「朱藍の婚約者」第四話「楽観的主義者だから」
「朱藍の婚約者」第四話 楽観的主義者だから
同居開始の翌日の朝。
「...」
「…」
リビングには昨日以上に気まずい空気が漂っていた。
朱音はソファの端っこ。青斗も反対側のソファの端っこ。距離として約2メートル。
(...気まずい。)
青斗はあまりこういう空気が苦手ではないが、二人っきりのこの状態だとあまりにも気まずい。だが、こうなるのも無理はないとも思ってしまう。
昨夜の大喧嘩?みたいなものでお互い関わらないと決めたといっても、こっちには朱音の護衛という秘密妖務がある。簡単には側を離れられない。だが、本音を言えばあまり関わりたくはない。朱音と同意見である。
*
一方、朱音も朱音で困っていた。そう、朱音の生活力がポンコツゆえ家事は皆無なのである。そして、彼女のプライドの高さから失敗を恐れて、行動を起こせなくなっているのである。
(......お腹、減った。)
もちろん、朝から何も食べていないからお腹は空いている。だが、青斗に頼むのは癪である。でも自分では作れない、そんな葛藤を抱えながらソファに座っていた。
*
―――ピンポーン。
沈黙を壊すかのように、家のチャイムが鳴った。
「...?」
二人同時に玄関を見る。
「...出なさいよ。」
「なんで俺なんだ。」
「男じゃん。」
「いや、意味がわからん。」
と言いつつも、彼は渋々立ち上がり、玄関に向かった。
ドアを開けて、目の前にいたのは――
「よっ!!新郎さん!!元気?」
「イズ!?」
そう、レイズス・コマンダルだった。彼は満面の笑みで玄関に立っていた。
「いや〜俺の直感が楽しそうって叫びまくってたから、来ちゃった!!」
「来ちゃった〜じゃない。来るな。そしてなんでここが分かる。」
青斗はレイズスの話を聞くやいなや、すぐさま面倒くさそうな表情になった。
「いや〜まぁ、いつものアレですよアレ。」
「また、幽体化か?」
「正っ解っ!!」
「一応、犯罪に入るからなそれ。」
「まーまーそんなつれないこと言わないでさー。青斗も来てほしいって言ってたじゃん?」
「誰もそんな事は言ってない。なんでいつもそんな楽観的なんだ。」
「まー俺だから?大丈夫っしょ!!みたいな感じ?」
「まじでなんなんだよそれ...。」
すると、話が長かったのだろう。奥から朱音が来た。
「...誰?」
「お!!ツンデレお嬢発見!!やっほー朱音ちゃーん!!」
「前半の方も聞かれてるぞイズ。」
「はぁ!?誰が、ツンデレよ!!別にツンデレじゃないし!!」
思った通り、朱音が食いついた。
「まーまー、落ち着いてくださいよ。ツンデレお嬢さん。俺は危害を加えるつもりなんてサラサラないですぜ?」
「ほらぁ!!また言った!!ねぇ、二高!!あんたの友人なんでしょ!?どうにかしなさいよ!!」
「...あきらめろ、八王寺。こうなったらもう止められない。」
「はぁぁ!?」
朱音の悲痛な叫びが家中に響いた。
*
昼過ぎ頃。なぜか、レイズスがソファでくつろいでいるのを横目に朱音はテレビを見ていた。キッチンでは青斗がなにか作ってる。
「....なに作ってんの?」
朱音がソファから身を乗り出して聞く。その声には警戒と好奇心が半々という感じで混ざっている。
「…昼飯だ。」
「ふーん。イズの分は?」
「ない。」
「え?即答?俺の人権は?」
「急に人の家に不法侵入してくるやつにはない。」
「青斗冷た〜い。キンッキンに冷えてやがる!!」
「通常運転だ。」
そう言っている間に、昼食ができていた。
「...出来たぞ。」
「おぉ!!さっすが青斗!!めちゃくちゃうまそー!!なにこれ!!」
「...見りゃわかるだろ。カツ丼だよ。カツ丼。」
「ふーん。そういや、結局ああ言いながら作ってくれんじゃん。青斗クンやっさしー!!」
「...うるさい。」
レイズスは食べ始めると、絶賛しながらすぐさま完食した。だが、朱音はレイズスが食べてる間も全くカツ丼を口にしなかった。いや、食べようとしていなかった。
「...どうした八王寺。食べないのか?」
「...いや。食べない。」
「え〜?ツンデレお嬢様、青斗の手作り料理食べる機会なんてめったにないんだぜ〜?こんなに美味しいのに本当に食べないの〜?」
「その呼び方やめて。ていうか、あたし本当にお腹空いていないから。」
――とその直後、朱音のお腹から地震が起こったような音がした。
「...言葉の割に、腹の方は正直だな。」
「なっ!!うるさい!!今のは、ほらアレだから!!あの〜アレよアレ!!アレと言ったらアレでしょ!!」
「説明できてないぞ、八王寺。」
「うるさいわよっ!!」
朱音の顔は熱が出てるのかというくらい赤い。おそらく、腹の音を聞かれた挙げ句、指摘されたからだろう。
「まぁまぁ、そんなカッカしないで。味は青斗の親友であるこのイズくんが保証するから。食べてみなって、ツンデレお嬢様。」
「その呼び方やめて!!本当にこの家から叩き出すわよ!!」
「まぁ、でも俺もイズと同意見だ。味は保証するし、飯もろくに食わないと人間死ぬからな。一回、飯食って落ち着け。」
「誰が落ち着いてないのよ!!あたしはいつだって冷静よ!!」
というワチャワチャが続いたものの、朱音は上手くイズに言いくるめられてカツ丼を食べることになった。朱音が恐る恐る口に入れてみると――
「....美味しい。」
お腹が空いていたこともあったのだろう。朱音の口からはその言葉が漏れていた。それを聞いたイズは満足そうに頷いた。
「やはり、青斗の手料理は絶品だぜ...。なんたってあのツンデレお嬢様の胃袋を掴んじまったもんな。」
「うるさいわよイズ。...ねぇ、二高。」
「...なんだ。」
「...昨日、あんなして言ったけどさ、やっぱご飯とかは...その...あの...作ってもいいけど?」
いつもの朱音にしては素直。青斗は一瞬驚いたが、すぐさまいつもの表情に戻った。
「あぁ、別にいいぞ。お前に死んでもらったら困る。」
「...そ。」
誰がどう見てもいい感じの雰囲気。レイズスはそれを見て目をキラキラさせた。
「お?なんだかいい感じの雰囲気ですねー、お二人さん。いい感じなのの記念に今日から俺をここに止めてくだせぇよ!!」
「「死んでも、嫌だ。」」
「ハモってまでも嫌なの!?普通に傷つくわー…。」
「そもそも、あんた帰る家くらいあるでしょ!そっちに帰りなさいよ!!」
「八王寺の言う通りだな。自分の家に帰れ。」
「えー?ふたりともいいでしょー?お願い!!この通り!!」
「駄目なものは駄目だ、イズ。」
「えー、マジかー。」
「第一、なんでお前はそんなに態度が軽いんだ。」
「え?だって俺――」
第4話「楽観的主義者だから」:終
次回予告。同居から2週間後、同居は普通に上手くいっていた。だがそんなある日、妖務で家を開けた青斗。家には朱音一人。その時にある訪問者が――!?次回第五話「一人じゃ広い。」お楽しみに!!
絵が色塗り途中なのは気にしないでください!!
*プラスワンでもっと知ろう!!:レイズスは普段、幽体化を使ってホテルを転々として過ごしてるそうです。
前話はこちらから→「朱藍の婚約者」第三話「婚約と同居はベツモノ」https://tohyotalk.com/question/815773
一話はこちらから→「朱藍の婚約者」第一話「邂逅」https://tohyotalk.com/question/813334
次回は2月19日に更新予定です!!一週間遅れます。すいません...。

