アニメ『最果てのパラディン 鉄錆の山の王』はおもしろい?つまらない?
全話視聴
原作は知らん
漫画も知らん
端的に、桃太郎
1話においては吟遊詩人ビィのキャラ立ちが、金に細かい事も含めて俗物的なのが健全に受け取れ好印象
1期は音楽要素の演出にやや力を入れた構成だった記憶があったので、彼女をフィーチャーしたこの初回、かつて共に行動した故人の話が出てくるなど、伏線とも取れる話題も出たりで、あれ?こんな良い意味で優等生な作品だったかな?と
なんかEテレで夕方に放送しそうな名作劇場的雰囲気で結構期待してしまった
が、2話以降はテンプレの剣と魔法のナーロッパ話で食傷感
差別化している所はラテン語や、トールキンの考案したエルフ語・ドワーフ語を、詠唱、口上、一般名詞などで高頻度に引用していた事くらい
この作品自体、トールキンがよく参考にしたベーオウルフの話と似ているし、彼自体そもそも、物語を作る事よりも、自分で言語を創造する事にプライオリティを置いていた人らしいので、その言語学者的姿勢をリスペクトしているであろう原作者の気持ちは、今作のレトリックに触れると伝わってくる
ただ個人的には、一児童文学者が20世紀に独自に創造したファンタジー世界での語彙を鑑とするには、作品が世に出てからはまだ日が浅い気がするし、なんなら同じクリエイターとして同一周回上で競っている、くらいの気構えでやってくれた方が見る側も意気に感じる
話そのものは陳腐なのに、容易くは理解できない単語を用いて「謎解きは各々にお任せします」という作風は、プロット、ストーリーを面白くする気のない小手先のやり甲斐搾取もの、といった体に映る
これは、何かしら引っ掛かるキャラの台詞や行動や情景描写を示して、「この暗喩が知りたきゃ自分で調べな」という乱暴な構成のFateなどにも相通じる作風
ウマ娘もカジュアルだが同質
共通するのは神話、伝承、迷信などの、今も訴求力のあるトピックで武装しただけで、それらを剥ぎ取った後に残る、原作者の考えたオリジナルの話そのものには魅力が無いという事
自分で調べさせる動機を与えて、解答を得られた満足感でアカデミックな気分に浸らせるだけの、調べ学習みたいな作品
1期はまだ、家族であって家族でない関係性など、主人公を取り巻く擬似家族3人との細やかな人間模様も描いていたと思うが、この2期はほぼアクションRPGのゲーム実況を見ているような淡白さ
D&D好きの友人がいて、当時付き合い程度で一緒にプレイし、各々オリジナルのストーリーなんかも作り合って遊んではみたのだが、どうにも自分にはそのハイファンタジーに興が乗らなかった
しかも既にドラクエ2くらいまで世に出てしまった後だったので、上げ膳据え膳で勝手に進めてくれるコンピュータRPGの省力化に慣れ切った身には、シナリオの細かい字を読み込んで話を理解し、ダイスを振って、あーでもないこーでもないと参加者たちとややこしい折衝を繰り返すアナログなテーブルトークRPGは「めんどくさい」の一言に尽きた
65535の世界観で独り上手でサクサクと楽しめたドラクエだったが、その後に初めてアニメ化されたドラクエを見た感想は「これはゲームで楽しむものだな」ということ
お話として楽しむものとは受け取れなかった
おそらく13世紀に出された黄金伝説におけるゲルギオスの竜退治の話がベースなんだろうが、話が御伽噺すぎてフィクションの飽和した世相の中では黴臭い昔話の1つにしか過ぎず魅力に乏しかった
そして今もその気持は変わっていない
故に、ほぼその世界観の踏襲である最果てのパラディン2期には、なんで今更こんな手垢まみれのプロットを馬鹿正直に正面切ってやる必要があるのか、となる
神話、伝承、英雄譚など、古典を書籍として読むぶんには、単純化されたストーリーの寓意が何であるのか、現代に通じる普遍性があるのか、時代時代の権力者にどう利用されたのか、などと楽しむことはできると思う
でも、現代においてフィクションを作る元ネタであるそれらの題材を、まんまのプロットとスケールでそれなりの年齢層向けのエンタメとして世に出すには芸が無さ過ぎる
もう聞き飽きたし見飽きているのだ
それならいっそ、プロットの補強に便利なそれらの権威的素材など一切合切無視して、名前もテキトー、設定もなんじゃそりゃ、な、でも荘厳な品は不思議と保てているメイドインアビスみたいに潔く勝負してくれた方が見る側としてはありがたい
意図したのかは知らないが、あのアンチテーゼには日本アニメの良心がまだ感じられる
もちろん、幾らでもケチ付けられる要素はあるが、姿勢は買いたい
台詞回しは時代掛かった古めかしさで、殊に終盤はアクションの少なさもありほぼ台詞劇の趣
これなら昨今人気の、舞台美術、衣装に凝った人気声優揃っての朗読劇向き
好みだろうが、個人的には退屈だった
弦学的レトリックの自負は旺盛だが、活用の間違いや言葉として疑問の残る表現など粗もあった
作中、音だけでは意味の取れない言葉が度々あったのでネットで調べていたところ、この原作の文体を目にできたのだが、この作品はどちらかといえばト書の部分に力が入っている印象だったので、それらをまるまる省いたアニメだと、制作陣が余程気を使わないと全くの駄作に成り果てるのは道理で、その結果の今回の出来かと思う
1話におけるビィの活きる演出がその後ほぼ皆無だったのも残念
個人的にはアニメ平家物語における琵琶法師の主人公びわのように、後年のビィが当時を懐かしく思うように、今期に展開された騎士道物語を滔々と歌い上げる演出を頻繁に挟んで、この作品の底流を受け持つ狂言回しとして機能させた方が雅な演出となり理想的だった
ハーフリングなので背丈は伸びないだろうが、やや成熟した女性として演じさせて欲しかったところ
余談だが、トルバドゥール(本来女性だからトロバイリッツだろうが)という呼び方、それとパラディンという単語もややフランス色が強まる表現なので、原作者のトールキニストらしさからするとやや何でかな?とはなる
声優は、個人的には1期の河瀬茉希でも別に問題なかったし、村瀬歩は相変わらず器用で上手かった
ラスボスの竜は神奈延年さんの演技が大塚周夫さんのようで懐かしかった
悠木碧と大久保瑠美は女神を演じるには物足りない
神様が好色だったのはハーレム要素というより神話らしい演出の故かと
劇伴はほぼ記憶に残らず
作風や空気感の似た無職転生の方が良かった印象
OP曲はやや贅沢なアレンジ
打ち込みとフォークロアの馴染ませ方が上手い
呪術0も担当した方で、悪くなかった
内容に比してオーバースペックなくらい
1期のOPとEDも悪くなかった記憶があるが、曲には恵まれている印象
作画、背景はやや雑だったか
なんだかんだ言って内容が地味なので、長身細身のロン毛ポニテでほぼアルビノのようなメネルにちょうちんブルマ穿かせて腐向け釣り針垂らしっぱだった事には「しょうがないよな」とは思う
それもプロの仕事かと
原作の進捗に希望が持てなかったのか、キリのいい終わり方で纏めていたが、3期があるのなら既存ファンタジーの忠実なトレースという愚作に走らない事を願う

