作戦開始【短編小説】

3 2023/10/21 17:42

小さな池に、桜の花びらが浮かび、ゆらゆらと揺れる。

その花びらは、しおれ、汚れ、破けている。

その姿は、今の私にとても似ている。

酷く傷ついた、私に。

小さいころから、可愛らしい、テレビの中のアイドルに憧れていた。

見よう見まねで踊ってみたり、精一杯可愛く歌ったり。

周りの大人は、たくさんほめてくれた。それが、うれしかった。

小学生になってからも、精一杯努力した。

画面の向こうのあの人のような、アイドルになりたかったから。

クラスメイトには不思議がられたけど、気にしなかった。これが、私だから。

でも、次第に、先生たちや両親、大好きな友達にまで気味が悪いといわれるようになった。

「そんなことをしても無駄だ。」「そんなのは普通じゃない。」「気持ち悪い。」

そんな言葉を突き付けられ、苦しかった。

そしてついに、ポキッと、心が折れてしまった。

私はおかしいんだ、と思ってしまった。

中学生になると、完全にあきらめて、みんなが言う「普通」に暮らし始めた。

「俺」は肩に掛かる長さだった髪も切って、着たくもない服を着て、クラスの男子の中で流行っている少年漫画を、つまらないと思いながら読んだ。

それが、「普通」だといわれたから。

それでも、「俺」の中には、アイドルへの憧れがあった。

すると、画面の向こうのあの人が、こう言った気がしたんだ。

「普通って何?」って。

結局、どうしたかって?

それはね___

「作戦開始。今日から私は、女の子!」

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タグ: 作戦開始 短編小説

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その人は男だった


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