作戦開始【短編小説】
小さな池に、桜の花びらが浮かび、ゆらゆらと揺れる。
その花びらは、しおれ、汚れ、破けている。
その姿は、今の私にとても似ている。
酷く傷ついた、私に。
小さいころから、可愛らしい、テレビの中のアイドルに憧れていた。
見よう見まねで踊ってみたり、精一杯可愛く歌ったり。
周りの大人は、たくさんほめてくれた。それが、うれしかった。
小学生になってからも、精一杯努力した。
画面の向こうのあの人のような、アイドルになりたかったから。
クラスメイトには不思議がられたけど、気にしなかった。これが、私だから。
でも、次第に、先生たちや両親、大好きな友達にまで気味が悪いといわれるようになった。
「そんなことをしても無駄だ。」「そんなのは普通じゃない。」「気持ち悪い。」
そんな言葉を突き付けられ、苦しかった。
そしてついに、ポキッと、心が折れてしまった。
私はおかしいんだ、と思ってしまった。
中学生になると、完全にあきらめて、みんなが言う「普通」に暮らし始めた。
「俺」は肩に掛かる長さだった髪も切って、着たくもない服を着て、クラスの男子の中で流行っている少年漫画を、つまらないと思いながら読んだ。
それが、「普通」だといわれたから。
それでも、「俺」の中には、アイドルへの憧れがあった。
すると、画面の向こうのあの人が、こう言った気がしたんだ。
「普通って何?」って。
結局、どうしたかって?
それはね___
「作戦開始。今日から私は、女の子!」
いいねを贈ろう
いいね
3
このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)
トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する