【小説】2話「命の行方」
2話「命の行方」
俺は目が覚めて、俺が倒れたあとの話を聞いた。
俺が倒れたのは地下だ。もちろん、誰も気づかない。
地下に様子を見に来たのは、師匠だったらしい。
銃の練習の様子を見回りに来たところ、俺が倒れていて驚いたと。
「今日はゆっくり休んでね」
「はい、すいません...」
「謝罪しなくていいよ。とりあえず明日も頑張ろうね。」
俺は無意識に謝ってしまった。
昔俺は、仲間はずれにされたことがある。
いわゆる「厨二病」というもので、自分に酔っていたのかもしれない。
でも、水をかけられたり、机に暴言が書かれていたりなどはなかったが。
班で喋る時間は、俺だけ机に向かって、下を向いて。
話そうとしても、あきらかに遮られる。
先生も真剣に話を聞いてくれない。
親に話しても、俺の声が小さいだけだと言った。
もちろん、友達もいない。唯一いた友達は不登校になってしまった。
俺には仲間がいないんだって、苦しくなって、辛かった。
親がそんなんだから、家も追い出されて、ホームレスになっていた。
そんな俺に手を差し伸べてくれた師匠には、とても感謝している。
なのに、俺の口から出るのは、“謝罪”。
心では思ってるよ、ありがとうって。
「はぁ、明日頑張るか。」
小さな声で呟いて、布団にもぐった。
小鳥の声に起こされて、温かい布団を離れる。
「はー、地下だけど、鳥の声聞こえるんだなー」
確かに、なんで地下なのに?
「おぉ、起きたか、おはよう」
「あぁ師匠おはようございます」
「はは、師匠?」
「あ!間違えました....」
心のなかで言っていたから、癖がついていたみたい...。
「別に気にしないよ。どう呼んでもらっても結構。」
「ありがとうございます...?」
師匠はなにか思いついたかのように話し始めた。
「あ、あと驚いた?地下なのに小鳥の鳴き声が聞こえるの」
「あぁ、びっくりしました。」
「なんで地下なのに聞こえるんですか..?」
「それはね...」
実は、この地下にスピーカーが隠されていて、そこから音声を流している。と、師匠は言った。
「そうだったんですね、!」
「ああ。おっと、朝食の時間だぞ、F-2に来い。」
F-2、とは最初にあらかじめ教えられた部屋番号だ。
「了解です」
最初に渡された地図を頼りに、なんとかついた。
そこにはざっと50人程の人が、誰とも話さず礼儀正しく座っていた。
意外と少ないんだな・・・。
「おー、やっと来た。もしかして迷子になってた?」
師匠は笑いを入れながら問いかけてきた。
「道が多くて、とにかく広かったので...」
俺は昔から、迷路は得意だったんだけどなー。
「実はそれ、思う壺なんだ。」
侵入者が来たときに迷わせるような作りになっている、と話した。
「それより、朝ごはん!食べるよ」
「そういえば...!」
このままだと朝食を食べずに、地下に戻るところだった。
「さぁ、座って座って。」
近くに空いてる席があったから座った。
「失礼します...」
小声でそう言った。
「では、手を合わせて...食事開始。」
周りは何も喋らず、ただ黙々と食べ始めた。
静かな部屋に、箸の音だけが響いた。
なんだか周囲に急かされているような気がして、急いで食べてしまった。
ちなみに食事は米に、味噌汁に、何かの肉。と日本っぽい献立だった。
この献立を見て驚いたのは、俺の思っていたスパイの印象が悪かったからかな。
スパイ、といえば戦時中かとツッコミをいれたくなるような量の食事しか、与えられていないと思っていた。
だが、そんなことはなく健康的な食事で安心した。
ところどころで、ごちそうさまをしているのを見て、米をかきこむ。
「...ごちそうさま」
ところで食べ終わった人たちは何処へ?
「おい新人、食べ終わったならこっちに来い」
「は、はい...?」
自分よりも年上でオーラがすごい人だ。
「俺はルミナス。女性の名前っぽいが一応男性で、コードネームだ。」
「は、はぁ。」
男性なのは見ればわかるけど...。
それより今は何処に向かってるの...?
「何処に行くんですか...?」
ルミナスは、一度だけ後ろを振り返った。
「...来ればわかる。」
急に声のトーンが低くなり、これから行く場所は高いテンションで、行って良い場所じゃないことがわかった。
やっぱり道が細かいな...もう10分は経ってるぞ...?
扉の前にパスワードをいれるところがあって、手慣れた手つきでボタンを押す先輩。
おそらく正解のパスワードを入れたところで、顔認証の画面になった。
どれだけ重要なものがこの部屋に眠っているのか考えていたが、俺の目に写ったものは驚くような光景だった。
3話へ続く
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