（小説）やっは〜☆剣道①
剣道の一本とは、打突部位で打突、適度な発声、充実した気勢、残心があるものが有効打突とされる。つまり運良く２回勝ってベスト８を決める試合に出た僕は随分と運がいい男であった・・・「ってなんでじゃ〜い！！！」「知るか！！！たまたま運良く勝っちゃったの！！！」そんな僕と同じ仲間の会話が試合前に繰り広げられる。「てかお前、ひとり休んで不戦勝で、更に闘う相手の相手も不戦勝で運良く初心者に当たって勝ってなんでベスト１６やねん。おかしいぞ！！！」「しゃーないやん！これが現実やん！地区さいきょうの山本とたたかうんやぞ！？負けるに決まってるやろおおおおしかもベスト８決勝だからめっちゃ人見るやん！惨敗するところ見られるやん！あいつの引き立て役になるだけやん！」こんな情けない会話を聞いている他校の人たちが怪訝な目で見る。そうしている間に試合が始まる。さっきまで野次っていた仲間、筧大地も緊張した面持ちでぼそっと「せめて一本で負けろよ。」といった。いや、負ける前提で話してね！？と思いつつも僕は開始線に入る。普段はめがねを掛けているから面をつけているときは視界がほぼ０だ。
「始め！！」審判の声で試合が始まる。っっっと、いきなり相手が飛び込んできた。とっさに竹刀で防ぐが、相手の竹刀はきれいに僕の面にぼん！といい音を立てて当たった。「面あり！二本目！」早い。見えなかった。一本を取られた焦りから、じわじわ汗が滲んでくる。僕は遅れを取らないように、守りの姿勢を取ったが、相手が攻めてくる気配はない。このまま持ち越すつもりか！？なら自分から攻めてやる！カン！カキン！当たらない・・・？ずっと避けて攻撃を受け流しているぞこいつ・・・やばい、時間がない。急げ、急げ、「面！」防がれた。っと、僕の体当たりの力を使って相手が引き面の体制に出た。まずい。打たれる。と思って竹刀を振り上げたが、時すでに遅し、息を呑むようなきれいな相手の引き面が決まった。
