【小説】10話「小さな異変」
10話「小さな異変」
N-16を出て、自室に戻ることにした。
通路を歩いていると、向こう側からメメントが歩いてくるのが見えた。
「......。」
すれ違いざまに、メメントはN-16の扉を一瞬だけ見た。
そして何も言わぬまま、歩いていく。
「…変な人だな。」
そんなこんなで、一度来た道だったからすんなり戻ることが出来た。
あー、ノックしなきゃか。
コンコンコン、コン
「どーぞ。」
扉を開くと2人がいた。
「ただいまです。」
「おかえり。」
ラディの返事は、それだけだった。
いつもなら、何か話しかけてきそうなのに。
今日はベッドに座ったまま、ぼんやりしている。
ノクスは本を読んでいた。
けれど、先程からページが進んでいない。
本が相当分厚いわけでもないのに。
まぁ、みんなも疲れているのだろう。
「そういえばさ。」
ラディが、ふと思い出したかのように口を開いた。
「歯ブラシまで持っていかれちゃったね」
「…歯ブラシ?」
「うん。エクリプスの」
「…そこまで回収するのか」
ノクスが、本から目を離さずに言った。
「ねー。別に置いておいても良いのに」
ラディはそう言って、少しだけ笑った。
「…まぁ、仕方ないけどさ」
2人の会話が少し静かになったあと、俺は一つ質問をした。
「エクリプスさんって、荷物…全部持っていかれたんですか?」
「知らない。」
ノクスは短く答えた。
「多分、全部じゃない?」
ラディが続ける。
「たぶん…?」
どういうことだ…?
「そういえば、エクリプスさんのベッドって…」
エクリプスのベッドを見た。
そこには何もない。いや、何も残っていない。
エクリプスのベッドは昨日と同じ位置にあった。
けれど周りには何もない。
布団も、枕もある。なのに、私物だけない。
なら、なんでベッドはそのままなんだ?
「まぁ、荷物だけ持っていったのかな。」
そこで、ノクスが本を閉じた。」
「…エクリプスは、物を捨てない。」
「え?」
「必要かどうか、最後まで考えるやつだった。」
「…なのに、何も残ってないんだな。」
この組織は何なんだ…。
ノクスは少し黙った。
「…だから、変だ。」
「変…?」
俺は少し考えた
……”運が悪い”か。
11へ続く
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