【小説】妖狐様の化け方 第壱話『妖狐の姉妹』
朝、太陽は昇り、見廻にいた妖狐達は自分らの住処へと足を運ぶ。疲れている者から、姿勢の良い者までたくさんいる。
どうやら昨夜は平和だったらしい。
妖狐の癖に今起きているのは私だけかぁ、なんて思いながらも布団から起きる。
意外と寒いなぁ、春なのに。
髪を結い、太陽を浴びる為に外に出てみる事にした。
家から出ると、明るく照っている太陽が燦々と昇っている。
外はあったかい。
背伸びをし、家へ戻ろうとしたその時、
「姉さん。」
独吏を引き止める言葉が発せられた。
後ろには、独吏の妹、卯月兎利沙がいた。
「あ、兎利沙。見廻りどうだった?」
私は兎利沙の肩に手を置こうとした瞬間、
パチン。
独吏は理解に遅れた。自分の差し伸べた手が、我が妹に叩かれ、弾き返された事を。
「...どうしたの?」
独吏は恐る恐る訊いてみる。
「どうしたのじゃない。この無能姉が。」
独吏は声も出なかった。
「こんな歳にもなるのに化けも使えない、まだ子供っぽい髪型と服装。妹にも負けるその見た目と中身。あんたなんて私の姉じゃない。」
兎利沙はスタスタと通り過ぎて行った。一度、振り向き、
「私、特殊妖狐隊に所属する事になったから、もう家には帰らない。寮あるから。」
そう言って兎利沙は姿を消した。
独吏はただ立ち尽くすしかなかった。何もする事がなかった。
自分の妹に手を叩かれ、罵倒され、挙句に家を出て行かれる。
そんな史上最悪な事があってたまるだろうか。
独吏の今の年齢は十六。化けを使いこなすのは普通十。独吏は六年もの間、化けを使えずに、妖狐と名乗ってきた。
妹が恥ずかしくなるのも当たり前かもしれない。
何かに溺れていると、ふと声がした。
「あーあ、遂に出ていっちゃったか。」
そこには、知らない少女が立っていた。
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