【小説】星の花が降る頃に 後日談第一話
私は銀木犀の木の下をくぐって出た。
あれから二年経ったが、変わらない日常が続いている。
「りら」
まるで別人のように声が低くなった戸部くんに名前を呼ばれ、不意に心臓が高鳴ってしまう。
「なんか用?」
心なしか、かっこよかったサッカー部の先輩にも似てきている気がする。
「答えたくなかったら良いんだけどさ、今は夏実とどうなってるんだよ」
私は、思わず笑ってしまった。
きっと、二年越しに戸部くんがそんなこと聞いてくるなんて思っていなかったからだろう。
「どうもしてないよ」
何食わぬ顔で私は答えた。なんだか戸部くんは風の吹いた木のようにそわそわしている。
「実はさ、夏実から話を聞いたんだ。その、幼馴染だったから。」
別に好きとかそういうわけじゃなくて、と戸部くんは慌てている。別にそんなに否定しなくてもいいのに。
「だから、その、銀木犀の場所で待ってるってさ」
「…ありがとう」
鈍感なくせにいつも私のことを気にかけてくれる。
そして笑顔にさせてくれる。
戸部くんは不思議だ。
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