

心のどこかで……“違うんじゃないか”って思ってたやつ、きっと俺だけじゃないはずだ」

一度だけ肩をすくめ、少し照れたように笑う。

「ほら、こういうこと言うと、すっげぇそれっぽいだろ?

でも、まあ……いいじゃないか。

多少はったりでも、前に進めるならさ」

穏やかで、無理に強がらない言い方。

それでも、どこかで“自分たちを導く男”として見られたい気持ちは隠しきれていなかった。

「──だからさ。

この世界……少しだけ変えてみようぜ。

誰かの事情じゃなくて、自分の意思で、生きるために」

その言葉は、ソラの胸にすっと沁み込んでいった。

強制もしない、鼓舞しすぎもしない。

ただ一歩前へ進むための、ささやかなはったりのよう。

もしかすると──この世界の秩序そのものが、間違っているのかもしれない。

もしかすると──父は、それを正すために、家族を残して旅立ったのかもしれない。

「……ごめん、みんな。

俺……もう、こんなことは言わない。自分たちだけが踏みにじられるなんて、間違ってる。

俺は絶対、父さんを見つけ出す。絶対に」

その夜以降、旅は地獄と呼べるほどの苛酷さだった。

昼はひたすらに歩き、夜は獣や盗賊、そして謎の“影”との戦いに明け暮れる。

疲労と空腹が、徐々に彼らの心を削っていった。

──それでも、ソラは前に進んだ。

どんなに足が重くなっても、どんなに心が折れそうになっても──彼は、剣を手放さなかった。

そして──三週間後。

彼らはついに、メソポタミアの外れ、古代の遺跡群が並ぶ砂の大地にたどり着いた。

焚き火を囲み、皆がようやく身体を休めていたその時。

ナニが口を開いた。

「……ところで、チュウニさん。

メソポタミアに着いたら、具体的にどうするつもりですか?」

唐突な質問に、一同がチュウニの方を振り向く。

チュウニはしばらく黙っていたが、ついに重い口を開いた。

「……すまない。実は、3週間前に言ったあの“名言”は、俺の言葉じゃない。

士官学校時代の先輩が言ってた言葉の……パクリだ」

場が静まり返る。

「俺がメソポタミアに来ようとしたのは、その先輩を頼るためだ。

その人は、同期の中で唯一“火星の支配はおかしい”と公言してた。

それで──勢いで、反火星組織を作ったんだ。まあ、ノリだったらしいけどな。

その組織が今、バグダードにある。だから、俺はそこに合流するつもりだ」

ソラは、自分の人生の選択を間違えたかもしれないと感じていた。

ただ父を探したいだけのはずだったのに、自分が反乱者になる必要なんてなかったんじゃないか。

あんな人造人間や軍と、本当に戦うつもりなのか。

──心が、じわじわと凍えていく。

ソラはチュウニを見る。

(この口だけ野郎が‼︎)

「でも……その先輩とは、すでに魔法伝達カラスで連絡を取ってる。明日には会えるかもしれない」

その時だった。

「随分と呑気そうじゃないか、裏切り者よ」

突然の声に、皆が一斉に顔を上げた。

そこに立っていたのは──忘れかけていた人物。

ミノグチだった。

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タグ: 紅剣物語 5話 旅行録

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その他2025/10/02 20:29:54 [通報] [非表示] フォローする
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ふー小説疲れたな


これブレインロッド


ボンバルディエ―レルチェルトラ


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