【小説】「好き」を何度でも 第十一章④

5 2022/03/07 10:25

前回のお話[第十一章③]

https://tohyotalk.com/question/294258

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 彼女のお願い…それはこういうものだった。

「うわぁ、水族館なんていつぶりだろ〜?」

僕は隣ではしゃぐ渚実を見つめた。あの日、渚実から告げられたお願い。

ー『私の思い出作り手伝ってくれない?…高校生の頃に勇都くんとやったこと、やりたい。』ー

僕の名前を呼んだことがある。そう思ったってことは、きっと何か色々楽しいことをやってたはずだ。そういうわけらしい。それを全部忘れてるなんて勿体ない。もう一度僕にそれをやらせるのは申し訳ないけど、協力してくれないか。というわけで、僕と渚実が一番最初にきた場所である水族館に来ていた。

 「記念に写真撮りたい〜。」

「嫌だ。」

「なんでー!?」

「高校生の時通りだとそうなるんだけど…」

高校生の時に僕とやったことをそのままやってみたい。そう言ったのは渚実のはずだった。

「でも、いいよ。写真撮りたいんだったら。」

「え、待って。高校生の時通りだとそうなるってなんで?」

「教えないー。」

「ズル〜ッ!」

本当に楽しかった。ただただ心の底から。また渚実と会えて、こんなことを出来ているなんて夢みたいだった。それでやっと…確信した。僕は自分が思っていたより渚実に会いたがっていたということ。渚実と過ごした日々が愛おしかったということ。こんなに…こんなに好きだったんだ。彼女との日々が。…彼女のことが。

「どうかした?」

「いや、何も。」

僕が一人笑っているとそう渚実が尋ねた。…この時決めた。この夏は渚実を花火大会に誘おう、と。今度は僕は誘うんだ。二人で浴衣を買いに行って。今度は僕も渚実の浴衣について意見を言って。これはきっと…僕へのチャンスだ。本当は僕から誘いたかったこと。本当は僕から言いたかったこと。渚実とやりたかったこと。やり残したことばかりの僕のこれまでの人生。僕の恋。やり直すチャンスだから…。今度こそちゃんと…言いたい。僕と一緒にいてくれてありがとう。そして…付き合って欲しい、と。あの日言えなかった言葉を…。

 そしてそれからも色々なことを渚実とした。遊園地に行ったり、ピクニックをしたり。通っていた高校の校門の前へも行った。そして…あることにたどり着いたのだった。

「次は何?」

「次はねぇ…」

「次は…?」

「僕が渚実の彼氏のフリをする。」

そう。ついに来てしまった。渚実の彼氏のフリをする時に。

「冗談?」

「いや大真面目だけど。」

「ちょっと待って。これで真面目とかバカ?」

「だったらバカだったのは渚実だなぁ。」

僕たちは最近、ちょっとズレた会話をしている。何も知らない…忘れてしまった渚実。その中で全てを覚えていて、やり直すチャンスとしてこの状況を捉えている僕。出来るだけ、また最初から…僕も何も知らないようなふうにしたいとは思う。だけど、渚実に『次は何?』と聞かれると、その時の記憶を思い出さずにはいられない。だから自然と、他から聞くとすごくズレてる会話になるのだ。

「バカだったのは私ってどういうこと?」

「だってこれを言い出したのは君だからね。」

「嘘。」

「嘘じゃない。」

そう僕が言うと、渚実はテーブルに突っ伏した。

「勇都くん嘘つくとすぐ顔に出るから本当なのは分かるけどぉ…。あぁぁぁぁぁ、バカ。マジでバカ。私はバカだった。そんなことなんで言ったんだろ…?」

「姉を黙らせるため?それしか僕だって知らないし僕に聞くなよ。」

僕が知るわけなかった。あの時、渚実がどういうことを考えて僕に頼んでいたのか。他にいくらでも相手はいるはずなのに。

「どう考えても頼む相手間違ってる。」

「失礼な。」

「冗談だよ。」

「で?どうすんの。やりたくないなら別にやる必要はない。」

あの時は、姉を黙らせる必要があったかもしれない。だけど今は、その必要は全くなくて。だったらそんなことをする必要はない。やりたくないならやらなければいい。

「いや、やる。」

「は?やっぱりバカだな。」

「私が言ったから。高校生に勇都くんとやったこと全部やりたいって。だから責任持ってやりますっ!」

「それで僕はどうなるわけ…?」

とにかく心配しかなかった。だけど…この心配はあの時の心配とは違った。今は心配なだけじゃなくて、『やってやろう』というような気持ちだった。どうせならやってみよう。…本当に僕は渚実のせいでどうかしてしまったらしい。そう思いながら僕は笑みを浮かべた。どうせやるんだったら楽しんでみようじゃないか。

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その他2022/03/07 10:25:13 [通報] [非表示] フォローする
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次回は再び渚実の姉の元へと…

もしよかったら是非『#好きを何度でも』でつぶやいてね❗️

#私立妃苺学園小説部部活動


2: 夕里 @garufun_yumi 2022/03/07 16:09:49 通報 非表示

何の前触れもなく行ったら、海香が困らん?ww

なんでまた?しかも同じ人…みたいな(


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