【小説】折り紙
数年前に書いた小説。発掘。拙い。自己満投稿。
今の私が小説書いたらもっと酷いと思う。
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クラスの馬鹿が車に轢かれて入院した。
詳細は自業自得で滑稽なので省略する。
問題はそのあとだ。学級委員がみんなで千羽鶴を折ろうと言いだしたのだ。
クラスは25人。つまり1人40羽折らねばならんのだ。
先生も乗り気で、折り紙をすぐさま用意した。こういう時だけ行動が早いのを見ると、泣きながら転校した子を思い出す。あのときは後手後手だったのにな。
昼休み、自習室で黙々と鶴を折る。
私は器用な方ではない。見栄えの良い鶴は折れないが、1000羽もいるのだ。問題ないだろう。
「君、折り紙へったくそだね」
気配がなかった。驚いたが平然を装うため、ゆっくりと顔を上げ、声の主を見た。
見たことのない男子生徒だ。
「あまり、器用な方ではないんです」
にこやかに、ゆっくり言った。
「折るのは全部鶴?僕にも折らせてよ、1枚貰うね」
私の回答も待たずに、彼はピンクの折り紙を1枚取り、黙々と折り始めた。
手伝いなのか冷やかしなのかわからないが、鶴が40羽用意できればそれでいいのだ。
私も作業を再開した。
自習室には私と彼以外誰もいない。昼休みに来る人はほぼいない。ここは放課後に使われることがほとんどだ。
ガタガタと窓の音が響く。
「できた!!!!」
人の近くで大声を出すような人にはなりたくないなと思いつつ、彼に目をやる。
彼の手には綺麗に折られた紙の花があった。
「できれば、鶴を折って欲しかったのですが。」
ゆっくりと言う。怒りは露わにするべきではない。相手にぶつけ、感情を発散するのは見苦しいことだ。自分の感情は自分で完結させなくては。
「まぁまぁ、見ててよ」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら紙の花を振る。
「じゃーん!」
彼は満面の笑みで私の前に紙の花だったものを突き出す。
本物の花になっていた。匂いも、する。
「…………」
「君、反応薄くない?」
「……手品、ですか?」
「違うよ、紙の花を本物に変えたんだ。戻したってのが正しいかな?」
訳のわからないことを言いだした。
先生に新しい折り紙を貰わなくては、などと冷静に思考する自分もいるが、目の前の状況に驚きを隠せず、言葉が詰まってしまった。
「君、折り紙をただの紙だと思っているだろう?もっと心を込めて折らないと」
なぜ目の前の彼は私に説教を垂れているのだろうか。手品ごときで踏ん反り返るとは傲慢な奴だ。
とはいえ、なんと返答すればよいかと思案していると、授業の予鈴が鳴った。
「そうですね、もう少し丁寧に折ることにします。予鈴が鳴ったのでこの辺で」
席を立ち、折り紙をまとめて部屋から出ようとしたその時、
「この花、いる?あげるよー」
元はと言えば、折り紙は私の物だ。どの口が言っているのだろうか。
「気持ちだけ貰いますね。ありがとうございます」
少し微笑んで軽くお辞儀をする。
お前もさっさと教室に戻れという言葉は飲み込んだ。
「では」
ドアを開けると、強い風が吹き込んできた。朝、テレビで言ってた春一番だろうかと考えながら、折った鶴達が飛んでいかないようにした。
あっ。と後ろから声が聞こえた。
足を止め、振り返ると、くしゃくしゃになった大きな白い紙と、ピンクの折り紙が落ちていた。
男子生徒の姿はそこになかった。
嫌な沈黙が流れる。
「……………………」
「…………やっぱりただの紙じゃないか。」
ぼそりと呟いた。
先生に新しい折り紙を貰おう。
私は自習室を後にした。
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多分主人公は女。
読んだ読んでないは置いといて、見てくれてありがとう!
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