新訳、東方異邦伝、楽園の素敵な巫女様
人が夜も活動するようになり、昼と夜の境界は薄くなった。
人々は忘れたのだ、夜の闇に対する畏怖を。
妖怪や神々は、現代では忘れられてしまった。
古くよりの伝承に登場した彼らは、今はどこにいるのだろう?
「賽銭がない…」
賽銭がない、お米もない、味噌があってもしいたけがなければどうしようもない。
少女は寝転んで脱力した、誰も来ない。
博麗神社は階段がキツく、彼女ですら下へ降りる時は飛んでいるくらいだから、人里の人たちは余計に来ない。
そもそも何の神様を祀っているのかも、博麗霊夢は知らなかった。
「異変、起きないかなぁ‥」
博麗の巫女にあるまじきことを言っているとわかっているが、悲しいかな、異変がなければ誰も霊夢に米をくれないのだ。
異変があれば、彼女は博麗の巫女として、人々に感謝される。
「紅魔館はこの前勝手に爆発してたし‥」
不法侵入した友人とあそこの魔法使いがやり合ったのだ。
「お茶の葉だけは、死守しないと‥」
博麗の巫女、幻想郷の治安維持と、博麗大結界の管理を担っている。
「前の異変の時のお米がもうなくなってる…」
宴会をもう少し抑えるべきかもしれない。
「博麗の巫女様…」
博麗の巫女という存在は誰もが知っている、八雲紫のこともだ。
幻想郷の創設者にして、博麗大結界を作った妖怪でもあるのだと。
しかし少年には、寺子屋で習う知識でしかない。
紫様は滅多に姿を表さず、この前春なのに雪が降った時も、巫女様が異変を収めたらしいが見てはいない。
「けーね先生チルノちゃんが寝たー」
自分の横の自称最強を揺すり起こすことが、彼の日常。
「お正月は守矢神社に行くんだろうな、あっちの巫女のお姉ちゃん優しいし」
「異変はいつ起きるともわからないものだ、危ないと思ったら家に帰って、巫女がいたら邪魔をしないように‥」
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