渡るもの藤原妹紅 第十一話 ホメオスタシス その3
「という訳でだ」
「随分と遠回りね」
「気張りすぎたのかもしれん」
妹紅は永遠亭に戻って和室の上に置かれた座布団に座り永琳と話をしていた。霊夢と宮出口のアドバイスによって、身近な人に情報を聞くのが一番手っ取り早いと言われたからだ。
「あんなこと言っておいて、面白いものね。でもお生憎、言った通り、見ての通り、私は如何して姫がいなくなったのかまだ突き止められてもいないわ」
「助言でも良いんだ」
「それが有効かは判らなけど、そうね。もし私が姫なら、"私を見つける難題"という風にしてあなたの目の前を去るでしょうね」
「あいつは難題であることを明示したり命じたりするくないか?」
「まぁ、気分屋なところもあるしねぇ。それに、それも含めて難題なのかもしれない。とにかく、今の私だったら、この程度の助言しかできないわ」
若干強めに突き放そうとしてくる永琳に対して妹紅は違和感を覚えながらも、永琳も焦っていることと自分が前のめりすぎることに気づき、会話を修正する。
「それだけでもありがたいさ」
「それはどうも」
「その仮定を使うとなると、一番輝夜を見つられそうなのは性格的に」
「「大戦を終わらす」」
少しお互いに微笑み、数秒の沈黙が間に挟まる。
「言ってくる」
「めどは?」
「紫」
「じゃあ」
要約するとそんなような会話で話した。永遠亭の玄関までそんな話をしていた。妹紅が戸を開けると、雨が降っていて。
「傘は?」
「紫から貰ったのがある」
「遠回りね」
「断られたからな、迂回路だ」
またもそんな会話をして、傘をさして一歩。
「もう一つ助言をしておくわ」
永琳が前置いて、妹紅が振り返る。輝夜の話題じゃないのか、永琳はあまり真剣な顔つきではなく、それに釣られて妹紅もそうなる。
「死への恐怖を忘れないように、この大戦じゃ何が起こるか判らないから」
「蓬莱人じゃ、死ねないし、生きれもしない。だから大丈夫さ」
そう言って真夜中の雨、日傘をさして雨を弾き家と言うなの空間に戻ると、いつものように体操座りのような寝方で寝た。翌る日の朝。炎を出して昨日から降り続く雨でしけった干し椎茸を乾燥させようとすると。
「炎が出ない?」
能力が使えなくなっていた。幸い、舌を噛み切っても再生するので、蓬莱人としての力は残っているらしい。
「これが、迷夢異変・・・・・・」
そう、邪魔な血を吐き出しながら言葉を吐き捨てる。
力の消失が主な内容と言われる迷夢異変は現在、起神異変と同時並列で行われている異変であり、大戦と共に猛威を振るっているらしい。
「空も飛べないのか。こりゃ面倒だな」
頭を掻きつつ困った妹紅は、とりあえず未口直しにしけった干し椎茸を頬張って玄関に行き、外に出ようと傘に近づき、手をかけようとする。
「・・・・・・なんだ? これ?」
その辺に立てかけておいた傘、昨日普通に使っていた傘から、話し声のようなものが聞こえる。
「あら、気づいた見たいね」
「げっ、紫」
傘のどこかしらがスキマで繋がっており、向こう側の会話が聞こえている状態だ。さっきから食べ物の名前が聞こえるような気がするが、そこはなんとなく察しがつくので、気に留めないでおく。
「ここまで過保護だとかは思わないじゃないか」
「一応、あなたが月の回し者である可能性を0に収束させるためよ、霊夢の勘は信じてたけどね」
「矛盾だぁ」
「さっきのが建前だからよ。本当は、異変解決のため、幻想郷側の力ある者たちを付けてるだけ」
「どっちにしろそれ過保護なのでは?」
「・・・・・・あっ、忙しくなる予定になる予想が出来そうだから、このスキマ電話切るわね。ガチャ」
「・・・・・・なんなんだ? 本当に?」
(まさか、紫が異変の犯人? いや、あいつは幻想郷とその自然な変遷を好むやつだ、そんなことはしない。きっとただ過保護なだけなのだろう)
そう思いながら、傘を持ち戸を開ける。
「さぁて、異変解決でもしますか」
目指すは終戦。不老不死は気儘に動く。

