【小説】10話「小さな異変」

1 2026/09/11 21:06

10話「小さな異変」

N-16を出て、自室に戻ることにした。

通路を歩いていると、向こう側からメメントが歩いてくるのが見えた。

「......。」

すれ違いざまに、メメントはN-16の扉を一瞬だけ見た。

そして何も言わぬまま、歩いていく。

「…変な人だな。」

そんなこんなで、一度来た道だったからすんなり戻ることが出来た。

あー、ノックしなきゃか。

コンコンコン、コン

「どーぞ。」

扉を開くと2人がいた。

「ただいまです。」

「おかえり。」

ラディの返事は、それだけだった。

いつもなら、何か話しかけてきそうなのに。

今日はベッドに座ったまま、ぼんやりしている。

ノクスは本を読んでいた。

けれど、先程からページが進んでいない。

本が相当分厚いわけでもないのに。

まぁ、みんなも疲れているのだろう。

「そういえばさ。」

ラディが、ふと思い出したかのように口を開いた。

「歯ブラシまで持っていかれちゃったね」

「…歯ブラシ?」

「うん。エクリプスの」

「…そこまで回収するのか」

ノクスが、本から目を離さずに言った。

「ねー。別に置いておいても良いのに」

ラディはそう言って、少しだけ笑った。

「…まぁ、仕方ないけどさ」

2人の会話が少し静かになったあと、俺は一つ質問をした。

「エクリプスさんって、荷物…全部持っていかれたんですか?」

「知らない。」

ノクスは短く答えた。

「多分、全部じゃない?」

ラディが続ける。

「たぶん…?」

どういうことだ…?

「そういえば、エクリプスさんのベッドって…」

エクリプスのベッドを見た。

そこには何もない。いや、何も残っていない。

エクリプスのベッドは昨日と同じ位置にあった。

けれど周りには何もない。

布団も、枕もある。なのに、私物だけない。

なら、なんでベッドはそのままなんだ?

「まぁ、荷物だけ持っていったのかな。」

そこで、ノクスが本を閉じた。」

「…エクリプスは、物を捨てない。」

「え?」

「必要かどうか、最後まで考えるやつだった。」

「…なのに、何も残ってないんだな。」

この組織は何なんだ…。

ノクスは少し黙った。

「…だから、変だ。」

「変…?」

俺は少し考えた

……”運が悪い”か。

11へ続く

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