「朱藍の婚約者」第一話「邂逅」
「朱藍の婚約者」第一話 邂逅
戦わなければいけない。
逃げてしまえばもうヤツには届かなくなる。
自分に平穏なんていらない。
——そう思っていた。
あいつに出会うまでは。
*
――推古天皇30年、西暦622年2月22日。当時の日本のスターだった厩戸皇子、別名「聖徳太子」が死んだ。それと同時期に〝奴ら〟が日本にやってきた。
それらは自らを「妖」と名乗った。その「妖」を名乗る者たちの中からある一人の好青年らしき人物が現れてこう宣言した。
「我々は、妖。――つまり、〝バケモノ〟。貴様らの敵だ。我々はこれから、この倭という国を〝破壊〟する。我々の子分とともにな。せいぜい無駄なあがきでもすることだな。あぁ、言い忘れていたが、我の名は「ぬらりひょん」。いずれ、この世を恐怖で支配するものだ。」
それだけを言い、彼ら「妖」の行進...いわゆる「百鬼夜行」が始まった。
「百鬼夜行」により天地は荒れ、海洋は乱れ、花も枯れ、日本は当時、生物が住めるような土地ではなかったのである。人々は苦しみ、生きる希望を見失っていた。
だが、「百鬼夜行」に対抗すべく、ある一人の男が立ち上がった。その男は自身の身体に「妖」が持つ特有の”妖気”を身に纏い、妖の力で妖を制した。そしてついに彼は元凶である「ぬらりひょん」の封印に成功した。ただし、妖は封印後もさまよい続け、いつしか彼一人の手では負えないほど多く増加してしまった。彼は、人々にも自分の身を守るため、日本を守るため、様々な”妖気”を人々に伝授した。人々はいつしか”妖気”を使えるものを「妖使い」と呼び始める。―――これが原因として今の妙な世界ができてしまった。
*
――現在。西暦20XX年。千葉県郊外。
夜の路地裏に”妖気”が溜まっていた。
(人の気配を避けるようなこの感じ、、、おそらく、偵察用のぬらりひょんの眷属。おおかた、初級程度だろう。)
彼、二高 青斗(にこう せいと)は、妖使い協会支給の戦闘服を着て、気配を殺し、本部へと連絡をした。
「....船橋市二丁目付近で、初級程度の妖を発見。妖務を遂行します。」
青斗は小さく息を吐き、一歩踏み出す。次の瞬間、彼は妖の後ろに回っていた。
「<純混:其の一>。」
彼がそう呟いた瞬間、彼の腕に妖気が纏い、妖の形に変形した。すぐさま彼は妖の核となる、”魂”をその腕で貫いた。妖の悲鳴は短く、霧のように消えた。――その直後、背後で妖気のような気配がした。
(!!新手の妖か!?)
振り返ると、街灯の下に赤髪の少女が立っていた。自分と同じ年代だろう。少女の目には怯えるよりも先に鋭い警戒が宿っている。
「見たか。...あんたは誰だ。」
「見たわよ。それに、名前なんていつか知るわよ。」
即答だった。
「悪いが、ここは危ない。まだ若干の妖気が残っている。」
「は?」
赤髪の少女は眉を吊り上げた。その目には嫌悪が混ざっている。
「なんであなたごときに指図されなきゃいけないの?」
(...面倒くせぇ。)
だが、”放置する選択肢”は妖使いである以上、出来ない。
「今みたいな妖に関わったら——」
「何?説教?」
言葉を遮られた。
「私は、平気。あんなの、怖くともなんとも――」
「強がるな。」
低く、はっきりと言った。
「お前、何も知らないだろ。」
その瞬間、彼女の表情が凍った。
「...知ったふうな口を効かないでちょうだい。」
噛みつくような声。
「私のこと、何も知らないくせに。」
「―だから言ってる。そうやって死んでいったやつを俺は何人も見てきた。だから、次遭遇したら、必ず逃げろ。」
一拍。
少女は唇を噛み、吐き捨てる。
「...余計なお世話!!」
踵を返し、少女は夜の闇に消えていった。
「何だあいつ...」
それだけで終わるはずだった。
*
数日後。千葉県立白金高校。
朝のホームルーム前のワチャワチャ感がより平穏さを際立てている。その教室の端っこで青斗は空を眺めていた。
「みんなー、席につけー。今日は転校生を紹介するぞー。」
”転校生”というパワーワードに2-A組の彼らの視線は一気に教室の扉に向かった。
「入っていいぞ。八王寺。」
担任の声とともに教室の扉が開く。
入ってきた少女を見て、青斗は目を細めた。
(あいつ...この前の。)
「八王寺朱音です。転校初日で不安ですが、どうかよろしくお願いします。」
一瞬で教室がざわつく。
「...え、八王寺ってあの白金財団の?」
「ヤバ...超お嬢様じゃん。」
朱音は教室を見渡し、柔らかく微笑んだ。
――それのせいか、教室の温度が一気に上がった。
昼休み。朱音の席には人だかりがたくさんできていた。所作も声も容姿も完璧。まさに、非の打ち所のない令嬢。
青斗は隣の席の朱音に気づかれないように、そっと席を立ち学食に行こうとした。だがその瞬間、朱音の雰囲気が一気に変わった。
露骨な嫌悪。視線は鋭く、来るな近づくなと言わんばかりに全身でそう主張している。クラスメイトが小声で囁く。
「八王寺さんって二高のこと嫌いなのかな...?」
「まぁ、二高って”妖使い”らしいしな。しょうがないんじゃないか?」
青斗は足を止め、内心で思う。
(...子犬かよ。)
威嚇。警戒。嫌悪。
必死すぎて、分かりやすい。
青斗は何も言わず、その場を離れた。
嫌われてるなら、それでいい。面倒事は嫌いなのだ。それに、あれは普通の反応。一般人らしい、まるで”異物”を見るような目。関わるつまりなど最初からなかった。
*
放課後。彼の父親から、突然呼び出しがあった。
『指定の場所まで来い。お前に話すべきことがある。』
青斗は指定の場所に向かった。そこには、和風のような広い屋敷があった。外にいる使用人であろう人に声を掛けるとすんなりと中に入れてくれた。
中の広場には、今、一番会いたくなかった奴がいた。――そう、八王寺朱音である。朱音は青斗に気づくと露骨に態度を変えた。
「...また、あんた?」
今にも喧嘩が始まりそうな勢い。青斗は面倒くさいことが一番嫌いなのだ。
青斗は無視して、屋敷の中へと入っていった。中で、使用人に案内され、白金財団の重役と彼の父親がいる部屋へと入った。
しばらくすると、朱音が入ってきた。
重役と青斗の父親は、口並み揃えて彼らに告げた。
「...八王寺朱音。そして二高青斗。お前たちは本日を持って婚約してもらう。」
一瞬、部屋の温度が急激に下がった気がした。
「...は?」
「冗談じゃない!!誰がこんな―――」
拒絶の声が重なる。だが、彼らは顔色一つ変えずに続けた。
「これは政略結婚だ。お前たちに拒否権はない。」
朱音は青斗を睨みつける。
「...最悪。」
青斗は何も返さなかった。
1時間後、青斗は父親に呼び出された。
「青斗、急ですまないが、この政略結婚にはある妖務も兼ねている。しかも、これは朱音嬢には気づかれてはいけないものだ。」
「...なんですか。」
彼の父親は一息ついて、告げた。
「歴代最強と言われた、お前は薄々感じているとは思うが...八王寺家は吸血鬼の一族だ。そして、彼女...朱音嬢は、その中でも特に珍しい、半吸血鬼だ。そして、その血はぬらりひょんにでさえ支配できない血筋だ。」
”ぬらりひょん”という単語に、青斗は少し眉間にシワを寄せた。
「...続けるぞ。そしてその血筋は表裏両方の世界から狙われている。もちろん、俺の妻であり、お前の母を殺した、ぬらりひょんもその血を狙っている。...簡潔に言おう。お前には、彼女を守ってもらう。それがお前の妖務だ。やるか?」
青斗は一瞬沈黙した。自分を母を殺した仇に繋がる道が今、自分の前に用意されている。これを逃す気は...彼にはなかった。
「やります。俺が命をかけて、彼女を...八王寺 朱音を護衛します。」
「あぁ、受注した。」
こうして、最強の妖使いと最凶に狙われる令嬢の奇妙な関係が成立した。
彼らにはまだ知る由もない。この婚約がいずれ、世界を変えることになることを。
――第一話・終
ってな感じです。読んでみて、どんなだったか、感想や評価、指摘などよろしくお願いします!!
言い忘れてましたが、主人公は二高 青斗(にこう せいと)、ヒロイン、八王寺 朱音(はちおうじ あかね)となっています!!ジャンルとしてはSFバトル系ラブコメを意識しました!!次話は1月28日に更新予定です!!
次話はこちらから→「朱藍の婚約者」第二話「飄々と」https://tohyotalk.com/question/814833
明日の朝6時から夜の10時までには更新します!!あと年齢は16歳の高1です!!
>>21
ファンになてくれるだけでもありがたいです!!ありがとうございます!!

