空想小説「青鬼」 第60話 琥珀色の少年

4 2025/11/10 10:29

グラブ「え?」

闇氷「あっちから抜ける以上、その名前を使う意味はもうないからな。」

グラブ「な、名前を…変えるんですか?」

闇氷「あぁ。お前が本気でこっち側に来るつもりなら、名前くらいは替えといた方がいい。元の名前じゃ一発で割れるだろ。」

グラブ「そ、そんな…でも僕、この名前…闇氷様につけていただいた名前なんですよ…!」

闇氷「…あぁー⋯そういやそうだったな。」

氷河「え、それ闇氷がつけたの!?」

闇氷「あぁ⋯昔、あそこで出会った時にな」

グラブ「僕、闇氷様から貰った名前、すごく気に入ってるんです。だから、できれば変えたくないです…!」

闇氷「…そうか⋯なら、俺が新しい名付けをするってのはどうだ?俺の名前なら何でもいいんだろ?」

グラブ「えっ…!いいんですか!?闇氷様が、また僕に名前を…!?」

闇氷「そうでもしねぇとお前梃子でも名前変えないだろ」

氷河「まぁ、そんな雰囲気はつくづく⋯」

グラブ「うぅ…でも、闇氷様が新しくつけてくれるなら…全然構いません!むしろ光栄です!」

闇氷「そう言うと思った…まぁ、どうせ変えるならお前らしいのにしてやるよ。」

そう言い、無言でじっとグラブを見つめる。

闇氷『⋯と言ったはいいものの⋯かなり面倒いな⋯こいつに合いそうな奴⋯もう色で決めるか⋯橙⋯茶⋯木⋯樹石⋯あ』

ふと、グラブの耳元で揺れる耳飾りに目が行った。

それは随分と昔、グラブが見つけてプレゼントしてくれた綺麗な石を貰った際、物持ちが良くない自分が持ってても仕方ないからと、慣れない手つきでその石を耳飾りにして、前の礼だとグラブにプレゼントした物だった。

今は欠けて傷だらけで相当色褪せているが、当時の色がまだ少し残っていた。

その色は。

闇氷「⋯コハク。」

グラブ「こはく…?」

闇氷「あぁ。お前の耳飾りの色だ。もう随分とボロボロだが、元は琥珀色だったはずだ。」

グラブ「あぁ⋯!覚えてます!闇氷様が僕にプレゼントしてくれた…!」

闇氷『元はお前が寄越した石なんだがな⋯』

  「まぁ、そんなんだが⋯文句はな」

グラブ「ないですよ!ないに決まってるじゃないですか!!」

闇氷「うるせぇよ⋯もう少し声を抑えろ⋯」

グラブ「す、すみませんっ…!でも…ほんとに嬉しくて…!」

氷河「あ、でもさ⋯折角なら苗字も考えた方がいいんじゃない?」

闇氷「⋯⋯⋯⋯⋯」←余計な仕事を増やすなという顔

氷河「⋯まぁ⋯言っちゃったのは仕方ないし考えたら?それか自分が考える?」

闇氷「却下」

氷河「頑なだなぁ⋯」

闇氷「⋯はぁ⋯まぁ、苗字がないってのも不自然か⋯」

不服そうな顔をしながらもグラブを見つめる。

闇氷『はぁ⋯めんどい仕事を増やしやがってクソ姉貴が⋯もう禄に考えたくねぇしコハクっぽい漢字適当に繋げるか⋯コハクと言や樹液が化石化した宝石だよな⋯よく綺麗な石とか拾ってきてたし石でも入れるか⋯後何だ?⋯そういやコハクの宝石って大地の力がなんとかかんとか⋯そういやこいつ一応地面系統の何か使えたな?じゃあ地面とか大地とか⋯共通してる字は地か⋯石と地⋯』

闇氷「⋯地石だ」

グラブ「ちせき⋯ですか?」

闇氷「お前確か地面系統の何か使えたろ。地面系の漢字で適当に考えただけだ。」

氷河「適当って言う割には由来結構ちゃんとしてるじゃん。」

闇氷「俺の中では適当だ。それっぽい意味がありゃ十分だろ。」

グラブ「いえ…すごくいいと思います!地石 コハク⋯ですよね?なんか…すごくしっくりきます!」

闇氷「…ならそれでいい」

氷河「グチグチ言ってたけど案外早く決まったじゃん。」

闇氷「長々考えるもんでもねぇだろ。どうせ呼ぶ時はコハクだけだ。」

グラブ──いや、コハクはその言葉にぱっと顔を輝かせた。

コハク「それでも…闇氷様が考えてくださった名前なんです!大事にします!!」

氷河「⋯この子ほんっと純粋だなぁ⋯それで、どうする?流石にあっち側から来たなんて言えないよね⋯?」

闇氷「まぁ、そうだな⋯だが、あいつらにはこいつの存在は示唆してんだよ。だからまぁ⋯適当にここに迷い込んできたって体でいいだろ。」

氷河「⋯やっぱりちゃんと考えてるよね?」

闇氷「気の所為だ、さっさと行くぞ」

闇氷はコハクを連れて玄関口へ向かった。

―――――――――

闇氷「⋯戻った。」

闇氷は玄関口の戸を引いて顔を出した。

卓郎「おぉ、戻ったか!」

たけし「⋯って、その子誰だ⋯?」

闇氷「あぁ、こいつは⋯」

美香「えぇ!?ちょっと闇ちゃん何その子!?可愛い――っきゃっ!?」

走ってくる美香に闇氷は鞘付きのナイフを突き出した。

闇氷「⋯近寄んなフィジカル女が」

氷河『⋯なんだろう、セコム味を感じる⋯』

美香「もう、びっくりしたじゃない!いきなりナイフを突き出してくるなんて!」

闇氷「鞘付きなだけありがたいと思え」

ひろし「闇氷⋯いくら鞘付きだとしても刃物を人に向けるのはよくありませんよ。」

闇氷「うるせぇな⋯条件反射だ。」

水刃「条件反射のレベルを超えてると思うのだけれどー⋯」

闇氷「こいつがさっき戸を叩いてきた奴だな。ここに迷い込んできたらしい。」

コハク「地石 コハクと言います!闇氷様にはお世話になってます!」

闇氷「おい待てお前こいつらの前で様付けするんじゃねぇ」

たけし「さ⋯様付け⋯?え⋯関係性って⋯」

コハク「恩人です!」

闇氷「⋯あー⋯一応言っとくがこいつが勝手に様付けしてるだけだからな、俺が強調したとかじゃねぇからなマジで」

卓郎「お、おぉ…なるほどな…恩人か…」

氷河『きっちり誤解されてる前提で喋ってるね…』

水刃「でも様付けされるって事は、相当尊敬されてるってことでしょう?闇氷ちゃん、意外と面倒見いいのね〜」

闇氷「いや⋯誤解すんな宿主⋯面倒見た覚えなんざねぇ⋯」

ひろし「⋯見事なまでの主従関係ですね⋯」

美香「⋯ねぇ、もしかしてこの前話してた子って⋯」

闇氷「⋯こいつだ。」

美香「えー!!闇ちゃんに懐いてついて来てた子っていうのがその子だったのね!!」

闇氷「うるせぇ⋯⋯」

氷河「うん、これは完全に保護者と懐きっ子構図だね…」

水刃「ふふっ、闇氷ちゃんも根はとっても優しい子だから、その優しさで懐いちゃうのかしらね〜」

コハク「闇氷様は僕の命の恩人ですから!」

闇氷「だから様をつけんなって言ってんだろ…後俺の昔の性格終わってるからな?」

美香「あ〜もう尊い!クール系の闇ちゃんが無自覚に慕われてる構図って最高なんですけど!!」

闇氷「おいフィジカル女、変な方向で盛り上がんな」

コハク「僕は闇氷様に助けてもらって、生きる理由をもらったんです!慕うのは当然です!!」

水刃「あらあら、真っ直ぐな子ね。まぁ、ずっと立たせてるのは良くないから、上がっておいで!」

コハク「あっ…はいっ!お邪魔します!」

コハクは靴を脱いで綺麗に揃えると闇氷と共に居間へ向かった。

―――――――――

闇氷「⋯で、居間に来て座ったはいいがどうすんだよ?」

氷河「自分達の自己紹介でもする?」

卓郎「あー、そうだな。折角だしやっとくか。」

美香「いいわね!じゃあ私から!私は赤水 美香!力には自信があるわ!よろしくね、コハクくん!」

コハク「はいっ!よろしくお願いします!」

水刃「私は三上 水刃。この宿の運営をしてるわ。得意な事と言ったらお料理とお裁縫とかかしらね。よろしくね。」

コハク「はいっ!水刃さん、よろしくお願いします!」

たけし「俺は、黄河 たけしだ⋯色々とビビりだが⋯よろしく⋯」

コハク「はい、よろしくお願いします!」

ひろし「私は白河 ひろしと言います。よく頭脳系の事を任されます。よろしくお願いします。」

コハク「はいっ!こちらこそよろしくお願いします!」

氷河「自分は雪原 氷河。なんだかんだ闇氷の姉やってて、一応主戦力は名乗って⋯いいのかな?」

闇氷「名乗っていいが体の限界をきっちり分かれバカが」

氷河「ぅ⋯まぁ闇氷もやっとく?」

闇氷「こいつに俺の説明不要だろ。紹介も何もねぇ。」

水刃「ふふっ、まぁいつも通りね。」

コハク「えっと…皆さん、本当に優しそうな方ばかりで…これからよろしくお願いします!」

闇氷「…まぁ、ここにいる以上は迷惑かけんなよ。ってハクモは?」

ハクモ「ここだよー!」

コハク「うわぁっ!!?」

ソファーの後ろから現れたハクモにコハクは大層驚いた反応を見せた。

氷河「まーた驚かせてるよ⋯マイブームなの?」

ハクモ「うん!せっかく人の姿になれるならいっぱい使わなきゃねー!あ、僕は白神 ハクモだよー!こう見えて神獣なんだー!よろしくねー!」

コハク「え、あ、え、神獣ですか…!?それって」

闇氷「まぁここは色々と常識は通用しねぇ。変に考えたら疲れるだけだから考えるな。」

コハク「あ⋯は、はい⋯」

闇氷「まぁ、ここはそんなもんだ。」

コハク「うーん⋯あ、じゃあ僕も改めて、僕は地石 コハクと言います!闇氷様にはお世話になっていて、いろんな物を集めるのが好きです!よろしくお願いします!」

ハクモ「へぇー!いろんな物を集めるの?僕も宝石とかキラキラしたもの集めるの好きだよ!機会があったら探しに行こうよ!」

コハク「ほ、ほんとですか!?ぜひぜひ!!」

氷河「もう仲良くなってる…適応早いな⋯」

水刃「ふふっ、なんだか相性も良さそうね。」

闇氷「…はぁ、騒がしくなりそうだ⋯」

氷河「まぁ、元気な事自体はいい事じゃない?」

水刃「そうそう。静かすぎるよりずっと良いわよ。お宿の空気も明るくなるしね。」

美香「そうそう!なんか新しい風って感じでいいじゃない!闇ちゃんも絶対悪い気してないでしょ?」

闇氷「⋯悪い気というよりは面倒いのが増えた印象しかねぇわ」

卓郎「おいおい、もうちょっと言い方柔らかくしたらどうだ?」

ハクモ「でもでも、闇お姉ちゃんだって本気で嫌がってるわけじゃないでしょ?顔が半分だけ困ってる顔だもん!」

闇氷「…余計な気づきは要らねぇよそこの神獣」

水刃「ふふっ、つまり困ってるけど嫌じゃないってことね。」

美香「うわぁ〜ツンデレ系保護者ムーブ来たわこれ!!尊い!!」

闇氷「うるせぇフィジカル女」

コハク「僕は、闇氷様が嫌じゃないならそれだけで十分です!」

氷河「うん、これ完全に面倒見のいい不器用姉貴ポジだね。」

闇氷「…頼むから俺の立場を勝手に決めんな⋯」

いいねを贈ろう
いいね
4

このトピックは、名前 @IDを設定してる人のみコメントできます → 設定する(かんたんです)
画像・吹き出し

タグ: 空想小説「青鬼」 60話琥珀色

トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する
その他2025/11/10 10:29:03 [通報] [非表示] フォローする
TTツイートしよう!
TTツイートする

拡散用



闇氷「⋯⋯⋯」

霞「お疲れだねぇ。」

闇氷「誰のせいだと⋯」


画像・吹き出し

トピックも作成してみてください!
トピックを投稿する