【小説】ヤマノカミ
〜作者から〜
「ジブリみたいなのを書きたい!」と一念発起して書いた駄作です。
あんまり気に入っていません。
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「陸前与湖山神社。陸前与湖山神社です」
車内放送が、そう一本調子に駅名を読み上げると、バスは音を立てて停車した。
発車した直後はほぼ満員だった車内だが、今はもう2、3人しか乗っていない。
これほどまで人のいないバスは、徹はこれまで見たこともなかった。
バスに乗るときは大抵朝か夜のため、混んでいる車内しか見たことがない。通勤や帰宅の時間帯と重なってしまうためだ。
すると、バスがグラッと揺れた。どうやら発車したらしい。
さっきの駅は「陸前与湖山神社」。徹が降りるのはもう4駅ほど先だ。
ちょうどいい。ちょうど眠くなった頃だったし、降りる駅まで寝よう。
徹は大きな欠伸を一つすると、窓にもたれて眠りに落ちた。
先程まで、町に立ち並ぶビル群を形作っていた影は、生い茂る木々の影に変わり、バスの車内に映し出された。
整地された地面を走っていたバスは、次第にデコボコした地面に足を踏み入れ、車体を大きく揺らした。
*
突然、目を覆いたくなるような眩しさに襲われて、徹は目を覚ました。
周りを見渡してみる。徹がいるのはバスの車内。寝る前と変わらない。
変わったことといえば、外の風景だろう。
さっきまで、バスは確かに町を走っていた。だが今は——
「や、山?」
バスが停車していたのは、先ほどとは打って変わって山だった。
「ここって、終点じゃ…」
その時、座席の陰から、人の良さそうな運転手のおじさんの顔が覗いた。
「お客さん…って、起きてたのか。もう終点だ、すぐ降りな」
「あの、僕、寝過ごしちゃったんですけど、回送で乗せてってもらえませんか…?」
徹は、おじさんの口髭が目立つ顔をじっと見て言った。
「何をアホ言ってんだ。さぁ降りろ降りろ」
「で、ですよね…、ははは…」
徹は、おじさんに追い出されるようにして降車した。
ドアを閉める前、おじさんは徹を呼び止めて言った。
「悪いな、坊主。俺からは、次のバスまで待てとしか言いようがない」
おじさんは、凛々しい形をした眉毛を悲しげに寄せて見せると、ドアを閉めてエンジンをかけた。
走り去る前、おじさんは徹の方を見て口を動かした。
当然声は聞こえなかったが、その口は確かに「達者でな、坊主」と言っていた。
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