【小説】2話「命の行方」

5 2026/08/23 11:31

2話「命の行方」

俺は目が覚めて、俺が倒れたあとの話を聞いた。

俺が倒れたのは地下だ。もちろん、誰も気づかない。

地下に様子を見に来たのは、師匠だったらしい。

銃の練習の様子を見回りに来たところ、俺が倒れていて驚いたと。

「今日はゆっくり休んでね」

「はい、すいません...」

「謝罪しなくていいよ。とりあえず明日も頑張ろうね。」

俺は無意識に謝ってしまった。

昔俺は、仲間はずれにされたことがある。

いわゆる「厨二病」というもので、自分に酔っていたのかもしれない。

でも、水をかけられたり、机に暴言が書かれていたりなどはなかったが。

班で喋る時間は、俺だけ机に向かって、下を向いて。

話そうとしても、あきらかに遮られる。

先生も真剣に話を聞いてくれない。

親に話しても、俺の声が小さいだけだと言った。

もちろん、友達もいない。唯一いた友達は不登校になってしまった。

俺には仲間がいないんだって、苦しくなって、辛かった。

親がそんなんだから、家も追い出されて、ホームレスになっていた。

そんな俺に手を差し伸べてくれた師匠には、とても感謝している。

なのに、俺の口から出るのは、“謝罪”。

心では思ってるよ、ありがとうって。

「はぁ、明日頑張るか。」

小さな声で呟いて、布団にもぐった。

小鳥の声に起こされて、温かい布団を離れる。

「はー、地下だけど、鳥の声聞こえるんだなー」

確かに、なんで地下なのに?

「おぉ、起きたか、おはよう」

「あぁ師匠おはようございます」

「はは、師匠?」

「あ!間違えました....」

心のなかで言っていたから、癖がついていたみたい...。

「別に気にしないよ。どう呼んでもらっても結構。」

「ありがとうございます...?」

師匠はなにか思いついたかのように話し始めた。

「あ、あと驚いた?地下なのに小鳥の鳴き声が聞こえるの」

「あぁ、びっくりしました。」

「なんで地下なのに聞こえるんですか..?」

「それはね...」

実は、この地下にスピーカーが隠されていて、そこから音声を流している。と、師匠は言った。

「そうだったんですね、!」

「ああ。おっと、朝食の時間だぞ、F-2に来い。」

F-2、とは最初にあらかじめ教えられた部屋番号だ。

「了解です」

最初に渡された地図を頼りに、なんとかついた。

そこにはざっと50人程の人が、誰とも話さず礼儀正しく座っていた。

意外と少ないんだな・・・。

「おー、やっと来た。もしかして迷子になってた?」

師匠は笑いを入れながら問いかけてきた。

「道が多くて、とにかく広かったので...」

俺は昔から、迷路は得意だったんだけどなー。

「実はそれ、思う壺なんだ。」

侵入者が来たときに迷わせるような作りになっている、と話した。

「それより、朝ごはん!食べるよ」

「そういえば...!」

このままだと朝食を食べずに、地下に戻るところだった。

「さぁ、座って座って。」

近くに空いてる席があったから座った。

「失礼します...」

小声でそう言った。

「では、手を合わせて...食事開始。」

周りは何も喋らず、ただ黙々と食べ始めた。

静かな部屋に、箸の音だけが響いた。

なんだか周囲に急かされているような気がして、急いで食べてしまった。

ちなみに食事は米に、味噌汁に、何かの肉。と日本っぽい献立だった。

この献立を見て驚いたのは、俺の思っていたスパイの印象が悪かったからかな。

スパイ、といえば戦時中かとツッコミをいれたくなるような量の食事しか、与えられていないと思っていた。

だが、そんなことはなく健康的な食事で安心した。

ところどころで、ごちそうさまをしているのを見て、米をかきこむ。

「...ごちそうさま」

ところで食べ終わった人たちは何処へ?

「おい新人、食べ終わったならこっちに来い」

「は、はい...?」

自分よりも年上でオーラがすごい人だ。

「俺はルミナス。女性の名前っぽいが一応男性で、コードネームだ。」

「は、はぁ。」

男性なのは見ればわかるけど...。

それより今は何処に向かってるの...?

「何処に行くんですか...?」

ルミナスは、一度だけ後ろを振り返った。

「...来ればわかる。」

急に声のトーンが低くなり、これから行く場所は高いテンションで、行って良い場所じゃないことがわかった。

やっぱり道が細かいな...もう10分は経ってるぞ...?

扉の前にパスワードをいれるところがあって、手慣れた手つきでボタンを押す先輩。

おそらく正解のパスワードを入れたところで、顔認証の画面になった。

どれだけ重要なものがこの部屋に眠っているのか考えていたが、俺の目に写ったものは驚くような光景だった。

3話へ続く

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