渡るもの藤原妹紅 第九話:ホメオスタシス その1
妹紅は自分の家で久々に布団に入り熟睡してしまったことを新しく覚えている。普段はあまり寝入らないように体操座りのように寝ているのだが、今回はとりわけ事情が違った。
「・・・・・・永琳、なんで輝夜が?」
「わからないわ・・・・・・、博麗の巫女と白黒魔法使い、いや霊夢と魔理沙にも、もう頼んでいる」
突如として、頭に声が響いた。
「もう問題提起はおしまい、解答時間はこれからよ」
頭が、痛い。
永琳は妹紅にその旨を伝えたられたら、すぐに頭痛薬を出してくれた。妹紅はリザレクションすれば良いと言ったのだが、そういうわけではないらしい。蓬莱人でも死ぬのは辛いことだということは知っているからだろうか。
最近、と言っても人間の感覚での最近。
つまり大戦の真っ只中。
幻想郷の領土は人類との結託により拡大し、月との次の争いに備えている─月はこっちに穢れを嫌って攻めてくる頻度は少ない─
そして魔法使いたちは使い魔であった悪魔の反乱に遭い、並行世界人との齟齬が生じて1対2のところに、関係の深い幻想郷が魔法使いに肩入れしているため敵視されている。
つまり幻想郷は3つの陣営に囲まれた状況。今日もそこかしこで塵が舞っている。
そのためか、幻想郷は異変が確認できているだけで二つ起きている。
一つは起神異変─力の暴走─
二つは迷霧異変─力の消失─
このことに関して紫は妹紅に対して
「内戦の誘発が見え見えすぎて裏を探ってる」
とか言っていた。
現在ではその二つの異変が原因で幻想郷は大混乱で、餅つけ餅つけという状態である。
今、妹紅はすっかり大きくなり周囲の竹林が迷彩となっている永遠亭の屋根の上で座っていた。風景はそれ程よくは見えないけどでも、いつか見た日常とは克明と違う。元の風景への郷愁と争いへの怒りを持っていた、が永遠を生きる者故の変化を好む心がそれを純粋たるものにすることを拒んだ。そんな夕日での孤独の時間だった。
「ども〜」
「うわっ! 良かった紫か」
紫が気付いたらいつも身につけている日傘をさして、妹紅の隣に座っている。スキマの移動の音も聞こえなかった、可変式なのだろうか。
「貴方に無茶させちゃいけないってのは分かってるんだけど」
「輝夜か・・・・・・ その件にはもう折り合いはつけた・・・・・・ もう私も良い歳だ。少女なんて言ってられない」
「・・・・・・そう」
妹紅は何処か遠くの太陽を赤色のびーだまみたいな無機質で可愛らしく美しい目で見つめていた。
唐突に紫から妹紅へと顔面に下駄を履いた足でヤクザキックをお見舞いさせられる。
「・・・・・・は?」
「永遠を生きるってことは毎日同じことの繰り返しってわけじゃ無い。お風呂を沸かすのを忘れていつものメロディと共に"お風呂が沸きました"の声が聞こえ無い日もあるように、ただ機械的でも変化はある。輝夜ちゃんがいなくなったのもきっと損なんよ。かくれんぼとかそんな気まぐれで、だから"希望"を捨てちゃいけない。あなたはどんな責任を背負わされても少女のままで良いのよ妹紅、いや妹紅ちゃん。大切な人がいなくたって一緒に歩いてくれる人はいくらでもいるわ」
紫の目には再生の炎の光のせいなのか、妹紅の目の色が少し戻った気がした。
「なんだか、そんな胡散臭くて気持ち悪くて母って感じなやつだったかお前?」
皮肉った笑顔と笑い声と共に問いかける。
「何を!誰が年増じゃい!いや妖怪的には若すぎか」
「はははっ、」
「最近の妹紅ちゃんは何処か思い詰めていたからね」
紫はいつからか、つけていた腕時計を確認する。
「そろそろ行かなければいけない。この大戦を終わらせに」
「本当は、私も手伝いたいんだがな」
「良いのよ、妹紅ちゃんは好きなことをしていて、悪いことは全て妖怪のせいにして、人間はのうのうと生きていれば良いの、それが妖怪の為にもなるし」
妹紅は、スキマを大きく開いて何処か行く紫を見送ろうとしたが、少し引き留める。
「なぁ、輝夜にはまた、会えると思うか?」
少し悩むようなそぶりを見せて、答える。
「きっと、会えるんじゃないかしら、妹紅ちゃんが不老不死だからって訳じゃなくて、すぐ会えるって意味で」
「そうか、幻想郷の賢者様の意見が聞けて良かった」
「照れくさいわね」
紫が持っていたフリルのついた日傘を閉じて妹紅に柄を向けて渡す。
「餞別になるのかはこれから次第だけどそんなのよ、あげる」
「いつも持ってるし大事なものじゃ無いのか?」
「それは・・・・・・ いいから」
「そうか」
直ぐに妹紅の傍に紫がいたという痕跡はその日傘しか無くなった。
「なんでこんな奴にみんな優しくするんだろうな。名もあまり呼ばれず、人を殺して時間を得て、死を望む、こんな奴に」
また孤独に戻ったが今度は孤独というよりも一人というのが正しいようにもう見えなくなった夕日の方を見つめて、日傘をさし、争いの音を聞きながら、幻想郷を見ていた。
妹紅は紫と話した半日後、地面に降りて、ちょうど、周囲の警戒をしている永琳に問いかけた。
「くどいってのは分かってる。どうすれば輝夜を見つけられる」
「諦めるか、あらゆる可能性を試すか、二択に絞るならそうなる」
「じゃあ、」
いむかはきっと会える。永遠を生きる蓬莱人にとって、いつかは、直後であり、億劫である。だから、逃げ道が用意されていたから、より楽な道があったから、水が上流から下流へと流れる道理は崩れないように。また、諦める。それが最善手。
「あきら、」
でも、輝夜との日々も、その周りとの日々も変わらない永遠の日常も、完璧に同じ一日などなく、毎日が新しい非日常と、たった少し解釈を変えれば、そうできるように、輝夜がいなくなったことを日常と捉えかけている。そうして、また他人と会えなかった時のように自分に嫌気がさしてくる。だから次は、時間を得て捨てようと思ってもすてれない過去とは違う選択をしてみたい。
「あらゆる可能性を試す!」
こうして私は永遠を、不変を得た身でありながら、今のことを変わることを決意した。
「ならばどうするか、前から探しているのに手掛かりはあまり無い・・・・・・」
「そういうときはね妹紅、目的とは別のことをしてみるのも良いわ」
「決心が、漸くついたんだ。平安から生きていたがまだ、子供だったんだ。だからもう、逃げはしない」
永琳は驚く、昔から見ていたはずなのに、その成長ぶりに。でも、同時にここまで追い詰められた妹紅に

