【小説】真夏の追憶《四話》
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遠くの方から低く重い轟音が響いた。それと同時に地面も少し揺れた気がした。突然の爆音と地震で俺の心臓は跳ね上がった。
「はぁ、またかい…。」
ひとりの女がため息をついて言った。
「あそこを見てみな。」
女は遠くの空を指差した。指の先には、小さな龍の大群と数匹の大きな龍が対立し争っているのが見えた。
「結界が緩くなってるのも、きっとこれのせいよね。」
“結界”とは何なのか、“あれ”とは一体どれなのか。俺が訊こうとするよりも先に彼女らは答えた。
「あれはねえ、乙姫様の政治に納得がいかないお百姓さんが反乱というか…一揆を起こしてるんだよ。小さい方はお百姓さんたち、大きい方はこの城の兵士さんら。」
納得がいかないのは共感できる。あんな恐怖政治に納得する人の方が少ないだろう。
「最近、起こる頻度が高くなってるわよね。」
「規模も大きくなっきてる気もするし。」
「城まで乗り込んでくる日も、遠くないかもな。」
俺は咄嗟に訊いた。
「え、そうなったら、俺って…」
「そりゃあもちろん、一揆に巻き込まれるだろうねえ。」
「そのときはそのときよ、もし殺されても仕方ないわ。もちろん頑張って逃げはするけど。」
背筋が凍った。そんなことあってたまるか、殺されたくなんかない。もしここが夢でないとしたら本当に死んでしまうし、夢だったとしても夢の中で殺されたときのショックで現実でも死んでしまうという噂を聞いたことがある。
どちらにしろ死ぬ。それは絶対に嫌だ。
「そんなん絶対に嫌や。」
無意識に声に出していた。
「嫌って言ったって、あんたに何ができるって言うのよ。止められるの?」
「いや、それは…」
「おい、何をだらけている。仕事はどうした。」
廊下のあたりから、男性の低い声が飛んできた。振り返ると、片方にしか角のない男だったが、生えている方は左側だっただった。
慌てて仕事に戻る。洗濯物の山はまだまだ残っていた。
「待て。」
男の目線が俺に向き、こちらへずんずんと歩んできた。
「貴様は牢屋に入れておいた人間とソックリだな。」
男は不敵な笑みを浮かべた。
確実にバレた。どうにかしてこの場から逃げねば。視線を下に向けると、丁度蹴れそうな位置に男の股間があった。可哀想だが思い切り蹴り上げた。男が膝をついて痛がっている隙に塀を目掛けて全速力で走って逃げた。
塀の外側から垂れ下がっているロープのようなものを発見したので、一か八かそれに掴まってみると、誰かが外側からズルズルと引っ張って塀の外側まで出してくれた。
「伊与!」
引っ張ってくれたのはやはり伊与だった。先に外まで脱出していたらしい。
「は、はやく逃げましょう!着いて来てください。」
「お、おう!」
俺が伊与に着いて行く形で、後ろを警戒しながら逃げた。これはこれでスリルがあってなかなか楽しいものである。
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こんにちは、どこもです。まだ三話だったことに驚きました(笑)。ペースを上げていこうかと思います。
トピ画は洗濯シーンの庭イメージのフリー画像です。
良いな、と思った画像は大体有料なんですよね〜〜(笑)。
読んでいただきありがとうございます!
最近見れてなくてごめんなさい🙏現実が忙しくて…💦
それはそうと、今日も面白かったです!!伊与は何者なのかな…?想像はつくけど匂わせ感が良い…!これからも期待!