【小説】gradation[前編]

11 2023/01/15 21:30

長くなったので、分けました。後編も読んでいただけると嬉しいです。

如月氷さんの小説大会エントリー作品です。

連載中のも読んでほしいです!

1話→https://tohyotalk.com/question/448932

こちらで感想を呟いてください!#春と孤独を救う招き猫

世界にはたくさんの色がある。

見える環境があれば、750万色、少なくとも日常の中で180万色の色を見ていると言われる。

私の人生はどんな色だっただろうか。

ーpale blueー

中学時代、私には親友がいた。毎日のように笑い合っていた。

あの時はまだ、気づいていなかった。あんなことが起こるとは思ってもいなかったんだ。

「陽菜、明日私の家でゲームしようよ」

「いいね!」

楽しかった。明日は何をしよう。新しくできた雑貨屋行きたいな。

「ねえ、明日はどうする?」

「ごめん、明日は無理」

「そうなんだ!」

それからも一緒に遊んでいたけど、毎日ではなくなった。元気が無いのかな。

少し痩せた?そんなことないか。陽菜はいつも通りだし。

「楽しかったね~」

「そうだね」

「明日はどうする?」

「ごめん、明日は無理、明後日も、ごめんね」

「そうなんだ、いいよいいよ、気にしないで」

「ありがとう」

最近忙しいのかな、全然遊べなくなったし。まあ、中学生だしな。

陽菜は私なんかと違ってちゃんと勉強しているんだろう。

「遊ぶの久しぶりだね。」

「うん。」

「なんか顔色悪くない?大丈夫?」

「えっ、全然そんなことないよ。」

「そう・・・」

陽菜どうしたんだろう。全然学校に来ないな。

私まだスマホ買ってもらえないから連絡できないんだよな。

まあ、大丈夫だろう。

「ねえ、陽菜のことなんか知ってる?」

「え、陽菜?知らない」

陽菜が学校に来なくなってからもうすぐ1ヶ月が経つ。

どうしたんだろう。陽菜になにかあった?嫌な予感がする。

陽菜の家に向かって走った。インターホンをならす。

「あのー陽菜いませんかー?」

ガチャ。陽菜か!

「ごめんねー今いないのよ」

「えっそうなんですか?じゃあどこにいるんですか?」

「たぶんどこかに遊びに行ってると思うけどね」

「そうですか、ありがとうございました」

公園かな?いない。図書館?いない。

学校にはいるわけない。どこだ?

何をこんなに心配しているんだろう。ここはまあまあ都会なんだから

遊べるところいっぱいあるし。どこかで遊んでるんだ。

帰ろう、お母さんに5時に帰ると言っちゃったし。

その2日後だった。陽菜が夜に学校の屋上から飛び降りて亡くなった。

突然すぎる。えっ・・・なんで?分からない、どうして?

陽菜のお母さんから伝えられ、私は泣き崩れた。立ってはいられなかった。

なんで私に相談してくれなかったの?陽菜、どうして?教えてよ。

私のせいだ。私が気づかなかったからだ、いじめられていることに。

きっとひどいことをされていたのだろう。

でも陽菜は私には言わなかった。私が心配しないように。

家に帰るとポストに手紙があった。陽菜からだ。

私のことは気にせずに幸せな人生を送ってほしいと書いてあった。

自分が死ぬ前まで私のことを気にしていたのだ。

それなのに、それなのに。私はちっとも陽菜のことを気にしていなかった。

ごめんね、陽菜。ごめんね。

あの日からもう10年経つ。あの時陽菜が亡くなっていなかったら、23歳。

きっとあの陽菜のことだ。職場でもみんなから好かれ、いい人と結婚して。

幸せな人生を送っていただろう。自分を恨まない日はない。

それでも、陽菜が私の幸せを望んでいるのなら、それを叶えなければならない。

今まで陽菜にできなかったことを、少しでも、報いることができるなら。

ーbrilliant yellowー

高校は部活のバレーボールに夢中だった。青春というやつだろうか。

とにかく楽しかった。部員のみんなも優しかった。

高1夏

インターハイ。3年生はこの大会で引退する。

毎年県ベスト8に進出する強豪校なので部員も多く、ベンチはみんな

2、3年生だった。私は応援するだけだったけど、会場の熱が伝わってきた。

神奈川県大会準々決勝。相手は全国進出経験が多い超強豪、

私立横浜御橋高等学校。この試合に勝てばベスト4に入れる。

第1セットが始まった。今は20対16、勝てる!

先輩たちの鋭い攻防から目が離せない。

2点とられた。あと2点で追いつかれる。大丈夫。いける

「ナイッサー!」

先輩たちに疲れが見えてきた。でも相手には疲れが見えない。

それより、勢いが増している。点数は?

20対23、あと一点で相手のセットポイント。

それから先輩のシュートが決まることはなく、20対25で第1セットを終えた。

「これからこれから」

「切り替えていこー」

先輩たちは声を掛け合っている。まだ第1セットながら先輩たちの疲れは

マックスにきている。笛の音とともに第2セットが始まった。

早速相手にサーブで先制点をとられた。全国に出場するところはやはり違う。

「切り替え切り替え、1点とろう!」

キャプテンの常盤先輩がチームの士気を上げる。

先輩はみんなから慕われていて、キャプテンを決めるときはみんなの意見で

すぐに決まったらしい。チームの前では暗い顔を見せない。

やっと1点とったときには相手はもう6点、その後もこっちに

点を取らせてはくれなかった。そして、16対25、第2セットで試合を終えた。

「ありがとうございました!」

そう言いながら先輩たちは泣いていた。

「帰るよ」

と常盤先輩は部員に声をかけていた。

学校の体育館に戻り、引退する3年生14人が順番に一言ずつ話していった。

最後まで試合に出られなかった先輩もいる。

最後はキャプテンの言葉だった。

「とりあえずめちゃくちゃ悔しい全力を出せたから悔いはない。みんなにも

悔いがない試合をしてほしい。1、2年生は一回一回の試合を大切にしてね。

今までありがとう。これからも頑張ってね」

そう言い、部活を去っていった。こんな先輩になりたい。

そう思って毎日の練習に励んだ。そして2年生になりベンチ入りを果たした。

「頑張れー!」

「もう1本!」

そうして2年生、迎えた春の高校バレー。

「キャプテンを決めるぞー」

私にキャプテンは無理だ。でも常盤先輩のようになりたい。

「どうやって決める?」

「あの、私やりたいです!」

「どうだ、キャプテンやりたい人が他にいないなら朝倉でいいか?」

みんなが拍手をしてくれた。

3年生、引退試合。インターハイ神奈川県予選準決勝。

相手はあの時の相手、横浜御橋。私はスタメンで出場している。

仲間の掛け声とともに最初のサーブを打つ。

さすがに点は取れないか。接戦を繰り返し、第1セット23対19で勝っている。

でも気は抜けない。横御が怖いのはここからだ。

やっぱり今までと違う。たぶん前半は体力を残し、後半から追い上げる作戦

なんだろう。でも。

「このセットとろう!」

2年生エース沙智がブロックで点を取り、次は私が点を取った。

24対21、セットポイント。

「いけーー!」

仲間の応援が聞こえる。

「朝倉さん!」

セッター眞由美からボールが来る。私が決める。キャプテンとして。

ピイイイイ、やった、横御から1セットとった!

「気を抜かずに!もう1セットとろう!」

第2セットは横御に取られてしまった。第3セットは接戦になるも

23対25で敗北。悔しい、でも楽しかった。悔いはない。

学校に戻るとき、自然と涙が溢れてきた。

あの時はずっと必死だった。あんな先輩になりたいと思い、とにかく

がむしゃらに。毎日練習は辛かったけど楽しかった。

高校時代だけで私は幸せな人生だったといえるだろう。いや、

そんなこともないか。陽菜は見てくれていただろうか。

後編はこちら!→https://tohyotalk.com/question/458904

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その他2023/01/15 21:30:51 [通報] [非表示] フォローする
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是非読んでいただけるとうれしいです!如月氷さんの小説大会に参加しています


???「白って200色あんねん」


>>2
それ言ったら全部いっぱいありませんか?


>>3
あーすいませんネタコメです


>>4
すいません!!!アヒャ(゜∀゜)真面目にすいませーん


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