渡るもの藤原妹紅 第八話:ファーフェイドインタープリティション その2
「貴方の元に居させてください...!」
小さい勇気と名前をもらった少女は、その日から人が変わったように落ち込むことが無くなった。
「悪い・・・・・・もう一度だけで良い・・・・・・"言い直して"くれないか?」
「そうね、無意識的に回復魔法は使えるんでしょう? じゃあセンスはあるし、基礎もさっき学んだし、日本人は古来は口語伝承で記憶力もいいはずならできるでしょう?
ってことで今日カチコ・・・・・・受けに行くわよ、魔法学院を」
「今カチコミって言ったよな!カチコミって!!」
妹紅は勉強会(?)を終えた翌日、目覚めたら、何故か咲夜に起こされて、もう朝食が用意された状態で、おはようの前に「今日受けに行くわよ」 と言われた後であった。
勝手に用意されたことにありがたく思いながら、朝食に手をつける
「そんなことはどうでも良い」
「いや良くねぇよ!」
「じゃあ問題、一般人が魔法を使えない理由を挙げれるだけ挙げよ」
「ムリやりだなぁずいぶんと、まぁ、復習は大事だ。
本に載ってたのは、縛られすぎていることと普通の人が哲学や最近の物理学を理解できないように難解な学問だから、あとは寿命」
「三つか・・・・・・せめて五はいって欲しかったわね。じゃあ次は」
クイズは、朝食を食べ終わり、顔を洗って、着替えて、咲夜の部屋に移るまで続いた。
「なぁ、これでどうやってカチコむんだ?」
「虚軸時間方向に先は合わせたけど、実軸空間方向を合わせて、扉の代わりにするのよ、あとはそこの空間自体が隠蔽されてるから、それを魔法を自力でとく」
「もしかして、それが入試ってこと?」
「正解!」
ガチャリガチャリとダイヤルを回していき、手が止まる。どうやら調節が終わったらしい。たった1日過ごした仲だが、まるで小中と一緒だった友達みたいになったニ人は、緊張を含んだ、楽しそうという感情をいっぱいに詰め込んだ笑顔で、その空間に足を踏み入れた。
其処では空は暗澹たる夜であるが、辺りは奇妙なほど明るく、地面は一面の雪の華が辺りを包んでおり、何処かこの世ならざる物を感じさせる異次元の雰囲気を放つ空間であった。まるでその紅と黑に対比するような銀色の髪を持つ二人が、ザクっと足を踏み入れる。妹紅は紅の目で、咲夜を見つめて言う。
「寒い・・・・・・なんだかある意味地獄ってこんなんかもって思わせるような風景だな」
呑気な言葉だが、何処か奇妙な楽しさを纏っていた。咲夜は少し震えた手で、炎を出す。
「扉は閉じてるから、あっちの気温は心配ないわね」
「・・・・・・え?!閉じちゃったの?!」
「両方の両足を踏み入れた時点で消えてたじゃない」
「いや、教えてよ・・・・・・」
なんで帰り道がなくなったのかはきっとそんな魔法で、そうなのだから疑う必要はないと自身を思い込ませた妹紅は、静かにこの場所の分析を始める。
結界には主に体系化されて一般的になった四つの使い方がある
一つ目は空間を区切る使い方
二つ目は条件を課す使い方
三つ目はその内部をいじる使い方
四つ目は天の岩屋戸のように引き篭もる使い方
(まぁ参考にはなるか・・・・・・)
妹紅は使い方を想起しながら考える。
「なぁ、本当にこの魔術をとくだけで良いのか?」
「それはこの空間をとくこと自体が入試ということを疑っているのか、この空間を疑っているのかどっち?」
目をゆっくりと回転させながら少逡巡する妹紅を傍目に咲夜は少し真面目な目をして解答を待つ。
「後者だ」
「それなら大丈夫、これさえとければ良いわ。どうせこの魔術を施したのは古典的で縛られた、自由でない魔法を好むような魔法使いだから」
「・・・・・・またそれも噂か?」
「いやぁ・・・うん、まぁ出典が学院の者だから多分あってる」
「いやいや関係者いるんかい!」
「逆にそこまで用意周到でなきゃ、正面突破なんてやらないって」
「ちなみに関係者の名前は?」
「本名なのかは知らないけどアリスとか言ってたわ」
「・・へぇ、かわいい名前だな」
(いや!アリスもいるのかよ!そりゃいるかこんなヨーロッパみたいな所に、ちょっと英語かぶれてるし)
なんとか動揺しながら持ち堪える。妹紅は再度辺りを見渡してみる。
何故そこにあることが気づけなかったのか不思議なほどに鮮烈な景色が広がっていた。人が一度も斧を入れたことが無いようにみえる白色の森が険しい山々に鬱蒼としており、山と山の間、つまり渓谷には色のない小川が潺湲と流れている。訳がわからないが雪の華は妹紅達から離れると陵夷していき・・・・・・
「やはり、おかしい」
「何が?」
妹紅が受け応える。咲夜は訝しげな顔で答える。
「場面が難しすぎる」
「はぁ」
「空間が入試じゃなくて、その現象が入試なのかしら・・・・・・」
咲夜は黑の手袋を顎に当て、思考する。
「その場合の解決策ってあるのか?」
「知らないわね」
「即答かよ」
妹紅と咲夜は思考する。まるで迷宮の入り口の小径に戻ろうとしたらその道が塞がっていて
「見つけた」
「咲夜、何を見つけたんだ?」
「ほら、そこ」
咲夜は虚空に指を指す。
「何にも無いと言いたいところだが、何があるんだろうな、お前のことだ」
妹紅も同じようにその方向へ、少し笑顔で虚空へあ ように手を伸ばして握り、開いて確認してみる。
「咲夜、見てみろ"ざる"だ」
「"ざる"だ」
手の中には文字通り文字の"ざる"があり、それは"ざる"ではないものでは無いしこの文はトートロジーでもない。
「「なるほど」と咲夜が考えを妹紅に話そうとするが妹紅は「もう一度やってみる」と再び手を伸ばすそしてその手のひらには大量の"。"があった」
「咲夜は。あなたのそれから考えうるにもう結果は一つまるで、輸嬴がついたかのように微笑む」
なんだ?と妹紅。
「小説の中だ、私たちを小説の中の登場人物として解釈して地の文を術者」が言っている
「それで、文字が取れるわけか、こん かんじ 」
妹紅の手のひらには"な"と"に"がある。
「多分さらに文字の位置とかも変えれるんじゃない?」
「じゃあ"「"と"」"の位置を変えてみる」
妹紅はまたまた手を伸ばしてやってみる。
「おかしな所に「」があるし、やはり正しそうね」
「文字が認識できるのか!?」
互いに目を見合わせる。
「え?認識できないのに移動させたの?」
ぽかんと目を合わせる。どちらも何が起こっているか意味不明な状況で意味不明な会話をしているからだと側から見たらそう考えるだろう。
「そして、だんだん本文もおかしくなってきたわ」
「私は文字を取ったり変えたりもしてないぞ、今は」
「・・・・・・役割分担ってことかしらね、この状況から察するに、私が認識して、あなたが接触する」
場面転換もセリフもぐちゃぐちゃになっていく、たった一つの文字列さえ意味のない文字列と変換されるような、意味から文字への置換ではなく、意味のないから文字への変換が進んでゆく。何処までも何処までも。
その中はまるで夢の中みたいで、現実と夢と夢でなくて現実でない、それでない、それでないでない...
「また、死んでしまったのね」
誰かが微笑んでくる。この感覚は以前に2、3回あったようにも思える。
目が覚めたらそこはいつもの自分の家で、輝夜がいなくなった実感がひしひしと込み上がってくるもう一つの日常だった

